片付け(3)
海月ちゃんから語られたのは、彼女が今まで溜め込んできたであろう苦しい胸のうちだった。
七海さんがいつも疲れた顔をしていること、なのに自分はなにもしてあげられないこと、本当に高校に行っていいのか悩んでいること...。
俺はいたたまれなくなって、海月ちゃんをなぐさめようと、彼女のほうへ一歩近づいた。
すると、海月ちゃんはすがるように俺の胸に飛び込んできた。
うわっ!
「..うっ、ううっ。」
『...』
「...少しこうしててもいいですか?」
『...うん、いいよ。』
それで楽になれるなら。
俺は女の子に抱きつかれたことに動揺しつつも、海月ちゃんが落ち着くまでそのままでいることにした。
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数十分ほど経って、海月ちゃんは落ち着きを取り戻したようだった。
「あっ、あのっ、すいません! もう大丈夫ですっ!」
真っ赤な顔をした海月ちゃんはそう言って俺から飛ぶように離れた。
「ほんと、すいません。急に飛びかかったりして。」
『いや、大丈夫だよ。それより海月ちゃんはほんとに大丈夫?』
「はい。悠人さんに話したら少し楽になりました。」
それを聞いて俺はホッとした。でもやっぱり不安で.....
『俺なんかでよかったらいつでも頼ってね。相談でも何でも付き合うからさ。』
そう言っておくことにした。
「はい、ありがとうございます。」
海月ちゃんはそう言って少し笑ってくれた。
でも俺はその笑顔がくすぐったくて、話を変えることにした。
『そういえば、お昼ご飯持ってきてくれたんだよね。』
そう言いながら壁に掛けられた時計を見ると、もう14時をまわっていた。
海月ちゃんも俺につられて見たようで、申し訳なさそうな顔で言った。
「すいません、私のせいで...。」
『いや、気にしないで。それより、何を持ってきてくれたの?』
「おにぎりとだし巻きです。大したものじゃないですけど、食べますか?」
『うん、ありがとう!』
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食後。
海月ちゃんがくれた昼食を食べ終えた俺は、それが入っていたタッパーを返そうと立ち上がった。
そうだ、ケーキでも買ってから渡そうか。
そう思い、俺は財布をもって家を出た。