タルトの陰謀
これは『特別な生活を求めて異世界へ!』の裏で起こっていることをエディ目線で書いたものです
勇者というより手口がダークヒーローなので気に入らない方はブラウザバック推奨です
学校を終え、部屋に戻ってきたエディはすぐさまベッドに寝転がった。
「疲…れた…」
授業が退屈だったため、1週間分の宿題を歴史の時間と魔学、休み時間を費やして終わらせたのだ。
なんの前触れもなく、窓には伝書バトがとまっていた。
ハトに気がついて窓を開けると、くわえていた手紙が風で部屋に入ってくる。
「よっと!」
手紙をキャッチしたときにはもうハトはいなくなっていた。
手紙には高級スイーツブランドの「パフェテル」の開発部について調査依頼内容が書かれている。
依頼人はギルドからとなっている。
(タルトにアヘンが混入されている事実確認…冒険者への依頼内容じゃないだろ…)
ため息を吐いたエディは剣を持ち、窓から飛び降りた。
エディの体は猛スピードで地面に向かっている。
だが、地面ギリギリのところで左手の魔石が光り、身体が浮く。そしてそのまま飛行を開始する。
「もう少し…改良するべきだな…」
この飛行魔石はエディが製作したものである。
奴隷時代にひたすら作った付与魔法の魔力配線や回路、付与パターンの知識を存分に活かした最高傑作である。
ただし魔力配線が複雑な故、操縦中は他の魔法を使うとコントロールが効かなくなる。
エディが向かっている目的地は…パフェテルの会社である。
「お疲れ様でした〜」
パフェテルから出てきたのは中年の男である。
パフェテル到着直後、エディは真っ先に地上に降りたと思えば、男の顔を手で覆った。
そして…精神操作を開始する。
「なんだお前…は…」
男は持っていたカバンを落とし、無気力に座り込む。
エディの頭にはタルト開発に関わっているパフェテル従業員の名前と顔が流れている。
「随分と詳しく知っているようだな。所属は?」
「お、俺は開発部所属の課長だ…」
「なるほどな…」
そしてエディは記載されていた商品名「グレーススマイルタルト」と一致するピンク色のタルトを探し当てた。
「開発者の名前は…」
「クルーウ…」
エディは手を離し、会社に侵入する。
男は何事もなかったかのように立ち上がり、帰っていった。
事務所には数人が書類整理をしている。
正規ルートならば話を聞いてもらうことだが、あの中にクルーウの仲間がいる可能性はある。かと言って彼らと戦うのも気が引ける。
「…しょうがない…か」
エディは窓を開け、大きな木を炎魔法で燃やした。
「え… 部長!あれを見てください!火事です!」
「全員外に出ろ!今すぐにだ!外に出たら水魔法を詠唱しろ!書類整理は後だ!」
事務所にいた唯一の女がいち早く火災に気が付き、全員を外に追いやった。
エディは事務所に侵入、タルトのレシピを探すことに。
書類整理の途中であるためごちゃごちゃになった商品リストからグレーススマイルタルトを探さないといけない。
「最悪だ…」
幸い区分ごとにまとまっていたため、タルトのリストを探すことに。
一方、水魔法でなんとか鎮火させた一同は事務所に戻ろうとしている。
パフェやマカロン、大福などのレシピをかき分けてようやくタルトのリストを手に入れた。
しかしその直後、コツコツと複数の足音が廊下から響いてくる。
エディは急いでグレーススマイルタルトを探している。
「ちがう…ちがう…ちがう…!」
従業員とエディの探し物、どっちが先に終わるのか… 勝者は…
エディ
エディは直前に勝手口から出ることに成功する。
「あの火事、なんだったのかな…」
「放火でしょうか?」
エディはついにタルトのアヘン混入の証拠を手に入れたが、とんでもないことに気がついてしまう。
「これを承諾したあの男…上司と社長はグル…?工場の人間もグルの可能性もあるのか…」
エディは飛行魔石ですぐさま工場に向かう。
空中飛行で移動するとしても時間がかかるため、既に10時を回っている。
到着したものの、工場は特殊な魔法陣が描かれた頑丈な扉で施錠されており、剣で攻撃しても多少の傷が付くのみだ。
(やるしかないか…)
エディは魔力を扉に一点集中させる。
ーーー 一発破壊 ーーー
描かれていた魔法陣は薄くなり、扉は一点集中した部分から崩れ落ちる。
「ハァ…ハァ…」
エディは自身の魔力量の半分を失った。
疲れながらも工場に侵入する。
材料庫の中には小麦粉、たまご、フルーツなどが置いてあるが、肝心なアヘンが見つからない。
夕食を取っていないエディは、小さな冷蔵庫からパフェを取り出し、食べることに。おそらく試作品だろう。
「アヘン専用倉庫でもあるのか…それとも… アヘン探知の魔法でもあれば… あ!」
エディは独り言をしているうちに、とある魔法の存在を思いだす。
それは、エディが苦手である調合と相性がいいかつ、なぜか取得していた魔法である… 薬草判別。
エディはパフェを食べ終え、すぐさま倉庫に戻る。
倉庫のものを全て薬草判別。アヘンの結果が見えたのは…ラズベリーパウダーのみ。
在庫は少なく、よく見ると小さく「グレーススマイルタルト専用」と書かれており、おそらくまだ一つの商品で試している段階だと思われる。
「そこまでだ!」
エディの後ろにいるのは…クルーウだ。
「あの魔法陣、破壊されたら俺に通知が行くように設計されているんだ…お前はドロボウか?それともオレたちの計画を邪魔するヒーローか?」
エディはゆっくりと振り向く。
クルーウは見たこともない武器を構えている(日本でいう拳銃)
「どっちでもない… ヒーローが普通洗脳、放火をするか?綺麗事だけではホントの正義は実行できないことは知っているよな?」
「そうか…じゃあ死ね」
『ダンッ!』
銃の弾はエディの耳元スレスレを通過した。
「チッ…外したか」
(なんだあれは… 武器なのか?)
エディは見たこともない武器を前に、立ち向かう。
だが、一瞬命の危機を感じたことは事実だ。
(落ち着け…落ち着いて対処するんだ…)
「さっき、『オレたち』と言ったよな?会社全体がグルなのか?」
「いや?ラズベリーパウダーは社長自らアヘンを仕入れて従業員にバレずに混ぜてんだぜ?凄いだろ?」
エディは震えながら右手に剣を、左手に魔石を握る。
「なら、工場の者は白か…」
「なぜ事務所のリストにアヘンの使用量を記載した?バレたら厄介じゃないのか?」
「作り方は工場に全任せだからわざわざ事務所のレシピをみる奴がいないからだ… それに、見つけたやつにはアヘンスイーツ開発者の後継者になってもらうつもりだ」
「責任者を譲って、捕まったら見捨てるつもりか…」
エディの体は心臓の大きな音で響いている。
「どうした…時間稼ぎか?」
「ああ…お前を倒すための…」
「?」
左手の中の魔石は赤く光り、クルーウめがけて飛び出す。
「な、なんだこれは!」
クルーウは浮遊する魔石めがけて乱射するも、全然当たらない。
そして、魔石の光が消えたと思って一瞬の微笑み。クルーウは銃口を向けた…が、そこにエディはいなかった。
エディは、既に背後にまわっていた。
剣を片手に特攻。
(よし、このまま!)
あと少し、あと少しのところでエディは転んでしまった。原因は…魔力不足の立ちくらみだ。
「し、しまっ…」
クルーウはエディの額に銃口を向ける。
「余計なマネしやがって…死ね」
「くっ…!」
エディは再び魔石を動かす。標的は…銃
カツンカツンと銃に体当たりするが、全て無力。
「最後の悪足掻きか?くだらん」
「!?」
エディは最後の力を振り絞り、魔石を操りながら炎を付与した拳で殴るが、それもかわされてしまう。
一方、炎魔法を使ったことで魔石はコントロールを失い、たまたま銃口近くに落ちる。
「これだ…」
エディはこれを拾い、クルーウの発砲とほぼ同時に銃口に差し込む。
「うぁぁぁぁぁ!!」
反動で指から血が滲む。
だが、本来であればここでエディの頭に銃弾が貫通していたのだ。そう考えれば随分マシである。
「やってくれたなぁぁぁぁ!!」
クルーウはエディを一方的に殴ろうとするが、空振り。エディは魔石ですぐさま空中へ。そして、気付かれぬまま背後へ。
クルーウの背中は血で埋め尽くされ吐血、一瞬にしてエディの勝利が決まった。
「安心しろ… 急所は避けた。」
クルーウの体はロープで縛られ、銃はエディの付与魔法で円錐に変形。ただの金属の塊と化した。
エディはポーションをぶっかけ、その場に座り込み、とりあえず一安心する。
だが、血が滲んだ指は先ほど無理して剣を握った反動で完治はしていない。
魔石は完全に銃弾を弾いたと思っていたが、よく見たらめり込んでいる。
付与した魔力情報が今にも弾け飛びそうになっていたため、わざとデタラメな魔力を付与し、破壊。そして放り投げた。
エディは寮に戻らずギルドに活動報告&証拠提出をした。
クルーウと社長、開発部所属の部長及び数名は逮捕。クルーウに至っては大きなニュースとして話題になることに…。
エディも後日、その新聞の記事を読んだ。
(裏社会とは、ホントに身近なんだな…)
今日もエディは学業に励む。それは…社会の闇に抗う勇者の日常である…




