002 スキルはネットスーパー
「ここまで来れば安心だろう」
「ありがとうナッシュくんっ」
結構歩いたから疲れたけど、ここはどこなんだろう。
着くまでに化け物に何度も遭遇したけど全部ナッシュくんがやっつけちゃった。
包丁みたいな武器なんだなぁって思ったら、本当に包丁なんだって。
こんなに強いのに料理人なんだって言ってる。
この世界の料理人はみんな強いのかな?
「街まではまだまだあるが、この辺は比較的安全な場所だ。今日はここに泊まるぞ」
「え?泊まる?家は?ベッドは?」
「そんなものあるわけないだろう。ここで野営だ」
「むりー!日本のJKが野宿とかむーりー!こんな若くて可愛い女の子が外で寝るとかむーりー!」
絶対無理だよ。
床でもなくて土の上だよ?
どうやって寝ればいいのよ!
それにご飯もないし……本当にお腹空いたよぉひもじいよぉ。
「うるさい、そんなに騒ぐと魔物が来るぞ?」
「やだ、絶対やだ、静かにする!」
「はぁ、そうしてくれ。ところでひより、お前は16なんだろう。それならスキルがあるはずだ。スキルがあれば戦うこともできるぞ」
「えー、そんなのないよ。日本ではそんなのなかったもん。私にスキルがあるとしたら、かわいいってスキルだよっ」
「なんだそれは。とにかく調べてみるしかないか」
「やだ、なにするの!……わかった、私の事……だから助けたんだ!私が可愛いからあんなことやそんなことをするんでしょ!ナッシュくんのエッチ!」
さっきから何を言ってるんだこの女は。
何かするつもりなら、もうしているわ。
「するわけないだろう!いいから心の中でスキルオープンと唱えてみろ」
「心の中で~?ふーん、じゃあやってみてあげる!何かあったとしても、私は戦わないんだからねっ」
「いいから早くやれ」
「もー、急がせないでよ!やるから待って!」
心の中でスキルオープン~?
そんなことで何が……え?
『スキル:ネットスーパー(食材・調味料特化)』
『スキル:糸操作』
『無限収納(時間停止)』
ほ、本当に出てきた。
なにこれなにこれ。
ネットスーパー?
ち、ちちち、チートってやつうぅぅ?
でも食材・調味料特化って何?
それしか注文できないってこと?
でも地球の物を食べられるってことだよね。
やっぱチートだよ!
糸操作も気になるけど、戦闘向きじゃなさそうだし良かったかも?
でもどうやってスキルって使えばいいんだろう。
それもナッシュくんに聞けばいいよね。
それに無限収納で時間停止付きなんて、異世界チートの定番じゃん!
やったねやったね~
「ナッシュくん、ネットスーパーと糸操作ってスキルだったよ!どうやって使うの?」
「な、なんだその聞いたことないスキルは。ねっとすーぱー?どういう意味だ?」
「ネットスーパーはネットスーパーだよ!ネットでなんでも買えるの!」
「だからなんだそのよく分からない言葉は。なんでも?じゃあ何か買ってみればいいだろう」
「だーかーらー!そのやり方が分からないの!」
「そんなよくわからんスキル、俺が使い方を知るわけないだろ!」
何を言ってるんだこの女は。
聞いたこともない言葉ばかりしゃべりおって。
ねっと?すーぱー?
よく分からなすぎるな。
糸操作は糸のことなんだろうが、糸を操作してどうするんだろうか。
「とにかくそのねっとすーぱーとやらを使ってみるしかないだろ。やり方は分からんから、お前の国でやっているように使ってみたらどうなんだ」
「え~スマホもパソコンもないのに出来るわけないじゃん~」
やれって言われたってわかんないもん。
出来るわけないじゃん。
スマホかパソコン欲しいよぉ。
スマホの画面でササッとスクロールして~欲しいのポチポチ~ってして買いたい!
────え?
な、なにこれ、目の前にPCのウインドウみたいなのが見えるんだけど。
すごい、食材がズラっと並んでる。
触ったら買えるの?
「ナッシュくんナッシュくん!出た!ネットスーパー出たよ!買えるかも!食材買い放題だよ~」
「俺にはなんにも見えんが……使えそうなら良かったな。それで?何を買うんだ?」
「待ってて~今美味しそうなの買うからっ」
どれどれ~すご、野菜もお肉もお魚も、海外のまでなんでもあるよ~。
何にする?何にする?やっぱりお肉だよね?
牛肉かな~豚肉かな~鶏肉もいいな~。
ん~牛肉のステーキなんていっちゃいますか!
ポチっ
「え?なにこれ……F級魔石10?E級魔石5?D級魔石2?なにこれどういうこと!」
買うには魔石っていうものが必要なの?
嘘でしょ、なによ魔石って。
私そんなの持ってない。
「どうした?魔石と言っているが……買えないのか?」
「魔石がないと買えないんだって……ナッシュくん、魔石ってなに!」
こいつは魔石も知らないのか。
さんざんゴブリンを倒してきたが魔石は残していないからなぁ。
「魔石ってのはさっき魔物を倒したろ?魔物が体内に保有しているものだ。それを身体から抜き取って冒険者ギルドや商業ギルドで売るんだ。そうしたら金になる」
「ってことは魔物倒さないとなの?そんなの無理じゃん……詰みだ、これは詰んでるよ。どうすんのよナッシュくん!食べるものないよ!」
「魔石が必要なのか。あったかな……」
確かC級の魔石を手に入れてしまっておいたんだが。
お、あった、多分これだろ。
C級の魔石はもったいないが、俺には宝の持ち腐れだろ。
ひよりにくれてやるとしよう。
「ほら、これが魔石だ。これはC級の魔石になる」
「C級?これが?くれるの?」
「これがないと買えないんだろ?どうやるのか知らないがやってみろ」
「わーい!ありがとうナッシュくんっ!これで買えるよ~おっにっく、おっにっく!」
なになに~C級の魔石でステーキ2枚買えるのね。
でも待って、もっと食べたいし、ステーキのソースもないよ。
うーん、これはC級の魔石で安いのをたくさん買うほうがいいのかな。
他にも見てみないと!
「本当になんでもあるのね。鶏肉ならC級の魔石でも他の買えるみたい。うーん、これと~それと~」
「決まったのか?」
「うんっ!決めたよ!鶏肉のステーキと塩だよ!」
「ステーキ?なんだそれは。いいから買ってみろ」
「言われなくても!でもどうやって買うんだろう」
あっ、ここに購入ってとこがあるじゃん。
ここを押して~っと。
魔石投入口ってあるから、ここに入れるのね。
ではでは、投入~。
……で?どこから出てくるよ。
受け取り口はこちらってあるわ。
ここに手を入れて取るってこと?
出てこないってことはそういうことなのかな。
うーん、迷ってても仕方ないよね。
いくよ。
「ん?これかな?あっ、出てきた!鶏肉だ!じゃあまた手を入れたら……塩もゲットだよ~やったやった」
何をぶつぶつ言ってるのかと思ったが、本当に何か手にしてるじゃないか。
渡した魔石もいつの間にか消えているし、俺はいったい何を見ているんだ。
「買えたのか?」
「うんっ買えたよ~見て見てナッシュくんっ」
「それは……肉か?」
「そう!鶏肉と塩だよ~」
「はぁ?塩がそんな簡単に手に入るわけないだろ」
「ほんとにほんとに塩だよ~ほら、見てみて」
これが塩なわけがあるか。
みんな塩を手に入れるために必死なのに。
それにこの袋いっぱいに入っているのか?
バカな。
これだけの量を買うとなったらどれだけ苦労すると思ってるんだ。
「わっ、しょっぱ!ほら間違いなく塩じゃん」
「嘘をつくな嘘を」
見え透いた演技なんぞしおって。
俺は騙され……
「し、塩だ……しかも、美味すぎる……なんだこの雑味のない塩は。こんな塩、今まで食べたことないぞ……」
「塩でそんなに感動するの?日本じゃこんなの普通だよ~?」
「なんという国なんだ、ひよりのいた国は……」
ひよりが食の研究が盛んな国なのか?
「じゃああとは料理だね!」
「なんだ、ひよりも料理人か?」
なんて顔してんだ。
そんなに悲壮な顔をして。
「な、ナッシュくん~私料理むり~どうしよう、食材あっても料理したことないの忘れてたよ~どうすればいいの……」
「調理器具もなしにどうするのかと思ったが、ひよりのスキルは食材を確保するだけなのか」
「ぐすん、そうみたい、どうすればいいのぉ……」
どれ、この肉は……うーん、なんて新鮮なんだ。
これを使って料理してみたいな。
仕方ない、俺がやってやるか。
この肉と塩ならただやくだけで相当美味い肉になるだろう。
調理器具はないが、焚き火で焼くだけで十分だろ。
「この肉を使って焼くだけなら俺がやってやる」
「ほ、ほんと?でもあの臭くてまずい栄養剤みたいにならない?」
「あれはそういうものなんだ!嫌なら自分でやれ」
「うそうそうそうそ!やって、ナッシュくん上手だもんね、料理人だもんね!よっ!世界一の料理人!」
「ふふふ、俺が世界一の料理人だと?よく分かってるじゃないか」
ここは背に腹はかえられないわ。
たとえ不味くなろうとも、私がやるより絶対いいはずよ!
ここはおだててやってもらうしかない。
「ナッシュくんの焼いてくれたお肉食べたいな~美味しいんだろうな~世界一の料理人さんだもんな~」
「ふふふふふ、待ってろひより。この俺がひよりに料理を振舞ってやろう」
「よっ、世界一!かっこいいナッシュくんっ」
「ふふふふふふ、ふははははは!もっと褒め讃えよ、崇めるがいい!」
「素敵!ナッシュくん最高!」
なんなの、なんかめんどくさいよ、でもこうするしかないんだもん。
めんどくさいけど褒めるしかないよね。
「よし、ひより。火を熾すぞ」
「はい!できません!」
「それもできないのか。仕方ない、全て俺がやってやろう。その前に枝を集めるんだ。ひより!その辺の枝を集めろ!」
「はい!したことないからどれかわかりません!」
「その辺……いや、生木を選ばれても困る。ええい、それも俺がやらんとなのか。もういい!ひよりはそこで座って待ってろ」
「土の上に座りたくないです!」
「………………立って待ってろ」
「疲れたから座りたいです!」
「そのくらい自分でなんとかしろ」
「ナッシュ先生!全然やったことないからどうしていいか分かりません!」
「ぐぬぬ……もういい、ついてこい」
「はい、お供します!」
1人にされたら困るもん。
ついてく以外の選択肢なんてあるわけないじゃん。
早く食べたいなぁ。
もっとナッシュくんにはピチピチのかわいいJKの扱いを覚えてもらわないとね。
都会のJKが地面になんて座れるわけないじゃん。
「このくらいでいいだろう。戻るぞひより」
「もう終わったのね、さすが一流料理人、なんでもできちゃうなんてすごいな~」
「ふふふ、そうだ、俺はなんでも出来るんだ。行くぞ」
「わーいわーい、お肉だお肉だ~」
本当にこいつはなんにもせんな。
というか何も知らないのか?
まぁいい、さっさと火を熾して肉を焼こう。
俺も腹が減ったからな。
「夜は冷えるから、焚き火がいい感じだね~暖かいな~」
「肉と塩を寄越せ。さっさと焼いて食べるぞ」
「きたきたきたー!どうぞどうぞ、やっちゃってくださいナッシュくんっ」
早く食べたいな~塩しかないけど大丈夫だよね。
焼き方とか塩加減とか私には分からないから本当に助かるよ。
「さてと、どうするか」
この肉に塩をまぶして焼くだけでいいんだが。
こんなに贅沢に塩を使うのもなんだか罪悪感だな。
だが俺の持ってた魔石で手に入れたものだ。
ありがたく使わせてもらおう。
「むっ……」
「ナッシュくん、どうしたの?」
「いや、なんという滑らかな塩なのかと思ってな。食材に、肉に溶け込んでいくようで素晴らしい……」
「そういうのいいからはーやーくー」
うるさい女だな本当に。
この感動は料理人にしかわかるまい。
「今から焼くから待ってろ」
先程手に入れた手頃な木を串にしてと。
これでいい。
肉も柔らかいな、串がすっと通るんだ。
これは上手いぞ絶対に。
「おー、焼けてきた匂いがする!もう美味しそうだよ~あーお腹空くー!」
「本当にいい匂いだな。空腹が刺激されてやばいな」
「はっやっく、はっやっく!」
もう我慢できないよ~早く焼きあがって~
「ほら、出来たぞ。ただの塩焼きだが食べてみろ」
「1番を私にくれるなんて、やっとJKの扱いが分かってきたねっ!それでは遠慮なく~いただきます!」
先に俺が食べたらうるさいだろうからなだけなんだが……
「お、美味しい!塩だけなのに最高に美味しいよ~」
そりゃあ俺が焼いたんだ、普通の人がやるより美味しいに決まっているだろ。
さて、ひよりも食べてるし、俺もいただくとしよう。
「………………な、なんだこれは、う、美味すぎる」
贅沢に美味い塩を使ったからなだけではない。
この噛めば噛むほど口の中に広がる肉の味。
芳醇な塩の香り、香ばしい肉の匂いが鼻から抜けていく。
何だこの肉は……
こんなの食べたことがないぞ。
ただ焼いただけなのにこの美味さはなんなんだ。
「なんでナッシュくん泣いてるの?」
「バカな……美味すぎて涙が勝手に……」
「そんなに感動するほど?この世界の料理って、もしかしてとってもまずいの?」
「そ、そんなわけあるか!この肉と塩が美味すぎるだけだ!」
「ふーん、こんなの普通だけどなぁ。でも今日のは特別美味しいかも!」
これが普通、だと?
ひよりはどんな国から来たんだ。
負けてられないな。
俺の手でひよりの国の料理を超えてやろうじゃないか。
いつかひよりも絶対泣かせてやる。
この俺の料理でな。
ナッシュ……
面白いと一欠片でも思って頂けたなら、お手数ですがブクマと星評価をよろしくお願いいたします。
特に星評価をもらえると最高に喜びます。




