013 決着!木炭と共に灰になる料理人
「美味すぎるぞ嬢ちゃん!こりゃー酒が飲みたくなってくるな!」
「まだお昼なのに飲んじゃうの?はやくない?」
「嬢ちゃんも飲むか?」
「私は飲んだことないからいらないよっ!それにお酒は20歳からだもん~」
「はぁ?嬢ちゃんの世界じゃそう決まってるのか!酒なんて何歳から飲んでも一緒だぞ!」
「飲まなくてもいいんだもん。お肉が美味しいしっ」
「かーーっ分かってねぇなぁ。ワシは飲ませてもらうぞ!こんな美味い肉なんだ、飲まなくちゃもったいねぇ!」
本当にドワーフってお酒が好きなんだ~
美味しいのかな?
パパもたまに飲んでたけど、飲みたいとは思わなかったなぁ。
パパもママも元気にしてるかな。
私は寂しいけど、みんなのおかげで毎日楽しいよ。
「ハラミにロース……」
どれも焼き加減が微妙に違う。
一歩間違えれば焦げてしまう。
集中し続けなければ一瞬にして負けだ。
「ん~おいしい!ねぎ塩で食べるの最高だよ~みーちゃんもたくさん食べようねっ」
『キューーーッ!』
みーちゃんはいつの間に食べる側に回ってるんだ。
焼きが追いつかないじゃないか。
肉がどんどん減っていきやがる。
だが俺はまだ完璧なコツが掴めていない。
みーちゃんは料理人じゃないから焼くのをやめるのはいいかもしれん。
だが俺はそんな中途半端なことはしてはならんのだ。
焼く、俺は焼く。
完璧に焼くんだ。
次の肉はなんだ。
さあこい。
なんだって焼いてやる!
「ナッシュくん!今度はしいたけとお野菜も焼いていってね~」
今度は野菜だと?
しいたけってなんなんだ。
「はい、これがトウモロコシとピーマンと人参と玉ねぎとしいたけだよっ」
「こ、こんなに……」
「お肉も並行して焼いていってねっ」
なんだ、と?
全てをいっぺんに俺が焼き加減を管理しないとなのか。
ふ、ふふふ、ふはははは!
やってやろうじゃないか。
見事こなしてやろう。
そして感動するがいい。
さすがナッシュと言わせてやる。
「野菜も美味すぎる!特にこのトウモロコシってのはなんだ!タレなんかいらねーじゃねーか!」
「うんうん、甘くて美味しいよね~」
『キュー!』
ふふ、みんな楽しそう。
美味しいと幸せだもんねっ
「私はしいたけ食べたいな~ナッシュくん、しいたけ出来そう?」
「もう少し待て」
「はーい、待ってるね~」
「ワシはねぎ塩と塩ダレにハマっちまったな!もうなくなったぞ、ガハハ!」
「私もまだ食べたいし、追加でねぎも刻んでねナッシュくんっ」
デラルさんは食べ過ぎだよ~
でもそれだけ美味しいって思ってくれてるんだもんねっ
「わ、わかった。すぐ作るな……」
ここに来てねぎ塩の追加注文だと。
焼き加減を見ながら刻む作業……
やってやろうじゃないか!
「うぉぉおおおおお!」
刻みつつ肉と野菜の確認だ。
くるっとひっくり返す、そしてまた刻む!
「うぉぉおおおおお!」
更に新しい肉を網へ。
ねぎを器に移し、そこへ塩とごま油を投入だ。
和える前に焼き上がるのが早い肉の確認をし、野菜の仕上がりも要確認だ。
よし、今だ、和えろ!
「ほら、ねぎ塩完成だ」
ナッシュくんすごい、もうみじん切りも完璧じゃん。
飛び散りは凄かったけど。
「どれどれ……なんだ、塩加減がイマイチだな!もう少しっと」
「そんな濃くしたら……」
「えーそんなに入れたらしょっぱすぎるよ~。ナッシュくん、もう1回ねぎ塩お願い~」
「お、おう……」
「ねぎはまだまだあるからねっ!」
「ま、任せておけ」
「ありがとう~やっぱりナッシュくんは頼りになるねっ」
ナッシュくんがいなかったら、こんなに美味しく焼肉できないもんね。
お店並みに美味しいもん~
『キュー!キュッキュキュ!』
「みーちゃんはタレが好きなんだね~たくさんあるよ~お野菜もたくさん食べれてえらいね~こんなに小さい身体なのにねっ」
「うぉぉおおおおお!」
楽しそうに食べてるな。
美味しそうに食べてるな。
くっ、なんで涙が出てくるんだ。
いや、これは涙なんかじゃない、額からの汗だ。
料理に没頭して出てくる汗なんだ。
仕事している男の汗なんだ!
「ガハハ!酒が止まらんな~嬢ちゃん、焼肉ってのは最高だな!」
「そうでしょそうでしょ~美味しいし楽しいねっ」
『キューーーッ!』
世界一の料理人の俺が焼いているんだ。
美味いに決まっているさ。
そして大いに楽しんでくれればいい。
料理人冥利に尽きるってもんだ。
汗が止まらん。
これは炉のせいだ。
焼きを任されている男の勲章なんだ。
だから下をむくんじゃない。
胸を張って焼き続けろ!
「そろそろ牛肉じゃなくて鶏肉と豚肉もいっちゃおうかなっ!このお肉で最後になるよっ」
「なんだ嬢ちゃん!牛肉以外もあるなら早く言え!」
「まぁまぁ、美味しいからいいじゃん!みーちゃんもデラルさんもまだまだ食べれる?」
『キューーーッ!』
「おうよ!まだまだ食い足りねーからな!」
「おっけ~、ナッシュくん、鶏肉と豚肉はしっかり焼かないと病気になっちゃうから、焼き加減気をつけてね!半生厳禁だよ~」
異世界だからより気をつけないとだよね。
ちゃんと火を通さないと危ないもん。
こんなトイレのしっかりしてないところでお腹下したくないよ。
それに病気になって治らなかったら、それこそ……
だからちゃんと焼いてもらわないとね。
「しっかり、だな。わかった……」
これが最後の肉達だな。
かなり気力も体力も消耗している。
だがそんなのは言い訳だ。
俺がやらねば誰がやるんだ。
俺はもう負けないと誓ったんだ。
最後の力を振り絞って焼くんだ。
「みーちゃんは鶏肉食べて平気?」
『キュ?』
「なんでって……なんでもない!たくさん食べようねっ」
『キューーー!』
待ってろ、今焼いてやる。
豚肉だろうが鶏肉だろうが、極限に集中している俺に焼けない肉はない。
聞こえる、聞こえるぞ肉の声が!
「ほら、できたぞ」
「わーい、タレとねぎ塩どっちがいいかな~」
「どっちも美味いぞ!ガハハ、豚肉も鶏肉も最高だな!」
「どっちもいっちゃえばいいの、あったまいい~私もそうしよっ」
ちゃんと焼けてるよ~ナッシュくんグッジョブすぎるねっ
でもすごい汗かいてる。
ちゃんと水分とれてるのかな?
「ナッシュくん、お水はちゃんと飲まないとねっ!はいこれ飲んでねっ」
「ありがとうひより……んくんくっ」
はぁ、生き返るようだ。
俺の心配をしてくれるなんて、ひよりは優しいな。
これでまだまだ焼けるな。
「よし、あと少しで終わりだ、一気に焼いてやるから残さず食えよ!」
「「おー!」」
『キュー!』
あと少し、あと少しだ。
ここが踏ん張りどきだぞ。
今の俺に怖いものなんてない。
最後の最後も完璧に焼き上げてやる!
「あー、おなかいっぱい」
「ワシも久しぶりにこんなに食べたぞ」
『キュー』
「みーちゃんも大満足だって~良かったねっ」
みーちゃん仰向けになってる~
かわいいなぁ
「いやー、美味かったな。当分肉は食わなくても平気なくらい食べた気がするな!」
「気に入ってくれてなによりだよっ」
「またいつでも来い。歓迎するからな、ガハハハハ!」
みんなでする焼肉パーティーは最高に楽しいもんねっ
「うんっ!またみんなでしようねっ」
終わった、か。
この達成感と満足感はなんなんだろうか。
ひよりが笑顔だからかもな。
俺は今日の焼肉パーティーで料理人として一段上に行けたような気がする。
やりきったんだ、この大量の肉と野菜をほぼ一人で焼き続けたんだ。
一口も食べずに、な。
なのになんで涙が止まらないんだ。
はは、あの木炭と同じように燃え尽きたぜ。
ああ、お腹すいたな……
「こんなに美味しかったのはぜーんぶナッシュくんのおかげだねっ」
ってあれ?ナッシュくんどうしたの?
壁によりかかって項垂れてるじゃん。
「ガハハ、確かにナッシュのおかげだな!立派な料理人になって、お前の師匠もさぞ鼻が高いことだろうよ!素晴らしい焼肉だったぞ!」
「そういえばさ、ナッシュくんって食べてた?」
「さぁ、ワシは見とらんぞ?」
「おなかいっぱいになって、それで焼いてもいたから疲れちゃったのかな?」
「仕方ない、今日はうちに泊まってけ!ナッシュはベッドに寝かしておいてやろう」
ナッシュくん大丈夫かな?
起きたらたくさん褒めてあげないとねっ
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