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追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜  作者: 音無響一


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10/13

010 コンソメで劇的ビフォーアフター

「ちゃんと部屋にいるな。何も変わりなかったか?」


「……うん、なかったよ?ね、みーちゃん!」


『キュッ!』



なんか怪しいな……

危ないことに巻き込まれてなければいいんだがな。



「ところで修行はどうだったの?」


「ああ、修行はしてない。その代わり名工デラルに会えたんだ」


「あー、あのお鍋の人。会えてよかったね!」


「良かったよ。これで包丁も新しくできるだろうしな。それにひよりの言っていた網も作れるかもしれないぞ」


「そうなんだ~ふーん、良かったね!」



反応が悪いな。

喜ぶと思ったんだが……







「ところで今日は何食べる?調理器具もあるし、この部屋はキッチンもあるんだから、なにか料理作ってよ!」



あやとりで作れるかな~ってやってみたら、網までできちゃったなんて言えないよ~。



「どんなのが食べたいんだ?」


「ナッシュくんの得意料理がいいなっ」


「ほー、得意料理か。いいだろう。俺の言う食材を買えるか?」


「もちろんだよ~なんでもあるからねっ」



良かったぁ。

話題を変えられたよ。

話してもいいんだけど、変なことしてたって怒られたくないもん~







「豚肉ね!豚バラ?豚ロース?豚トロもいいよね~」


「なんだそれは?豚肉は豚肉だろう?」


「牛肉の時も思ったけど、細かい部位で違いを感じてないの!?」


「そんなに違うのか?」


「ぜんっぜん違うよ~」



得意料理を披露しようとしたのにこのモヤモヤ感はなんだ。

やる前からの敗北感はきつい。







「どこの肉が好きなんだ?」


「うーん、豚バラかな!」


「どこの部位のことを言うんだ?」


「詳しいことは知らないよっ」


「そ、そうか……」



ここ部分が豚バラだよ~なんて詳しいJKがいるわけないじゃん。


ナッシュくんの得意料理も食べたいけど、豚トロも久しぶりに食べたくなってきたな~


あ、豚肉の焼肉もいいよね~

タレよりネギ塩で食べるのが美味しいんだよ~

待って、豚しゃぶしたいかも。


でもしゃぶしゃぶのお鍋もないし、コンロもないもんね。

うーん、やんなっちゃう。








「…………今言った野菜も頼む」


「おっけ~。多分じゃがいもと人参とキャベツと玉ねぎみたいなやつだよね~」


「ひよりの国の野菜もやはり美味いんだろうか」



たかが野菜で差が出るとは思わないがな。

どこの野菜も大差ないだろ。


ないと思うんだが、あの美味すぎる肉を考えると、野菜もそうなのかと思ってしまうな。







「はい、お野菜だよ!これでいい?」


「これは……なんてみずみずしいんだ。このオレンジ色のやつなんて大きいな。見たことないぞ。これが根菜なのか?とても俺の知っているものとは思えん……」



ナッシュくんは相変わらずブツブツ言ってるんだよなぁ。

そんなに珍しいのかな?

この世界の人の食事情は大変そうだよね。



「それで、何を作ってくれるの?」


「スープだ。野菜と肉を煮込んだスープを作ろうと思う」


「ふ、ふーん、出来上がるの楽しみにしてるねっ」



スープかぁ。

お味噌汁が恋しいな。

ママの作ってくれた大根のお味噌汁が大好きだったなぁ。

ダメダメ、思い出す度に寂しくなっちゃう。


ナッシュくんはどんなスープ作ってくれるんだろうな~。








「さて、やるか。まってろひより。腹を空かせてな」


「もう空いてるからはーやーくー」



ふふふ、ついに来たなこの時が。

まずはこの野菜を切り刻む。

大きめがいいな。



「あ、ナッシュくん!ジャガイモの芽はちゃんと切り落としてね!そこは毒らしいよっ」


「は、はぁ?毒?毒のある野菜だと!ひよりの国は毒を普通に食べるのか!」



なんて野菜を作ってるんだ。

こんなの食べれるわけないだろう。



「違うよ!私も詳しいことはわからないけど、学校の家庭科の授業でカレーを作った時に教わったんだよ~。この部分を抉りとる?そんな感じ。あとの部分は毒がないから安心してねっ」


「こ、こうか?」


「そんな包丁の先で切ってたら大変じゃない?たしか包丁の後ろのここの部分でやるんだよ」


「ここで……こうすると。確かにやりやすいな……」



こいつは本当に料理ができないのか?

こんな的確に包丁の使い方まで教えられるとは思わなかったぞ。


くっ、これじゃあどっちが料理人か分からないじゃないか。



「ねぇねぇ、ナッシュくん。人参とか玉ねぎの皮ってそのままなの?」


「ど、どういうことだ?」


「人参とじゃがいもはそうでもないけど、玉ねぎの皮は取り除くのが普通だよ!」



そ、そうなのか。

見たこともない野菜だから分からなかったが、ここでも教えられるとは……



「な、この色は……」


「玉ねぎは茶色の皮も食べれるらしいけど、あんまり美味しくないんだよ~」



茶色の皮の下にあるこのきれいな白色のものはなんなんだ。


これが……野菜?

どんな味がするんだ。


くそっ、集中できない。

ひよりを感動させたいのに、俺ばかりが衝撃を受けてどうするんだ。


それに皮をむくだと?

そんなことする必要があるのか?


根菜なんて切ってそのまま鍋に入れるのが普通じゃないのか……



「なんで皮をむく必要があるんだ?」


「うーん、美味しくないのと食感だね!」



食感……なんだそれは。

口に入れれば全部一緒だろう。

ダメだ、聞けば聞くほどわからない。

ひよりの食べている普通とはなんなんだ。







「まーだ~?」


「もう少しだ。今順調に煮ているから期待して待っていろ」


「はーい、期待してまーす」



そこまで言うなら期待しちゃおうかなっ。

ナッシュくんの初の手料理だもんね。

焼くだけも料理かもだけど、ちゃんとしたのは初めてだから楽しみっ。



「ここで塩を……肉も野菜もいい香りだな……」



まーだブツブツ言ってるよ。

ナッシュくんのスープって煮込んでるだけだけど、ポトフ?


それでも私にはできないからすごいことだよね。







「よし、いい感じに煮込まれてきたな。ここで最後の仕上げだ……」



くくく、これはひよりの国にはないだろう。

俺が発見した野菜だからな。

この香りのある野菜を入れるだけで、ただの塩スープの風味が変わるんだ。


ほうら、食欲をそそるいい匂いがしてきたぞ。

ひよりの泣いている顔が目に浮かぶようだ。


これを器に盛り付けて、と。








「待たせたな。これが俺の特製スープだ」


「おーいい匂い!」


「ふふふ、そうだろう。これは特別な俺しか知らない野菜が……」


「ハーブの香りだねっ!」


「は、はーぶ?」


「そうだよっ。知らないで使ってたの?」


「い、いや、これは俺が発見したもので……」


「ふーん、ハーブもまだ知らないんだね~」



どうなってるのこの世界って。

料理のレベル低すぎない?



「でもいい香りだねっ!それじゃあいただきますっ」



……うーん、香りはいいけど、やっぱりただの塩味だよね。

出汁があんまり効いてないんだろうな。


煮込んではいたけどそれだけ。

野菜は美味しいしお肉も美味しいけど、ハーブの香りと塩味って感じ。









「ど、どうだ?」


「美味しいよ?久しぶりの温かいスープはやっぱりいいよねっ!ありがとうナッシュくん!」


「そ、そうか……」



感動してるわけじゃなさそうだな。


それにしても……はーぶだと?

俺が必死に修行して、たまたま見つけた香り高い野菜は普通なのか。

ひよりの国はほんとうになんなんだ。



「でもやっぱりなぁ……あっ、そうだ!コンソメ入れたら絶対美味しいよ!」


「こんそめ?それはなんだ?」


「んーとねー、あっ、あった。これこれ!顆粒タイプがいいかな?」



何をするって言うんだ。

その粉はなんだ。

魔法の粉でもあるというのか?







「ナッシュくん、これ入れてもいい?」


「ああ、構わないが……」


「サラサラ~っと。グルグルっとかき混ぜて~」



料理出来ないけど、ただかき混ぜるだけだから私にもできちゃうよね~。

簡単簡単。



「それを入れるとどうなるんだ?」


「味見するから待っててね~」



ん~美味しいっ

コンソメの優しい味に仕上がったねっ







「はい、ナッシュくん、食べてみてっ」



香りが全然違う。

何だこの濃厚なのにくどくない香りは。

スープの色が輝いて見えるのはなぜなんだ。

ひよりは何をスープに入れたんだ。



「食べる……ぞ」


「私が作ったわけじゃないけど~どうぞっ」



────これは泣くだろ。



何だこのコクは。

煮込んだ塩スープでは絶対に出せない味じゃないか。

あの粉は魔法だったのか。

美味しくなる魔法、それがこんそめってことか。


俺のスープの味なんて、あの香りのある野菜を入れただけの塩味なのに。


ひよりが粉をふりかけ、かき混ぜただけで、こんなにも劇的に味が変わるものなのか。


俺のしてきた料理っていったいなんなんだろう……







「みーちゃんも食べる?熱いけど平気?」


『キューッ!』



みーちゃんは何でも食べちゃうんだもんな~

好き嫌いしなくてえらいぞっ



「やっぱりコンソメは美味しいねっ」


『キューーーッ!』



はふはふっ、おいしっ

でもやっぱりお味噌汁が恋しいなぁ。

調味料のとこにあるけど、ナッシュくん作ってくれるかなぁ。







「本当に美味しいな……」



悔しい。

猛烈に悔しさが込み上げてくる。

なのに食べる手が止まらない。


俺は食材を切って捌いて煮込むか焼くだけの存在でしかないのか。

そんなの誰だってできるじゃないか。

※ひよりはそれができない※


俺がいなくてもひよりがいれば美味しい食事になるじゃないか。

※ナッシュくんがいないと成り立たない事実に気づけていない※


俺の存在意義はなんなんだ。

俺なんていなくてもひよりは生きていけるんじゃないのか。

※多分無理※


何が世界一の料理人だ。

師匠から包丁を受け継いで研鑽してきたはずなのに……


ちくしょう!

こんな魔法の粉がある食文化に勝てるわけない。


だが俺は負けない!

何度だって誓ってやる。

負けても負けても、最後に勝つのは俺だ!

ひよりを満足させる料理を作れるのは俺しかいない!


今に見てろひより。

絶対に感動させてやるからな!





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