【A組とF組】
HRが終わり、授業が始まるまで10分ある。
「リツ、移動教室だよ。」
「うん。」
僕らは同じ3年A組。
今のS.B.学園内では1番のクラスだ。
S.B.学園にはS組というA組の上の伝説のクラスがあるのだが、今までほとんどそのクラスが開いたことはない。
S組は将来エリート間違いなしの超凄いクラス。
誰もが憧れるクラスだ。
学園にはどの学年にもA組からF組まである。
クラスは生徒の成績で決まる。
この学園は学力絶対主義の世界だ。
と、言いたいところだが、そんなこともない。
この教室分けは全生徒が見ることができるのだが、そうではない裏クラスというものがある。
これは主に各教科につけられるもので、数学がとても得意だが、他の教科はからっきしダメなど偏っている人が教室のクラスよりも高いものをとっていることがある。
そう、体育の成績が良いならA組に入れる確率が上がるのだ。
裏クラスが優秀だと放課後にあるような授業を受けられたりするのだが、その裏クラスのアルファベットが何がどれだけあるかで表のクラスも決まってくる。
クラスは生徒のブレザーについているバッチを見ることでわかる。
裏クラスは生徒のデジタル版の生徒手帳で自分のもののみ確認することができる。
ここで誤解をしてほしくないのだが、S.B.学園は国内トップのエリート学校。
F組と言ったら聞こえは悪いが、彼らも世間一般的に見ればエリートだ。
「…ツ、リツ!」
「ん?なに?」
いつのまにかぼーっとしていたようだ。
「…話聞いてた?イブキが一緒に春休み旅行行こうだって。」
「ああ、うん。行こう。場所は?」
「下呂温泉。」
「行ってみたいって言ってたもんな。」
イブキとの過去の会話を思い出す。
「ちゃんと話聞いてよ。」
「ごめんて。」
イブキが自分の席に戻ってしまい、少し拗ねているシュウに謝りながら僕は前の授業の内容を思い出していた。
授業が終わって横を見るとシュウが寝ていた。
「シュウ?授業終わったよ。」
「ん…もうちょっと…」
シュウはもう一度腕に顔を擦り付けて寝始めた。
イブキに目線を送ると、イブキが来て、起こしてくれた。
「シュウ?次は教室だよ。」
「ん。起きる〜」
「いや、なんでだよ。」
ツッコミを入れつつ僕はシュウの荷物を持ってあげた。
「ありがと、リツ。」
「はいはい。」