【春からの手紙】
ある朝、僕はいつも通り郵便を確認しに家を出た。
まだ朝早いのにセミが鳴き初めている。
「よっ、と。」
家の前にある階段をステップを踏みながら降りた。
いつも通り新聞を取ると、僕はさっとポストの中を見て閉めようとした。
「ん?」
ポストの中には封筒に入った手紙が入っていた。
「珍しい。」
僕は手紙を手に取り、宛名を確認した。
『14歳の君へ』
今、うちの中で14歳なのは僕だけだ。
「誰だ?ふざけてるのか?」
僕は差し出し人を確認した。
『10年後の春より』
「10年後?春?は?」
仮に10年後の誰かから手紙が来たとして、その春とは誰だ?というか、これは名前なのか?
「はぁ、なんなんだ。…少し気持ち悪いな。」
僕は少し門を開けて周りを見た。
が、誰もいなかった。
人の気配なんてないし、いるのはスズメくらいだった。
「…お前が持ってきたのか?」
僕がそう問いかけると、スズメは首を傾げながら一声鳴いた。
「なわけないか。」
スズメが飛んで行った空を少し眺めていると、お腹がなってしまった。
「…お腹空いた。このことは後で考えよ。」
僕は手紙をポケットに突っ込み、階段を登って家に入った。