あっち行こうぜ!!!
ここ一週間ほど、毎朝出くわすやつらがいる。
一方通行の路地沿いの、小さな公園裏の、くたびれたネットフェンスの上に…並んでいるやつら。
毎朝ウォーキングに行く途中で、必ず見かける、やや落ち着きのない姿。
早朝六時からおしゃべりを楽しんでいる、元気な面々。
―――うわ、またアイツ来たよ!!
―――まーた性懲りもなく近づいてきて!!
―――あいつマジなんなん?
―――足音とかうるさすぎんだよなあ…ちったあ気ィ使えっての!!
―――やっべ、鈍いくせにもうこんなとこまで!!
―――でかい体のやつってのは一歩が大きいからな…
―――風圧が来るのが地味にウザいんだよ、あっち行こうぜ!!
―――行こ、行こ!!!
ババサササッ!!!!
黄色い足の灰色ボディ、黒頭、白い顔に黄色いくちばしの…ムクドリたちである。
ご丁寧に人様の顔を見て首を傾げ、ちゃっちゃとネットフェンスの上を移動して遠ざかり、真横を通るあたりでこれ見よがしに飛び立っていく、二匹の鳥。
毎日顔を合わせているので、ちょっとは慣れてくれるかと思いきや、連日のこの塩対応である。
わりと近い場所を通りかかるので、写真の一枚ぐらい撮らせてくれないかと思っているのだが…、スマホを取り出した瞬間に飛び去ってしまうという。
―――げえ、まーた来た!!
―――なんだよ、ヒマ人かよ!!
―――なんでこの道ばっか通るのかね?
―――あっちの道の方が広いのにね!!
―――うわっ、小石蹴飛ばしてきた!!
―――でかい体のやつってのはホント気遣いがなってない!!
―――つか、うすのろなんかに構うの、ばかばかしくね?
―――あっち行こ、行こ!!!
てってけてー!!!!
大きな公園を巡って帰ってくれば、早朝の誰もいない路地のひび割れたアスファルトの上をトコトコと並んで歩いているのに出くわす。
羽があるくせに素早く走り去るという意表をついた行動に、思わず目を見開いて…視線を送ってしまうのだ。
カラスのように高い位置から見下ろすでもなく。
スズメのように植木の中から様子を窺うでもなく。
ハトのようにどこかでデーデーポッポーとさえずるでもなく。
どこかせわしく、仲よさげで、おちょくるような、気弱なような勝気なような、肝試しをしているような、ツンデレくさいような、じゅるじゅる、ぎゃあぎゃあ、みちゅみちゅ、ぎゅるぎゅる鳴きながら…騒がしく去っていく、二羽。
……つがいかな?
あたりに他のムクドリの姿はないし…、どこからか旅をしてきてここにたどり着き、この場所を住処として決めたのかもしれない。
確かムクドリは…、家族で一緒に行動を共にするはず。
ヒナが生まれて育ったら、もっとうるさくなりそうだ。
あんまり騒ぎすぎて、追い出されないといいね……。
そんな事を思いながら…、私はヒップバッグについた鈴の音を響かせつつ、自宅へと急いだのであった。