表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/250

第2話 新しい世界

 暖かい。

 ずっとこのまま、この暖かさに包まれていたい。


 はるかが光に包まれたと理解した後、心地良い暖かさを全身で感じていた。

 そしてその事を頭で考えられるようになった瞬間、急に肌寒さと自身の体の重さ感じ、はるかはその場に座り込んだ。


 眩しい太陽の光。

 晴れ渡る青い空。

 どこまでも広がる草原。

 座り込んだ私の手に触れる黒味がかった硬い葉っぱ。


 順々に感じた事を考えていた時、はるかの肩までの長さの黒髪を強い風が撫でた。

 乱れた髪の毛を直していると、自身の服装が目に入った。


 腰元に緩いくびれのある白に近い紫色のワンピースが身体を包み、足はヒールの低い黒のロングブーツを履いていた。

 首元までしっかりと覆う襟首を触りながら、その触り心地の良さに少しだけ驚く。

 袖は肘までの長さだが、寒さも感じないので着心地がとても良い。


 そしてはるかは首に掛けてある胸元までの長さの装飾品に気が付いた。


 シンプルなシルバーチェーンの先に卵形の光をも吸い込んでしまいそうな漆黒の色をした石が付いている。

 本来ならあるはずの石を留めている部分が石の中に埋め込まれているのか、表には出ていない。

 なのでチェーンの部分に直接付いているようにはるかには見えていた。


 石の大きさは手の平より少しだけ小さめの石だが……私には見覚えのないペンダントだった。


 様々なものを確認していると、少し頭がはっきりとしてきた。

 そして今度は周りをゆっくり見渡すと——遠くに何か建物のようなものが見えた。


「特に問題はなさそうだな」


 急に、聴き慣れた声が頭の中に響いた。


「ここがこれからお前が生きていく新しい世界だ。言葉も魔法もこの世界に対応できる身体になっている。形になるものはその首から下げてある装飾品だ」


 神様が淡々と説明を続けていく中、はるかは理解が追いつかずに混乱する。

 そんなはるかを他所に、神様は説明を続けた。


「そしてお前が想像した通り、魔物も存在する。服に魔除けは施してあるが、いつまでもそこに座り込んでいたら襲われる」


「えっ!?」


 そんな危険な場所に放り出されている事を無理やり自覚させられて、はるかは驚きの声を上げた。


「願いは確かに聞き届けた。これからは自分を信じて生きていけ。さらばだ」

「えっ……?」


 神様は言いたい事だけ言って、消えてしまった。


「あの……神様?」


 声をかけてみたが返事はない。

 先程まで姿は見えなくとも、なんとなく存在を感じていたのに今はまったく感じない。


「うそ……うそでしょっ!?」


 右も左も分からない状態で放り出されてはるかは頭を抱えて叫んでいた。


『いつまでもそこに座り込んでいたら襲われる』


 混乱しながらも神様の言葉を思い出して、はるかは立ち上がろうとした。

 しかし、まだ転生してきたばかりだからか足に力が入らず、思い切り体勢を崩して地面に手をついた。


「いったぁ! ……もう、いやだ……」


 こんな状態で生き延びるなんて無理じゃない!


 膝を抱えてうずくまりながらそんな事を考えていた時、神様とは違った声がはるかの耳に届いた。


「お前……さっきから1人で何しているんだ?」



 私は今でもこの瞬間を覚えている。

 1人でどうしようもなくなっていた私を救い出してくれた優しい声。

 神様よりもよっぽど神様みたいな人だな、なんて後に思う私はそんな彼に生涯感謝する事になる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ