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第1話 奇跡

 突然の光にはるかは思わず目を閉じたが、すぐに性別の判断がつかないような不思議な声が耳に届いた。


「天崎はるかよ、お前の両親の願いにより、我はここへ来た」


 その言葉ではるかはうっすらと目を開け、部屋の中を確認した。


 扉は未だ開かず、その代わり不思議な白い球体の光がはるかの部屋を照らしていた事を理解した時、ようやく声が出せた。


「誰……ですか?」

「お前達が神と呼ぶ存在だ」


 光の方から返事が聞こえた。


 神様?

 なんで神様がいるの?


 戸惑うはるかに神様は真実を突きつけてきた。


「お前の両親は命を奪われる中、それでも残される子を想っていた。その命を賭けた願いを聞き届ける為に我はここにいる」


 命を……奪われる?

 それって——


 もう、死んでしまったって……こと?


 先程の尋常じゃない物音はそういう事だったのかとはるかが理解しかけた時、神様は続けて言葉をかけてきた。


「お前は生き延びて幸せに生きる事を願われた者。だが、どんな生き方をするのか、それは生きる者が決める事だ」


 一旦言葉を切り、神様は選択を迫る。


「だから決断せよ。ここに残り僅かばかりの生を全うするか、違う世界へ転生して新たな生を歩むか、お前が選べ」


『生き延びて幸せに生きる事を願われた者』


 自分達が死んでしまう状況でそんな事を想ってくれた事実を知るが、まだ理解が追いつかない。

 しかし、はるかの身体はその事実を受け入れたかのように自然と涙が溢れていた。


「嘆き悲しむ時間はない。今、我が時を止めているが、もうすぐ時が動き出す。そうなれば選択すら出来ずに命を落とす事になる」


 その言葉ではるかの頭はゆっくりと動きだした。


 これは……私のお父さんとお母さんが起こしてくれた私だけの奇跡。


 ずっと、家族みんなで過ごしていくものだとばかり思っていた。

 そんな幸せな日常がこんなにも呆気なく終わってしまうなんて、想像すらしていなかった。


 そんな私への……両親の最後の願い。


 だから……その願いを叶える為に——私は生きる。


 いつか私も魂になって2人に会えるその時まで、どんな世界でも生き抜いて幸せになってやる!!


 そう決めたはるかは涙を流しながらも、白く輝く光を力強く見つめながら気持ちを告げる。


「私は……違う世界へ行きます」

「選べたようだな。ではどのような世界を望む?」


 その言葉ではるかは涙を拭い、望む世界を想像してみた。


 まさか自分の身に異世界転生という出来事が降りかかるとは思わなかった。

 だからか漫画やアニメ、それに加えてゲームでの知識も多少はあるはるかが想像した世界は——魔物や魔法が存在する世界だった。


「理解した。ならば早速旅立つとしよう」


 考えていた事が神様にも筒抜けだった事に驚きつつも、はるかは急いでその言葉を止めた。


「あの! お願いがあります!」

「なんだ?」


 まだ話を聞いてくれそうな神様に、はるかは思い切って意見を言ってみた。


「私は……この姿のままで生まれ直したいです! それと……いつでも両親がそばに居るのを感じられるように、何か形になるものが欲しいです」


 少しの沈黙の後、神様は淡々と返事を返してきた。


「その願い、聞き届けよう。ではしばしの間、眠りについてもらう。次に目覚めた時、目にする世界がお前の新しい世界だ」


 その言葉を聞き終えた瞬間、優しい光に包まれながら——はるかの意識は途切れた。

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