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僕は魔法が使えない  作者: 三遅三九
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僕は魔法が使えないー2

明春学園に入学した2日目の朝、8時。

寮の部屋はそこまで広くはないが狭いと感じるほどでもない。

必要なものは最小限揃っている。

蓮は寮の一階に降り、食堂で朝食をとった。

蓮の寮は朝と夜の二回ご飯が出る。

ただ量があまりないので、割と食べる蓮にとっては物足りない感じがした。

そんなことを思いつつも8時半、登校の準備をしれ寮を出た。

寮から学園までは道路を挟んだ向かい側にあるので、徒歩10秒ほどで着く。

学園にはすでに結構な生徒が登校していた。

100mある道を歩き、校舎についた。

今の時代、下駄箱はというのはなく、靴を履かないのは家だけとなっている。

そのため校舎には常に清掃ロボが巡回している。

教室に着くと昨日の4人が蓮の机の周りで話していた。


「おはよー」


「おぉ、蓮か」


「お、おはようございます」


「「おっはー」」


帰ってきたのは三者三様の答えだった。

そこから蓮を含めた5人で会話が始まった。

蓮は軽度の人見知りのおかげで一度話したことのある人に対しても少しためらってしまう。

しかし、5人のうち3人は陽気で社交的な性格のため良い意味で遠慮しない。

残りの1人の紬は蓮よりも人見知りが激しめだ。

昨日はかなり緊張した状態で4人に話しかけた。

もし変に思われたら、と気が気ではなかった。

だか、4人は快く彼女を受け入れてくれたので、今では勇気を振り絞り声をかけて良かったと心から思っている。


「そういや、蓮はなんの部活に入るのか決めてるのか?」


「僕は部活には入らないよ。樹は?」


100年ほど前までは、部活を通じて、生徒は成長できるとか、チームワークや礼儀を学ぶ機会になるとか言って部活への入部を推奨、強制していた学校が多かった。

だが、魔法の普及により、部活よりも魔法に時間をさくようになり、部活への入部は完全に自由になった。

ただそれでもスポーツの需要が衰えた訳では無いため、部活へ入部するものも多い。


「なんだ、入らねーのか。俺は応援団って決めてんだ」


拳を握りしめ目から火が出んばかりの熱気にを放ちながら樹は言った。。


「あたし達はスケート部に」「入る予定だよ」


小桜姉妹は一歩下がり、華麗に一回転し、息よくハイタッチした。


「わ、私は天文学部に入ろうかと思ってます」


と、紬は控えめに言った。

運動部に入部する人はそれほど人数変動はなかったものの、文化部に入部する人はかなり減った。

運動神経が良ければそれだけ魔法に応用できるが、芸術やその部活の知識、技術はあまり魔法に関係ない。

入部する人がいないわけではないが、2100年以前と比べればかなり減った。


「はいーそろそろ座れよー」


「あれ、先生来るの早いね」


まだ授業開始まで五分ほどあったが恵は教室に入ってきた。

それに蓮は疑問を口に出す。


「今日は体力測定をする。高校の体力測定は魔法の使用が許可されているからブレスレットを忘れたものは今言いに来い」


生徒が座るのを見ながら恵は言った。

なお、指輪を忘れたものはいなかった。


「よろしい。じゃあ魔法を使用するうえで最も大切なことは何かわかるか」


その問いに答えるものはいなかった。

実はこの場にいる全員が分かっていたが、それを口にすることはなかった。

魔法を使用するうえで最も大切なものは2つある。

ひとつはイメージだ。

同じ魔法でも一点集中型や広範囲型、短距離型、遠距離型と人によって違う。

そこで役に立つのが詠唱だ。

アニメや漫画の詠唱はその場を盛り上げるために技名を言ったりする。

戦いが無言で効果音だけであれば見ているものは面白くないからだ。

しかし、実際の詠唱にはイメージの定着というちゃんとした意味がある。

考えるだけでは他の雑念が邪魔をし阻害してしまうが、口に出すことでよりイメージは強くなる。

そしてより強力な魔法になる。

2つ目は魔法陣の意味を理解することだ。

どんなに魔法に対する才能があっても、その魔法陣が何を意味するのかを理解していなければ魔法は使えない。

魔法陣の中にある紋様にはそれぞれ意味がある。

主に魔法の発動対象の位置座標、使用する魔力の量、魔法の属性、それらを読み取り魔法を起動させる紋様がある。

細かくすれば他にもあるが、以上の4つの紋様を理解し、イメージ出来れば魔法は使える。


「だがほとんどの者がそれだけでは魔法は使えない。それはなぜか。分かるとできるは違うからだ。頭ではわかっていても体に染みついていない。じゃあどうするか。魔法は言葉だと思え。私たちが普段使っている言葉は人間の体に一番染みついているものだ。」


恵は言って、手元のリモコンを操作し、電子黒板に「あお」と大きく間をあけて表示した。


「ここに「あお」という文字がある。私たちは「あ」の意味は「あ」、「お」の意味は「お」だと理解している。これを日本語の知らない人に見せても何もわからない。しかし、私たちは「あ」と「お」の意味を理解し、その二文字からできる「あお」という言葉を使うことができる。魔法も同じだ。それぞれの紋様の意味を理解し、その紋様からできる魔方陣で魔法を使うことができる。言葉と魔法は同じだ。使うものが違うだけで使い方は全く同じだ。」


長々と魔法についてのノウハウを語った恵だが、実はこの教室にいるほとんどの者は魔法をすでに使うことができる。

ただ1人を除いて。

魔法は早いもので小学校の段階で使うことができる。

また、高校になるまでに使えなくとも、高校の授業でほとんどの者が使えるようになる。

しかし、彼らがいる明春学園は日本のトップクラスの高校だ。

逆に魔法が使えない状態で入学することの方が珍しい。

恵も生徒たちが魔法を使えることは分かっていたが、魔法についての理解は深ければ深いほどいいので、あえて説明した。


「じゃあ早速更衣室に行って着替えてきてくれ。私は先にグラウンドに行っておく」


そう言ってさっさと教室を出た。

更衣室は体育館の隣にあるため生徒は1度校舎をでて、そこに向かう必要がある。

ちなみに運動着は蓮たちが教室に来る前に机の上に置いてあった。

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