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僕は魔法が使えない  作者: 三遅三九
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僕は魔法が使えないー1

私立明春めいしゅん学園。

日本に存在するトップ高校の一つである。2233年4月17日、今日は私立明春学園の入学式当日。


「あー、緊張するなー」


校門の前でこれから自分が過ごす場所を見て、喜びと緊張の混ざった声を出す少年、宮應蓮みやおうれんがいた。

周りには自分と同じ新入生やその親、さらに部活の勧誘をしている上級生がいた。


「君!サッカー部に入らないかい?」


「星に興味があったら私たち天文部に入ってね」


などと、言ってはビラを渡し、言ってはビラを渡しを繰り返している。

この人数が川のように流れている中、上級生は人にぶつからず、綺麗に避けて移動している。

運動部、文化部関係なく、この人混みの中を移動している上級生は全員全く人に当たらずにビラを配っている。

しかもかなり強引に。

蓮はその事に少し感心しつつ、数枚のビラを受け取りながら歩いていた。

入学式の会場の講堂に着くと、受付をするべく入口の前で長蛇の列が並んでいた。

列に並んでいると遠くから声がした。


「おーい。れーん。やっと見つけた」


「もう、もっと早く着く予定だったのに。他の女ばっかり見てるから遅れるのよ」


あとから来たの蓮の父の達雄と母の晴美だ。


「いやーみんなかわいいな。ハハハハ!」


言いながら頬をつねられている達雄。

こんな調子で列に並んでいると自分たちの番がきた。

受付の人は連に手のひらをタブレットの上に置くように促した。

そして、すぐ横にあるパソコンをみて、


「宮應蓮さんですね。お席のほうは1階席のD24になります。保護者の方は2階席で自由席になります」


「はい、わかりました」

蓮がそういうと3人は横にずれた。

少し歩いて達雄が、


「じゃあ連、晴れの舞台だ。頑張って来いよ!」


「いや、ただ座ってるだけだから頑張ることは何もないんだけど。まあ、行ってくるよ」


そういって連たちはそれぞれ1階席と2階席に向かった。

開かれている扉から講堂の中に入ると生徒たちであふれていた。

静かに座っているものもいれば、同じ学校からきたであろう友達と話していたり、勇気をだして近くの生徒に声をかけるものもいた。

蓮の知り合いに明春学園に来た人はいない。つまり、現時点での友達は0だ。

蓮は自分の席を探し、座った。

席は5×5で1つのブロックを作っておりそれが横に5つ、縦に4つ並んでいた。

蓮がいるのは一番右のブロックで、右から2番目、前から4列目の位置だ。

新入生は全部で125人。

かなりの人数がすでに来ていたが、見た感じでだいたい20人ほどが来ていなかった。

後ろの2階席を見ると蓮の両親がいた。

蓮がこっちを見ていることに気が付くと、晴美は微笑みながら小さく手を振り、達雄は持ってきていたカメラで蓮をとった。

そんな両親が少し恥ずかしく思えた蓮は、前を向き、何も見ていない風を装った。

2分ほどたつと、左隣に男子生徒が来た。

彼は席に座ると


「俺は真島樹ましまいつきだ。よろしくな」


「あ、僕は宮應蓮。よ、よろしく」


いきなり声をかけられて戸惑ったが何とか返せた。

内心そんなことを思っていると、樹は物珍しそうに蓮を見ていた。


「な、なに?」


「いや、一人称が僕ってのはなんか珍しいなと思ってな。俺の周りに僕を使うやついなかったからよ」


「まあ、確かに僕の周りにもいなかったね。僕を使うのは僕くらいだったよ」


「へー」


関心があるのかないのかわからない反応をとられて少し戸惑いつつも、「まもなく入学式が挙行いたします。生徒の皆さんは席に座り、お静かにお願いいたします」とアナウンスがあったため場は一気に静かになった。

そこからはただただ退屈な入学式である。

いくらこの日を楽しみにしていたかといえども、明春学園で過ごすことができることが楽しみなのであって、入学式自体が楽しみなわけではない。

校長、理事長、各来賓の言葉。

全てを真剣に聞いている生徒はほとんどいない。

だが、ここは仮にも日本のトップ高校の1つ。

そう感じていても、表に出すほど馬鹿ではない。

見た目だけで言えば真剣そのものだ。

その中でも唯一皆が目を見張っていたのが、新入生総代である。

新入生総代を務めるのは入学試験でトップを勝ち取った生徒だ。

トップクラスの高校のトップがどのような人物なのか、皆注目していた。

とはいえ注目するのはあくまでトップをとった人物であり、言葉なんかはあまり頭に入っていない。


一時間後。

ほとんどの人にとっては退屈な時間がようやく終わった。

閉式の言葉の後にクラス担任の紹介があった。

そして、教室に移動するために左側のブロックから順番に自分らの担任に案内される。


「前の電子黒板に書かれてある座席表を見ながら自分の席に座ってください」


教室に入る前に先生が皆のほうを向き指示を出した。

皆自分の席を確認してから自分の机にむかう。

机には学生証やA4サイズのタブレット、魔法陣の描かれているブレスレットが置いてあった。

2100年代には教科書の完全デジタル化が実現していた。

教科書のみならず、ノートや資料なんかもデジタル化していた。

それにより紙の消費が激減し、森林伐採もそれほど激しいものでは無くなった。

しかし、紙が使われなくなったかと言えばそうではない。

何かの契約の時や試験の時などは改竄や不正防止のため紙を使うことが多い。

また、漫画や小説なんかも電子書籍ではなく実物が欲しいという声もあるため、紙の需要はまだまだある。

魔法陣生成のブレスレット、通称マジックリングは文字通り魔法陣を生成するためのブレスレットである。

魔法陣は陣が成り立っていれば、ペンで紙に書いたものでも構わない。

しかし、戦っている最中に書いている暇なんてもちろんない。

そこで開発されたのがこのブレスレットだ。

光魔法を使い物体にでも空間にでもどこでも好きなところに光の線で魔法陣を作ることが出来る。

生徒が席に着いたことを確認すると、


「講堂での担任紹介でもあったが、改めて。このクラスの担任をすることになった佐藤恵だ。担当教科は数学。魔法に関してはおそらくお前たたよりもできると思うが私には聞かないでくれ」


いきなり割とインパクトのある挨拶をした佐藤先生。

蓮たちは少々あっけにとられていたが構わず続けた。


「自己紹介なんかは放課後に勝手に各自でやってくれ。それと忘れないうちに物の確認をしておく。机の上に学生証とデジタル教科書兼配布書類のタブレット、魔方陣生成の指輪があると思う。無くしたら後々面倒なので無くさないよーに。それじゃあ、解散」


教室に入って1分ほどで佐藤先生は教室を出た。


「あの先生すごいな」


10秒ほどたって樹が言った。


「そうだね。ここの先生が少し変わってるとは聞いていたけど、ここまでとは思わなかったよ」


蓮がそう返すと樹は顔を近づけて小声で、


「そういや自己紹介は各自でやれって言ってたよな」


と言った。


「そうだけど、僕人見知りだから僕から話しかけるのは嫌だよ」


「大丈夫だ。俺が何とかしてやる。やっほ、俺真島樹。で、こっちが宮應蓮だ。よろしくな」


樹は得意げに言ってから蓮の左隣の話している女子2人に声をかけた。

最初の相手が女子っていうのは気が引けると蓮は思ったが、話しかけた後だったためあきらめた。

蓮は女子のほうを見てからペコリとうなずいた。


「あたしは小桜芽衣。こっちは双子の妹の由衣」


「どーりよく似ていたわけだ。出身はどこなんだ?」


「ここ岡山よ。割と近いから学校まで自転車で来てる」


「へーいいな、それ。俺は香川だから駅前の学生寮に住んでる。蓮は?」


「僕は広島だよ。僕も学生寮に住んでるけど駅前じゃなくて校門前にある寮だよ」


そんな感じで4人は軽い会話をした後、途中まで一緒に帰ることになった。

校舎をでても校門までは軽く100mはある。

その途中に入学式が行われた講堂がある。

高校にしてはかなり広い敷地だ。

サッカー場や野球場ももちろんある。

スポーツは魔法が認識された頃、魔法の使用により不正をすることが多発したため一時期衰退していたが、今ではかなりの規制がかかっているため昔と何ら変わることなく楽しめる。

蓮達が校舎から出たところで、4人に声がかかった。


「あ、あの!」


4人が振り返るとそこには少し小柄な女子生徒が立っていた。


「どうしたの?」


由衣が答えると、


「い、一緒について行ってもいいですか?」


一緒に帰りたい、それはつまり友達になってくださいという意味であった。

その事が分からない4人ではないので、快く承諾した。


「もっちろん!」


「一緒にかえろ!」


芽衣と由衣が両サイドから女子生徒、春花紬(はるはなつむぎ)の手を引っ張った。

それから2人はこれはいじってもいいキャラだと判断し、紬を質問攻めにした。

小柄な女子生徒を顔が酷似しているふたり質問攻めにしている光景をみて、蓮と樹は楽しんでいた。

校門をでたところで5人は小桜姉妹と紬、蓮、樹で3方向に分かれた。

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