第九十九話 直江は発見されてみる②
時はあれから数分後。
場所はホテルのロビー。
現在、直江は無事にみんなと合流していた。
こうなった経緯は簡単。
直江はクロとヒナを伴って、ロビーへと直行。
その道中で、スマホを使ってみんなに謝罪の電話。
各自、もうロビーに集まって大丈夫――という旨を話したのだ。
さてさて。
なにはともあれ。
「なおえ~~! あたし、心配したぞ!」
と、ひっついてくるのは柚木だ。
彼女はきゅっとそのまま、直江へと言ってくる。
「あたし、てっきり直江が迷子になってるのかと思ったんだ!」
「心配してくれてありがとう。でも、さすがにホテルの中じゃ迷子にならないよ?」
「そんなことない!」
ふるふると、首を左右に振る柚木。
彼女はそのまま、綾瀬を指さしながら直江へと言ってくる。
「綾瀬がな! 迷子になったんだ――ホテルの中で!」
「ん……え?」
「ここにはあたしが連れてきた!」
「…………」
いったいどういう事なのか。
と、直江はそんな事を考えながら、綾瀬の方をチラリと見る。
すると。
「…………」
と、視線を逸らしながら、腕を組んでいる綾瀬。
瞬間、直江はふと思い至る。
それは――。
「ひょっとして綾瀬。僕を必死に探している間に……」
「ち、違うわよ!」
と、手を振り払う様に否定してくる綾瀬。
彼女は直江の言葉より先に、彼へと言葉を続けてくる。
「わ、わたしが! い、いくら必死だったからって……じ、自分の場所を確認しないで、歩き回るわけがないわ!」
「ま、まぁ……僕のためだったんだから……うん、ありがとう」
「直江、よく聞きなさい! 将来、わたしはあんたの世話をすることになるの……そんな人間が、迷子になんてなると思う!?」
「でも、綾瀬はなってたぞ!」
と、会話に乱入してくる柚木。
彼女は直江から離れると、右に左にゆらゆら。
そのまま、綾瀬へと言葉を続ける。
「直江から電話があった後な、言ってきたんだ綾瀬が――『大変よ。ここがどこかわからないわ……助けないさい』って!」
「っ! い、言ってないわ!」
「言った! あたしは嘘はつかないんだ!」
「嘘はつかない!? あんた、直江の前でずっと猫被ってたじゃない! それはなんなのよ!?」
「あれは嘘じゃない! 直江に対する愛だ!」
わーわー。
きゃーきゃー。
と、騒ぎ始める柚木と綾瀬。
なんでもいいけど、周りの人が見ていて恥ずかしい。
などと、そんな事を考えていたその時。
くいくい。
くいくいくい。
と、裾を引っ張られる感覚。
見れば、そこに居たのはクロとヒナだ。
二人は直江へと、順に言ってくる。
「それで直江さん、これからどうします?」
「もうすぐ昼すぎ……早くしないと、一日潰れる」
「うーん、たしかにそうだね。どっか行きたいところある?」
「そうですね……」
と、考え込む様子を見せるクロ。
一方のヒナはというと――。
ごそごそごそ。
と、どこからパンフレットを取り出し、それを直江へと翳してくる。
そして、彼女はそのまま言ってくるのだった。
「ヒナ……射的したい、ここで」
さて……いつも言ってることなのですが
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