第九十話 真夜中の脅威
さてさて。
時はあれから数時間後――深夜。
綾瀬さんはなんだかんだ疲れたのか。
ぐっすり直江の隣の敷布団で眠っている。
ヒナさんはトイレに籠ってナニしてたのか、ぐったりモード。
ベッドでクロと一緒に眠っている。
クロは平常運転、普通に眠っている。
ベッドでヒナを抱き枕にしているが。
「…………」
無論、直江も敷布団で横になっている。
綾瀬と柚木に挟まれる形で――。
ドゴッ!
と、聞こえてくる音。
同時、襲い来る振動。
そして。
ぶわっ。
直江の額からにじみ出る汗。
簡潔に言おう――今、直江は死にかけた。
その理由は簡単。
「……っ」
直江はチラリと視線を、少し横へと向ける。
するとそこにあったのは。
「くかぁ~~~~……むにゃ」
そんな柚木さんの拳だ。
おわかりだろうか?
怪力柚木さん。
寝ぼけて直江の顔の横に、全力裏拳かましてきたのだ。
当たってたら死んでた。
(バカだったバカだったバカだった! どうして、僕は柚木の隣で眠っているんだ!? あほか!? 思い出せ、思い出すんだ!)
あれは直江が小学生だった時。
柚木の家でお泊り会した時――。
死んだ。
寝相がクソ悪い柚木は、生物兵器同然なのだ。
こんな事を忘れていたとは、本当に油断して――。
ドゴォ!
思考を断ち切るように、直江の股間のやや下。
そこへと落とされる柚木の足。
「ひぃっ!」
あやうく、息子とばいばいするところだった。
こうなれば仕方がない。
「ゆ、柚木! 起きて……起きないと大変だ!」
ゆさゆさ。
ゆさゆさゆさ。
「ねぇ、ちょっと! 柚木さん!? 柚木さんってば!」
「ん、むにゃ……?」
と、薄目を開けてくる柚木。
直江はそんな彼女へと言う。
「柚木、ごめん! こういうのは申し訳ないんだけど、このままだと僕は死ぬ! だから、もうちょっと離れて寝てくれないかな!?」
「…………」
「……柚木?」
「…………」
「えっと……柚木、さ――っ!?」
直江。
突如、柚木に抱き寄せられた。
念のため言っておこう。
女の子に寝ぼけて抱きしめられた!
きゃっ。
なーんて。
そんな甘い展開では断じてない。
なぜならば。
「あ――っ、ぐぎゃぁあああああああああああああああああああああああああっ!」
直江、思わずやられ役みたいな声をだしてしまう。
その理由は簡単だ。
「あ、ちょ――柚木! 柚木さん!? そんなに抱きしめられたら痛いって! 死ぬ、本当に死ぬって!」
「むにゃ……なおえぇ」
と、幸せそうな柚木さん。
直江はそれを聞くと同時、意識を失うのだった。
さて……いつも言ってることなのですが
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