第八十二話 狂愛の逃避行②
かちゃかちゃ。
かちゃかちゃかちゃ。
「綾瀬さん……綾瀬さんや」
「それ嫌! 綾瀬って呼んで!」
いやんいやん。
と、そんな様子で言ってくる綾瀬。
直江はそんな彼女へと言う。
「綾瀬」
「なーに――直江?」
「うん。どうして綾瀬は、僕に首輪とリードを付けているのかな?」
「?」
「うん、どうして綾瀬は――そこで『え、おかしなことしている?』みたいな顔、するのかな?」
「♪」
と、楽しそうな笑みを浮かべてくる綾瀬。
そこで彼女、ようやく首輪とリードをつけ終わったに違いない。
綾瀬はようやく、直江の拘束を解いてくれる。
これで椅子ともお別れだ。
「で、なんで綾瀬は僕に首輪とリードを付けたの?」
「決まっているわ。直江がわたしのモノだっていう証明――こうしていれば、他の女は直江によって来ないでしょう?」
と、言ってくる綾瀬。
彼女はそのまま、直江へと言葉を続けてくる。
「それにほら。これなら直江、わたしから離れられないでしょう?」
「い、いやだなぁ。こんな事しなくても、逃げないに決まってるよ!」
「違うわ。直江が逃げないのは、あたりまえ――だって、わたし達は相思相愛でしょ?」
「…………」
時々、綾瀬が見せるこの瞳。
ドスグロイ深淵の様な闇が、ものすごく怖い。
などなど、考えている間にも。
「直江はわたしが居ないとダメだから。直江はわたしから離れると、すぐに危ないことになるわ。だからこうして、首輪とリードをつけるの」
と、言ってくる綾瀬さん。
彼女は貼りつけたような笑顔で、直江へと言葉を続けてくる。
「だから、これは逃がさないためじゃないわ。直江をわたしの傍に居させるために、仕方なくつけているの」
「…………」
で、それってさ。
逃がさないためと、何が違うんだい?
とは当然聞けず。
「綾瀬、優しいんだね。僕、とっても感動したよ! ありがとう!!」
「わかってくれるのね――嬉しい。やっぱり、わたしとあんたの相性は、言うまでもなく最高ね!」
ぱぁっと輝く綾瀬の瞳。
きっと、少しは精神状態もまともになって――。
「それじゃあ、そろそろ街に出ましょう! 首輪とリード――他の人に見られるかもだけど、気にしないで。それがないと、他の女が寄ってくるかもだから」
と、そんな事を言ってくる綾瀬さん。
彼女、全然まともじゃなかった。
さて……いつも言ってることなのですが
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