表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/129

第六十八話 直江はヒナに迎えにきてもらってみる

 時は放課後。

 場所は狐耳ヶ浜学園高等部――正門広場。。


(ヒナの奴、学校が終わったら高等部の門前に、迎えに来てくれるって言ってたけど)


 正直、かなり心配だ。

 知っての通り、ヒナは圧倒的に人見知りだ。


 普段、ヒナは中等部の授業が終わり次第。

 何かの用がない限り、速攻で帰宅している。

 それも、なるべく人通りがないルートでだ。


(中等部も裏門から出て、学園も裏門から出て……本当に徹底しているもんね)


 それが今日はヒナさん。

 高等部の正門という、人通りが滅茶苦茶多い場所。

 そこで待っているというのだ。


 故に心配なのだ。

 

 さてさて。

 ではどうして、ヒナが正門で待っているのかだが。

 実は今朝、ヒナからこんな事を言われたのだ。


『お兄……ヒナ、お兄と本屋さんに行きたい』


 ようするにだ。

 帰宅してから本屋に行くと、帰るのが遅くなってしまう。

 そのため、学校から直接行くという話になったのだが。


(待ち合わせするにしても、もう少し人通りが少ないところですればいいのに)


 無論、直江はそれを提案した。

 しかし、ヒナは間髪入れずに言ってきたのだ。


『お兄に手間はかけさせられない……ヒナ、頑張れるから大丈夫』


 ……心配だ。

 などなど、直江がそんな事を考えたその時。


 ざわざわ。

 ざわざわざわ。


 と、周囲がなにやら騒がしい。

 何事かと耳を傾けてみると。


「マジマジ! 正門に滅茶苦茶かわいい女の子が来てるんだって!」


「中等部の制服着てるけど、うちの学園にあんな子いた?」


「きゃ~~~~~! お人形さんみたい!」


「あれ、芸能人? レベル高すぎじゃね?」


 聞こえてくるのはそんな声。

 なんだか、とんでもなく嫌な予感がする。


 直江はそんな事を考えた後、小走りで正門へと向かう。

 すると見えて来たのは。


「……うぅ」


 と、恥ずかしいに違いない。

 もじもじと、うつむいているヒナの姿だ。

 当然、その周囲には男女問わず高等部の生徒たち。


(性格はともかく、ヒナは外見いいからな……)


 正直、直江がヒナと初めて出会った時も。

 人形みたいでかわいい子だな……と、そんな事を思った記憶がある。


 普段、ヒナは中等部での話を、滅多にしてこない。

 けれど、この様子を見ていると。


(ヒナの隠れファンとか居そうだよね。なんだか兄としては複雑だな……嬉しいような、誇らしいような……はたまた、ちょっとムッとするような)


 いずれにしろ、ヒナをこのまま放置しておくわけにはいかない。

 直江はヒナの方へと近づいていき。


「お待たせ、ヒナ」


「あ……お、お兄」


 と、直江の手を握って来るヒナ。

 直江はそんな彼女の手を握り返し、正門を出るのだが。


「え、あれ直江だよな?」


「おい……嘘だろ? あいつ、草食そうな癖して肉食やろうかよ」


「あいつ、柚木とも仲いいよな?」


「クソ! ハーレム作りやがって! 羨ましい奴だぜ!」


「あの裏切り野郎が! 俺は絶対にあいつを許さねぇ!」


 などなど。

 聞こえてくる男子生徒達の声。

 直江はそれを聞いて、思うのだった。


(あとでクラスメイトに説明しておかないとな。じゃないと僕、刺されそうだよね)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ