第六十六話 直江と綾瀬のホラーゲーム②
「あのさ、怖いなら無理してやらなくてもいいんじゃないかな?」
「…………」
と、綾瀬さん。
何の反応も見せない彼女は、そのまましばらく沈黙。
その後、ハッと気がついたかのように、直江へと言ってくる。
「な、直江! 違うわ! わ、わたしはそういうのじゃないの!」
「そういうのって、どういうことですか?」
「わたしはクールでミステリアスな先輩なの! いくら人生初だからって、こんなホラーゲームで怖がったりしない!」
「いや……あの――」
「さ、さぁ直江! 早くプレイを続けましょう! 怖かったら、いつでもわたしに抱き着いて来てもいいのよ?」
と、不屈の闘志。
そんな様子でプレイを続行する綾瀬。
正直、そろそろ心配になってきた。
(綾瀬、確実に怖がってるよね……まぁ、綾瀬が言うんだから、とりあえずプレイは継続するけどさ)
その後、直江と綾瀬はホラーゲームを進めた。
けれど。
一連の出来事で、直江は画面より綾瀬が気になってしまった。
よって、彼はチラチラ綾瀬の方を見ていたのだが。
(ゾンビやモンスターが出る度に、ものすごい勢いでビクンってしてる……声は我慢してるみたいだけど)
この調子で、本当にゲームを進められるのか。
そんな事を考えている間にも、ゲームはステージの後半。
見るからにボス戦といった様子の部屋へと突入。
流れる不穏なムービー。
流れる不穏なBGM。
主人公二人が、背中合わせに周囲を警戒した。
まさにその時。
これまでのゾンビより大きく。
これまでのゾンビよりグロテスクな――。
「きゃぁあああああああああああああああ~~~~~~~~~~っ!」
と、聞こえてくる綾瀬の声。
同時、直江へと抱き着いて来る彼女。
直江はそんな綾瀬へと言う。
「ちょ――大丈夫!?」
「な、直江……! わ、わた、わたた、わたっ!」
「あーもう、わかったから! とりあえず少し落ち着いてって!」
「う、うぅ……ひっくっ」
と、直江の腕の中でぷるぷる震えている綾瀬さん。
というか、これ……泣いている気がする。
(まさか綾瀬、こんなにホラーゲーム苦手なんて)
そういえばさっき、ホラーゲーム初めてとか。
そんな事を言っていた気がする。
(まぁ初めてなら、この反応も仕方ないのかな……それにしても)
綾瀬の計画では、直江がビビッて彼女に抱き着く。
というものだったが。
(構図は逆になってるけど、結局綾瀬の思惑通りになっちゃったな)
直江は綾瀬をなでなで。
一人、そんな事を考えるのだった。
さて……いつも言ってることなのですが
面白かったら、この部分より更に下(広告の下あたり)から、マックス10ポイントまでの評価や感想できますので、してくれると参考になります。
また、続きを読みたいと思ったら、ブクマしてくれると励みになります。
ブクマとポイントはどちらも、作者が連載する活力になっています。
冗談抜きで、執筆するモチベーションに関わって来るレベルです。
すでにしてくれた方、本当にありがとうございます。