第六十四話 直江は虎穴に入ってみる③
「ゲームをしましょう」
と、言ってくるのは綾瀬だ。
彼女はコントローラーを手に取ると、ささっとゲーム機とテレビを立ち上げ。
その後、直江へと言葉を続けてくる。
「この前、二人プレイが出来るホラーゲームを買ったの。もちろん、直江と一緒にやるためよ」
「綾瀬って、ホラーゲームもやるんだね。FPS以外のゲームは、みんなと遊ぶ時しかやらないと思ってたよ」
「安心なさい。対戦ゲームだけがFPSじゃないわ。そもそも、一人称視点で射撃するゲームをFPSと――」
「要するに、一人称視点のホラーゲームなんですね」
「そういうこと、さすが直江」
と、直江にコントローラーを渡してくる綾瀬。
直江はそれを手に取った後、彼女へと言う。
「それで、どういう感じのホラーゲームなの? FPS好きな綾瀬が買ったってことは、逃げる系のではないんでしょ?」
「直江、本当にわたしの事をわかっているわね」
「ちょっ、あんまりくっつくとさ――」
色々当たっている。
しかもこの綾瀬の目。
まるで獲物を狙う肉食獣の様な目だ。
恐ろしい。
などなど。
直江がそんな事を考えている間にも。
「ゾンビを撃ち殺すホラーゲームよ」
と、言ってくる綾瀬。
彼女はそのまま、直江の目を見つめながら言ってくる。
「シューティング要素はもちろん、ホラー要素もすごいと評判のゲームなの」
「今更なんですけど……僕、あんまり怖いの苦手ですよ」
「知ってるわ。だからこそ、今日はホラーゲームを一緒にやるんだもの」
「え」
「直江、怖かったらいいのよ――わたしに抱き着いて来ても」
なるほど。
ただ二人でゲームなど。
そんなのおかしいと、ずっと思っていたのだ。
要するに綾瀬さん。
自分から手を出すのは控えたから、直江から手を出させようと。
そういう作戦に切り替えたわけだ。
(でもさ……ホラーゲーム怖くて、抱き着いて来る人なんていないでしょ)
マンガじゃないんだから。
直江はそんな事を考えたのち、綾瀬とのゲームプレイを始めるのだった。
本日の昼事から
新作『魔王と一緒に盗賊はじめました~救った人達に裏切られた勇者、スキル物質化スキルを使って復讐してみる~』を連載開始します。
よかったら、読んでくれると嬉しいです。