第五十八話 ここから先は修羅の道③
ピンポーン。
と、再びなるインターホン。
直江は玄関の扉へと手をかけ――。
「はいはい、今でますね」
言って、扉を開く。
すると、そこに居たのは――。
「あ、えと……こ、こんにちは、だ!」
何故か頬を赤らめている柚木だ。
彼女はもじもじとした様子で、直江へと言葉を続けてくる。
「突然きてごめん! もし迷惑だったらアレなんだけど、今日って暇だったりするか?」
「全然迷惑じゃないよ。近所に住んでるんだから、むしろ、柚木の顔を見た方が安心できるくらいだよ」
「ほ、本当か!? そう言ってくれると、あたしも嬉しい!」
「だけどごめん」
と、直江が言った瞬間。
さっと、寂しそうな表情に切り替わる柚木。
きっと、直江が暇ではないと、悟ったに違いない。
だがしかし。
「あ、勘違いしないで」
「え……じ、じゃあ遊べるのか!?」
と、再びパッと笑顔になる柚木。
直江はそんな彼女へと言葉を続ける。
「うん。でも、出かけたりはできないんだけど。それでも大丈夫かな?」
「それって、直江の家でなら遊べるってことだよな!?」
「そういうこと」
「わーい! あたし、直江の家で遊ぶの大好きだ! 特に直江の部屋、自分の部屋より落ち着く!」
と、尻尾でも振りそうな勢いの柚木。
しかし、直江はここでふと思う。
(一応、先客が居るってことは、伝えておいた方がいいかな)
きっと、柚木は家に居るのはヒナだけだと思っているに違いない。
にもかかわらず、綾瀬とクロが居たらどうなるか。
容易に想像できる。
それすなわち。
以前、部室で起きた出来事の再来だ。
(まぁ、言っても言わなくても変わらない可能性あるけど)
大事なのは心構えだ。
と、直江はそんな事を考えたのち、柚木へと言う。
「あのさ柚木、ただ今日は僕の家に客人が居るんだ」
「お客さん? あたしが知ってる人か?」
「うん。そもそも今日はクロと遊ぶ約束をしていてさ――後から、綾瀬も合流したって感じ」
「………………そっか!」
と、弾ける笑顔の柚木。
しかし。
(今の間……怖すぎる)
直江はそんな事を考えたのち。
柚木を家へと上げるのだった。