第五十三話 直江兄妹と魔王とお化け
時はあれから数分後。
場所は――。
「ここ、僕の部屋だけど……お化けが出たのって、僕の部屋なの?」
「~~~~~~!」
と、必死にこくこくしているヒナ。
直江はそんな彼女へと言う。
「えっとさ、一つ聞きたいんだけど。ヒナ、僕の部屋で何してたの?」
「うっ……そ、それは……そ、掃除してた!」
「あ、そうなんだ! ありがとう、ヒナ!」
と、直江はヒナをなでなでする。
だがしかし。
絶対嘘だ。
これは直江の予想だが。
大方ヒナさん、直江のベッドにくるまってイタしていたに決まっている。
だっていつも彼女はそうだもの。
(まぁ、あえてつっこむ事はしないけどさ)
触れない方が良い話題というのもある。
それに今は、ヒナが見たお化けとやらだ。
「で、お化けはどこで見たの?」
「見たんじゃない……」
と、首をふりふりヒナ。
彼女はクローゼットを指さしながら、直江へと言葉を続けてくる。
「あ、あそこから……笑い声、女の笑い声が聞こえた!」
「え、お化けって、そんなにハッキリしたやつなの!?」
直江、てっきり影が見えたとか、そういう次元だと思っていた。
これはGどころか、不審者説もあり得るのではないか。
そして、さすがのクロもそれを悟ったに違いない。
「な、直江さん……警察に電話した方がいいんじゃ」
と、言ってくるクロ。
直江はそんな彼女へと言う。
「うん。でも、とりあえず確認だけしてみよう。二人はいつでも逃げられるように、玄関で待機していて欲しいだけど」
「な、直江さんはどうするんですか!?」
「僕も怖いからね、無茶はしないよ――それにいざ逃げるとなってもさ。二人を守りながらより、一人で逃げた方が集中して逃げられる。だから先に行っていて欲しいんだ」
「っ――主を先に逃がすということですか……よかろう、その決意! シカト受け取った! さぁ、行きますよヒナさん!」
「や! ヒナはお兄と一緒に――あっ!」
と、クロに連れて行かれるヒナ。
なんにせよ、これでこの場に残ったのは直江。
そして。
(クローゼットの中に居る誰かだけだ……)
直江はそんな事を考えた後、クローゼットへと一歩近づく。
そして。
「……っ!」
勢いよく。
クローゼットを開くのだった。