第五十二話 魔王様の休日④
「ヒナさんが冒険者に襲われているのです! 魔王は配下を決して見捨てません……さぁ、彼女を助けに行こうではないか!」
と、言ってくるのはクロだ。
確実にそれはないと断言できる。
しかし。
(ゴキブリとかだったらアレだな……早めに行かないと、潜伏されちゃうし)
そうなれば地獄だ。
直江一家は日々、潜むゴキブリに怯えて生活しなければならない。
直江はそんな事を考えた後。
クロを伴って、廊下へと出る。
その直後。
ガシッ!
タイミングバッチシ。
直江の腰へと、ヒナが抱き着いてきたのだ。
彼はそんな彼女へと言う。
「ヒナ、どうしたの!? 奴が出たの!?」
「へ、部屋! 二階の……部屋! お、お化け! お化け……っ!」
「お化け? それってどういう――」
「お化け!」
と、会話に混ざって来るのはクロだ。
彼女は楽しそうに、瞳をキラキラ輝かせ、直江へと言葉を続けてくる。
「クククッ! 我、全て理解!」
「えーと、どういうこと?」
「お化け……すなわちゴースト! 我のカリスマに惹かれ、魔物達が集まってきたのだ! クハハハハハっ!」
「…………」
「さぁ、右腕よ! 我が配下を増やすべく、左腕――ヒナの部屋へと向かおうではないか!」
などと言って、ずんずん二階へと向かっていくクロ。
とりあえず、直江はヒナを伴って、彼女のあとについて行くのだった。
というか。
(ヒナ、左腕なんだ……)