表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/129

第五十一話 魔王様の休日③

「ジトー……」


 と、クロを見つめているのはヒナだ。

 一方のクロはというと――。


「…………」


 カァ~ッ。

 と、そんな様子で完全フリーズしてしまっている。


(しまった……今日はヒナが家に居る事、クロに言ってなかった気がする)


 などなど。

 直江がそんな事を考えたその時。


「リアル中二病……乙」


 言って、ささっと再びどこかへ行ってしまうヒナ。

 きっと、また部屋に戻ったに違いない。


 となれば、残す問題は一つ。

 それはすなわち――。


「う、うぅうう~~~~~~~~っ!」


 と、ぷるぷる震えているクロのフォローだ。

 彼女はトテトテ直江の方へ寄ってくると、へたりとソファーに座る。

 そして、彼女は彼へと再び言葉を続けてくる。


「直江さん……また見られました」


「う、うん」


「ヒナさんに見られたのは、これで二回目です……もう、終りかもしれません」


「だ、大丈夫! 大丈夫だよ!」


 ぶっちゃけ、何が大丈夫かはわからない。

 直江がそんな気持ちで言ったのが悪かったに違いない。


「全然大丈夫じゃないですよ! そもそも、ヒナさんが居るなら居るって、最初からそう言ってくださいよ!」


「それはごめんって! でもほら、クロもさっき言った通り――ヒナに見られるのは二回目だし、もう慣れてきたんじゃない?」


「慣れる訳ないですよ! 直江さんはパンツ丸出しで登校するの、慣れたりしますか!? 慣れませんよね!?」


「いや、まぁそれは慣れないけど」


 クロが自らの魔王モードを見られること。

 それは、彼女の中ではパンツ見られることと、同義なのだろうか。

 だとしたら、直江は普段クロのパンツを見ているということ――。


「直江さん……今、不埒なことを考えていますね」


 と、直江の思考を断ち切るように、聞こえてくるのはクロの声。

 彼女はジトッとした様子で、直江へと言葉を続けてくる。


「いいですか、直江さん。今のはあくまで例えです……私の中で、魔王とは魂そのもの! つまり、身体の中でもっとも大事なところです!」


「え、えっと……ようするにどういうこと、かな?」


「要するに、直江さんは自分のもっとも大切なものを、容易に人に晒して歩け回れますか? と、そういうことですよ!」


 なるほど。

パンツの例えで混乱したが、これなら少しわかる。

 けれど、直江はここでふと思う。


(クロはそんなに大切なものを、僕の前で普通に晒してくれる)


 きっと、直江の想像以上に、クロは直江の事を信頼してくれているに違いない。

 などと考えていると。


「お、おほん! とにかく、仕切り直して行きましょう!」


 と、言ってくるのはクロだ。

 彼女はソファーから立ち上がり、ポーズをとって直江へと続けて言ってくる。


「この家の防御力を上げる方法ですが、何かいい案はありますか?」


「って言われても……うーん、防犯カメラつけるとか?」


「ちっがいますよ! 直江さんは何回言えばわかるんですか! カメラでどうやって、冒険者の侵攻を食い止めるんですか!」


 バンバン。

 バンバンバン。


 と、足を鳴らすクロ。

 この後輩魔王様、なんだか小動物に見えてきた。

 ほほえまぁ……というやつだ。


「むぅ! なんですかその顔は! 直江さん、私をバカにしていますね!」


 と、言ってくるクロ。

 彼女はズビシっと直江を指さし、言葉を続けてくる。


「我が名はクロ! 世界に災いをもたらす魔王である! 我が右腕とはいえ、その態度……到底許すことが――」


「はいはい、わかったわかった」


「あっ、ちょ――や、やめてください! 頭を撫でないで……っ、これは、これは反則です! え、えぇい! 魔王の頭に触れるなぁああ~~~!」


 わしゃわしゃ。

 自らの頭の上で手を振り始めるクロ。

 きっと防御しているつもりに違いないが、まるで意味をなしていない。


 いよいよ、本当に小動物に見えてきた。

 と、そんなことを考えた……その時。


「お、お兄ぃいいい~~~~~~~~~~~~~っ!」


 ドタドタドタドタ。

 バタバタバタバタ。


 聞こえてくるヒナの声。

 そして、尋常でない物音。

 これはいったい何事――。


「ついに来ましたか……行きますよ、直江さん!」


 と、なにやらノリノリのクロ。

 彼女は直江へと手を差し出しながら、言葉を続けてくるのだった。


「ヒナさんが冒険者に襲われているのです! 魔王は配下を決して見捨てません……さぁ、彼女を助けに行こうではないか!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ