第四十九話 魔王様の休日
ピンポーン。
ピンポーン、ピンポーン。
時刻は昼少し前。
鳴りまくっているのは、インターホンだ。
「お兄……ヒナが出る?」
と、聞こえてくるのはヒナの声。
直江はそんな彼女へと言う。
「いや、僕が出るよ。多分、僕のお客さんだから」
「お兄のお客さん?」
「ほら、昨日言ったでしょ? 今日は――」
「クロが来る!」
と、不機嫌そうな顔をしながらも、どこかソワソワした様子のヒナ。
なんだかんだで、嬉しいに違いない。
(っと、あんまり待たせるのも失礼だよね)
直江はそんな事を考えた後、玄関の方へと歩いて行く。
なお、ヒナはさっさと二階に上がっていってしまった。
きっと、恥ずかしいに違いない。
ピンポーン。
と、再び聞こえてくるインターホン。
直江はそれとほぼ同時、玄関の扉をあける。
するとそこに居たのは――。
「あ、直江さん! 心配しましたよ、てっきり私との約束を忘れて留守なのかと」
そんな事を言ってくるクロだ。
直江はそんな彼女を家の中に招き入れながら、彼女へと言う。
「ちゃんとスマホのカレンダーにも予定入れてあるし、そんなにボケてないよ」
「そうですかね? 直江さんは少し、天然なところがあるから心配です……お邪魔します」
「はい、いらっしゃい」
ぬぎぬぎ。
とてとて。
と、ついに直江家へ上がって来るクロ。
彼女は瞳を露骨にキラキラとさせ、直江へと言ってくる。
「こ、ここが直江さんの家! な、なんでしょう……ゾワってします!」
「え……寒気!?」
「違いますよ! 感動から来るゾワですよ! 実は私……その、男性の家に上がるのは初めてで……し、しかも好意を持った相手となれば……え、えぇい! もうこの話は終わりです!」
ズビシ!
と、お決まりのポーズを取って来るクロ。
彼女はそのまま、直江へと言ってくるのだった。
「さぁ! 我が右腕よ! 我を玉座へと案内するがいい!」