第四十六話 無双してみた?②
時はあれから数分後。
場所は雑貨屋。
「うーん、これでいいかな?」
「どうだろうな~。たしかにサメのぬいぐるみは人気だけど……」
と、直江が手に持つそれを見てくるのは柚木だ。
彼女はそのまま彼へと、言葉を続けてくる。
「そもそも、ヒナってぬいぐるみ好きだっけ? 付き合い長いけど、そういう性格じゃなかったように思うけど」
「え、柚木と遊んでるときのヒナって、そんな感じなの?」
「どういうことだ?」
「いやなんか、僕と二人の時は『お兄、これ欲しい』って、カワイイぬいぐるみばっかり渡してくるから」
「あぁ……」
と、なんだか悟った様子の柚木。
そんな柚木は、直江の手からサメを奪取。
それをぎゅっと抱きしめながら、彼へと言葉を続けてくる。
「直江~! あたしもこれ欲しい! あたし、サメが大好きなんだ! 直江が買ってくれたらあたし、とっても大事にするぞ? このサメのこと、直江だと思って……(きゅるん)」
「……柚木、サメ欲しいの? 別にいいけど」
「ち、違う! そういうことじゃねぇよ!」
何故かカァーっと頬を染める柚木。
彼女はサメを抱きしめたまま、直江へと言葉を続けてくる。
「つまり、ヒナがしてるのは、今あたしがした様なことだろってこと!」
「どういうこと? 柚木が今したことって……普段より可愛く見えたけど、それがいったい――」
「あ、あたし……か、可愛く見えたか?」
「え、うん」
「な、何だよ~! 照れるじゃないかよ~!」
くねくね。
柚木がさっき言った事は意味不明だ。
しかし、彼女がとりあえず嬉しそうなのは理解できた。
もしも、それがこのサメに由来するところがあるのなら。
と、直江はそんな事を考えつつ、柚木へと言う。
「そのサメ、よかったら買ってあげようか?」
「べ、別にいらねぇよ! あ、あたしはその……ほら! 直江と買い物してるだけで、充分だからな! それに、これはヒナに買うんだろ?」
「いや。ヒナが普段そんなにぬいぐるみ好きそうじゃないっていうなら、あいつが絶対に好きなお菓子類を買う事にするよ。だからどうかな、柚木?」
「…………」
なにやらポケーっとしている柚木。
しばらくした後、彼女はコクリと頷くのだった。