第三十七話 深夜の訪問者②
綾瀬襲来。
時はそれから数分後。
現在、直江は部屋の電気を付けた後。
リビングから、静かに飲み物を持って帰ってきたところだ。
一方の綾瀬はというと。
ソワソワ。
ソワソワソワ。
見るからに楽しい!
と言った様子で、テーブルの前へと座っている。
別に直江の部屋に、パッと見見られて困る物はない。
しかし、期待した目であまり見回すのは、やめてほしい。
(万が一、綾瀬に僕の弱みとか見つけられた終わる……まぁ、多分そんなのないけど)
とりあえず。
と、直江は綾瀬に飲み物だす。
そして、テーブルを挟んで、彼女と向き合って座る。
すると――。
「あら、ありがとう――ホットミルクなんて。さすが直江、わたしの好みがわかってるのね」
言ってくるのは綾瀬だ。
直江はそんな彼女へと言う。
「そりゃわかりますよ。なんだかんだで、付き合い長いですからね」
「わたしとしては、直江へともっと深い付き合いがしたいわ」
「…………」
「ねぇ、どう? 直江……わたしのものにならない? わたしがずっと、指先一つまで何もかも、丁寧に管理してあげるわよ?」
言って、顔を近づけてくる綾瀬。
直江はそんな彼女の肩に手をやり――。
プッシュ。
無事に綾瀬を定位置に押し返すことに成功する。
そして、直江は間髪入れず、綾瀬へと言う。
「っていうか、綾瀬はどうして僕の部屋にいるんですか?」
「どうして? 直江の部屋だからよ」
「……聞き方が悪かったです、すみません。えーっと、綾瀬は僕の部屋に何しにきたんですか? っていうか、どうやって家に入ったんですか?」
当然だが、直江の家には鍵がかかっている。
ヒナ、直江、母――最後に父の四重チェックが直江家の掟。
故にそれは間違いない。
などと、直江が考えている間にも。
綾瀬は直江へ、言ってくる。
「鍵は普通に、合鍵を使ったわ」
「その当然みたいな顔やめてくださいね……なんで綾瀬が、僕の家の合鍵持ってるんですか?」
「作ったわ、大分前に。あんたの鞄から鍵を抜き出して、合鍵作って――それで、あんたに気がつかれないうちに、戻しておいたの」
「それ、犯罪なんじゃ」
「直江のためよ?」
綾瀬さん真顔。
怖い。
まぁいい。
本当はよくないけど、もういい。
常識が通じない人に、常識の話をしてもまるで意味がない。
直江はここ数日を通して、そのことをバッチリ学んだのだ。
と、彼はそんな事を考えた後、綾瀬へと言う。
「それで、もう一つの答を聞きたいんですけど」
「……チラ」
と、何故か本棚の方を見る綾瀬。
彼女はその後、直江へと言ってくるのだった。
「なんでもないわ! ただその……直江の寝顔を写真に収めにきただけ!」