第三十五話 まおいもエンゲージ③
ぎゅ。
がしっ。
「むぅ~~~~~!」
と、ジトッとした様子の視線を、クロへと向けているのはヒナだ。
一方、当のクロは直江へと言ってくる。
「ひょっとして私、ヒナさんに嫌われてしまいましたか?」
「いや、そんなことないと思うよ。ヒナが僕と柚木以外とこんなに喋るの、初めて見たし――それに、ヒナは嫌いな相手には全然反応しないしね」
「それは安心しました! 将来のいも――直江さんの妹に嫌われては、一大事ですからね!」
「…………」
先ほどから気になっていたのだが。
将来のいも――とはなんだ。
いも
いも……芋?
(まさかクロ……僕の妹を将来、焼き芋みたいに食べるきじゃないよね)
なんて、綾瀬ならまだしも、クロがそんなことするわけがない。
クロはただ単に、魔王様なだけなのだから。
と、直江はここで大事なことを思い出す。
それは。
「あ、ごめんクロ! 写真撮影が途中だった!」
「あぁ、そうですね。でも、大丈夫です! 今日はもう満足しました! それに――」
と、直江の横へ――厳密にはヒナの方へ視線を送って来るクロ。
彼女はその後、再び直江へと言ってくる。
「新しい友達も増えました!」
「そう言ってくれると、助かるよ。ヒナは友達少ない……っていうか、ほぼゼロだから」
「と、友達なんて……いらない。お兄がいれば、ヒナはいい」
と、ぷくぅっとした様子のヒナ。
今日のヒナは本当によく喋る。
余程、クロと波長があったに違いない。
(まぁ、波長あい過ぎて変態に中二病が同時発症したら……なんて心配にも思うけど、せっかくだし、ヒナのためにもうひと押ししてあげるか)
と、そんな事を考えた後。
直江はクロへと言う。
「あのさ。よかった今度、僕の家に遊びに来ない?」
「なっ!? な、直江さんの家にですか!?」
「えっと……そ、そんなに嫌だった?」
「と、とんでもない! 行きますよ! 行きますとも! 直江さんからのお誘い……受けない訳があるだろうか! いやない!」
スビシ。
っと、無駄にかっこいいポーズのクロ。
直江はそんな彼女へと、言葉を続ける。
「それでよかったら、ヒナとも遊んでほしいんだけど」
「ヒナさんとですか? いいですよ! 私もヒナさんとは、もっと仲良くしておきたいので!」
「やっ! ヒナはやっ!」
と、ジタバタしているヒナ。
きっと、照れ隠しに違いない。
そんな彼女はクロを指さしながら、直江へと言ってくる。
「お兄! これ以上、敵を連れ込んじゃダメ! 柚木だけでも危ないのに……クロも呼んだら本当に危険!」
「危険って……何が?」
「うぅ~~~~~~~~~! お兄は鈍感! だから、だからヒナの気持ちにも――っ」
「…………」
いや、わかっていますとも、ヒナさん。
ヒナさんの気持ちには、気がついていますよ。
気がついているからこそ、気がついていないふりしているんですよ。
(でも、どうしてクロを家に呼ぶのが、ヒナにとって危険なんだろ?)
謎だ。
でも、ヒナが同じく危険だと言っていた柚木。
ヒナは彼女と、幼い頃から何度も遊んでいる――かなりの仲良しだ。
(やっぱり、照れ隠しなんだろうな。クロとも、柚木みたいに仲良くなれればいいけど)
などなど。
直江が考えている間にも。
「ほらほら、お姉ちゃんですよ~! ヒナさんは何が好きなんですか? 料理とか、お菓子とか! お姉ちゃん頑張っちゃいますよ!」
「シャ~~~~ッ!」
そんなやりとりをしているクロとヒナ。
直江はそれを見て確信するのだった。
(うん、いい友達になれそうでよかったな)
さて……いつも言ってることなのですが
面白かったら、この部分より更に下(広告の下あたり)から、マックス10ポイントまでの評価や感想できますので、してくれると参考になります。
また、続きを読みたいと思ったら、ブクマしてくれると励みになります。
ブクマとポイントはどちらも、作者が連載する活力になっています。
冗談抜きで、執筆するモチベーションに関わって来るレベルです。
すでにしてくれた方、本当にありがとうございます。