第三十一話 放課後の魔王様③
ベンチに座り、クロを慰めること数分。
現在。
「さっきも言ったけど、クロの顔は見られてないと思うから、大丈夫だよ!」
「クク……我、もうこの世界嫌い……」
と、がっくりしているクロ。
直江はそんな彼女へと言葉を続ける。
「それにほら。仮にクロの顔とか見られてたとするでしょ? でもだからって、わざわざ無関係な親子が、クロのこと学校に言いふらすと思う?」
「そ、それは……そうですけど」
「それでも心配なら、こういう言い訳すればいいよね――部活でやる劇の練習をしてましたって」
「うぅ……ですけど」
と、未だへこみモードのクロ。
これは結構重症だ。
(見られてこんなに落ち込むなら、外でやらなければいいのに……でも、多分このリスクを背負ってでも、今やってるこれを続けたいんだろうな)
となれば、いつまでもクロをこのままにしておくのは可哀想だ。
先輩としても、魔王様の右腕としても。
と、直江はそんなことを考えたのち。
クロの頭へと手を延ばす。
そして。
わしわし。
わしゃわしゃ。
「!」
途端、ピクンと跳ねるクロ。
彼女は突如、元気に直江へと言ってくる。
「ちょっ! やめてください! やめてくださいよ! いつも言ってるじゃないですか! 子供っぽいから、わしゃわしゃは禁止です!」
「でもクロ、これやるといつも元気になるよね? シューティングゲームで綾瀬にボコボコにされた時とか」
「普通のシューティングなら負けませんよ! FPSだけです! FPSに対するあの人の熱が、異常すぎるんですよ!」
「うんうん、そうだね」
「だ、だからわしゃわしゃしないでくさい! そ、それ以上すると……それ以上すると、私の精神が……あっ、ふぇぇ」
途端、借りてきた猫の様に大人しくなるクロ。
彼女の表情はこれまでと異なり、まどろんだ様子だ。
どうやら、精神が安定?したに違いない。
「で、この後どうするの? 漆黒の魔獣との契約はまだ続ける?」
「ん~……今日は~……写真を撮るだけで……終わらせましょうか~」
と、ポヨポヨした様子のクロ。
そんなクロを撫で続けながら、直江は一人考えるのだった。
(写真か……スマホのカメラでいいだよね? カッコよくとってあげられるかな)