第三十話 放課後の魔王様②
『我が右腕よ! これより世界と対峙する時に備え、漆黒の魔獣を仲間に加えに行こうではないか!』
と、クロがそんなことを言ってから、時は十数分後。
場所は近所の公園。
「ククク! 今こそ邂逅の時、漆黒の魔獣の力……我が使役せん!」
などなど、超ノリノリモードなのはクロだ。
しかし、ちょっとでも人が通ると――。
「さぁ、我が右腕よ! あの漆黒のまじゅ――っ! 直江さん! ほら、あそこに鴉が居ます! あれが今日の目的なんですよ!」
と、凄まじい速度でコンタクトをパージ。
後輩モードへ移行するクロ。
そんな彼女は、直江へ言葉を続けてくる。
「やはり、魔法使いと言えば鴉……鴉と言えば魔法使い! 私はやります! あの鴉を友にしてみせますよ!」
「……クロ、魔法使いなの? 魔王なんじゃないの?」
「ま、魔法使いの魔王です! ジョブが魔法使いの魔王ってことです! こ、細かいことはいいんですよ! 魂で理解してください!」
ジタバタと腕を振りまくり、全身で抗議してくるクロ。
魔王というより、マスコット感漂う……と、思うのは直江の勘違いに違いない。
と、ここで直江はとあることが気になる。
故にそれを問うべく、直江はクロへと言う。
「ところでクロ、あの鴉でなんかしたいの?」
「よくぞ聞いてくれました! さすが直江さんです!」
タタッ!
と、滑り台の上へ登るクロ。
彼女はそこからポーズを取り、直江へと言ってくる。
「これより我は至高の魔法陣を描き、あの漆黒の魔獣を誘導! しかる後に、我と魔獣は魂の契約を――」
「ねぇねぇ、お母さん! あのお姉ちゃん、何やってるの?」
「こら、見ちゃいけません!」
と、クロの台詞をぶった切って聞こえてくる親子の声。
すると。
「…………」
トテトテ。
テチテチテチ。
「ふぐぅ」
と、滑り台から降りてきたクロ。
彼女は直江へ抱き着きながら、言ってくるのだった。
「お、終わりです……高校生活終わりました。は、恥ずかしい……っ」