第二十九話 放課後の魔王様
時は放課後。
場所は変わらず部室。
「クククッ……これより作戦会議を始める」
と、妙なポーズを取り言ってくるのは、クロだ。
彼女は絶賛魔王モードに移行している。
そんな彼女は、直江へと言葉を続けてくる。
「さぁ、我が右腕よ……何か意見はあるか?」
「いや、意見と言われてもこれ、どういう設定ですか?」
「ちょっ! 設定とか言わないでくださいよ! ムードがぶち壊しじゃないですか」
バタバタ。
バタバタバタ。
と、腕を振って猛抗議してくる魔王様ことクロ。
直江はそんな彼女へと言う。
「ごめん、ごめん……っていうか、僕が写真撮るだけでよかったんじゃなかったっけ――クロがかっこいいポーズしてるところの」
「うぐっ……余計なことばかり覚えていますね。たしかにそれもありますけど、やはり魔王たるもの仮初の活動ばかりではいけませんからね!」
「……仮初の活動?」
「おっと、直江さんにはまだ言ってませんでしたね」
ズビシ。
っと、再び妙なポーズを取るクロ。
顔に翳した手の間からのぞく目が、金色に光っている。
(カラーコンタクト……随分力入れてるな)
などなど。
直江が考えている間にも、クロは言ってくる。
「私が学生として活動していること……これ自体が仮初なのです! そして、私がわざわざそんな事をしている真の目的……それは!」
「それは?」
「我が最終目標たる世界の支配! その第一歩として、この学校を占領することです!」
「…………」
うん。
世界を支配するペース。
遅くない?
「クロ。僕思ったんだけど、世界を支配するために学校を占領するのは、あまりよくないと思うんだよね」
「え?」
と、きょとんとした様子のクロ。
直江はそんな彼女へと言う。
「だって正直、校長とかならまだしも、一生徒が学校を支配してもたいして影響力ないよね? せいぜい喧嘩集団とか作れるぐらいだよね?」
「あ、ぅ」
「僕だったらそうだな……滅茶苦茶勉強して、もっと権力者になるかな。とりあえず、最初は総理大臣目指すかも。そうしないと、国を本格的に動かせないよね?」
「…………」
おかしい。
クロの目から生気が消えてしまった。
ひょっとして直江、何かいらんこと言ってしまっ――。
「く、ククク! わ、わかっていますとも! 実はさっきのは全て冗談です!」
と、再びポーズを取って来るクロ。
彼女は直江へと言ってくるのだった。
「我が右腕よ! これより世界と対峙する時に備え、漆黒の魔獣を仲間に加えに行こうではないか!」