第二十七話 直江、ゲームをしましょう?④
「ひぐっ……な、なお、え――わ、わたし、わたしただ……あんたのことが、好きで……っ、だ、だから――うっ、あ、あんたの傍に居たくて……ふ、不安でっ」
と、言ってくるのは綾瀬だ。
あれから、直江は綾瀬をずっと慰めているが、たいして泣き止んでくれない。
故に直江は言葉をさらに続ける。
「部長、大丈夫ですよ。確かに『こいつやばい』と思いましたけど、嫌いにはなってませんから」
「綾瀬って呼んで」
「綾瀬のことは嫌いになってませんよ」
「どうして? あたっ、あたし……直江にバレて――」
「うーん」
そういえば、どうしてだろうか。
綾瀬の事を危険だとは思ったが、嫌いとは思わなかった。
(まさか僕、ドМなのかな)
とまぁ、そんな訳はない。
となると。
「多分、僕が綾瀬と仲良くしたいから……じゃないですかね?」
「直江、が?」
と、視線を上げてくる綾瀬。
直江はそんな彼女へと言う。
「綾瀬が僕のことをどう思っているとしても、綾瀬が本当はいい人なことを、僕は知ってますから」
「……好き」
「はい?」
「直江、ずっと隠していたけど……わたし、あんたが好きなの」
「…………」
ずっと、隠していた?
隠すとはいったい、どういう意味だったか。
と、考えている間にも綾瀬は直江へ、言葉を続けてくる。
「わたし、これからいい子にする……ちょっとだけ」
「あ、ちょっとだけなんですね」
「だから、お願い直江……わたしのこと、捨てないで」
「当り前ですよ。これからもいつも通り、よろしくお願いします」
と、まさにその時。
感じたのは第三者の視線。
同時。
「直江さん、その手錠……なるほど、変態プレイですか」
聞こえてくるクロの声。
彼女はジトっとした視線を残し、リターンして行ってしまうのだった。
「ちょっ! あ、綾瀬! この手錠早く外してくださいって!」
「直江……わたし、直江が欲しいわ。そして、わたしは直江のものになりたい」
と、綾瀬さん。
どうやら、直江の受難はまだまだ続くようだ。