第二十五話 直江、ゲームをしましょう?②
「直江、ゲームをしましょう?」
と、直江を抱きしめながら言ってくるのは綾瀬だ。
直江はそんな彼女へ、言葉を続けようと――。
ガシャッ。
聞こえてくるのは、そんな音。
同時感じたのは、手首の冷たい感覚。
「えっと……」
と、直江が綾瀬を見ていると。
彼女は彼へと、言ってくる。
「手錠かけただけよ? ほら、抱き着いた後ならあんた、少し油断するでしょう?」
「なるほど。その隙に、僕の腕を背面に誘導――手錠かけたんですね!」
「さすが直江、全部お見通しってわけね」
「いやぁ! 部長の早業にはビックリですよ!」
「…………」
「…………」
ダッシュ。
ただひたすらにダブッ――!?
襟首を掴まれ、引き倒される感覚。
まずい。
このままでは、頭から倒れる。
と、直江が覚悟を決めた直後。
感じたのは――。
後頭部に当たる柔らかい感覚。
気がつけば、直江は綾瀬に優しくキャッチされていた。
そして、そんな彼女は直江へと言ってくる。
「あんた、いきなり走ったら危ないでしょ?」
「あ……はい、ありがとうございま――いや、そもそも部長が原因ですよね!? 手錠付けて、逃げないように僕のこと捕まえて、いったい何する気ですか!?」
「何って……さっきも言ったでしょ? 直江はこれから、ゲームをするの」
ニコニコ。
綾瀬はそれ以上何も言わない。
彼女がしてきたことは、ただ一つ。
綾瀬の強烈な力でずるずる。
直江は部室内へと、引きずられていったのだった。
(なんだろう……売られていく牛って、こういう気分なのかな。もしくは、よくホラーゲームである主人公――危険人物に拘束されて、おかしな場所に連れて行かれる気分……ってやつかな)