第二十四話 直江、ゲームをしましょう?
「…………」
現在、直江は部室を隠れて覗いていた。
理由は当然。
「誰も、居ない」
もし運が良ければ、クロが来ているかもしれない。
そうすれば、綾瀬と二人きりになることはない。
と、そんな考えはこれで砕かれたわけだ。
しかし、直江の想像と違うことも一つ。
それは。
「綾瀬も来ていないのは、予想外だな……」
てっきり、昨日のことで待ち構えていると考えていた。
と、ここで直江はふと思う。
そもそも今日。
綾瀬は学校に来ているのだろうか。
というのも綾瀬は昨日、あんな秘密を直江に知られたわけだ。
であるなら、ショックを受けていてもおかしくない。
まぁ、本当にショックで学校休みたかったのは、直江の方だが。
「あの人、繊細なところがあるから……少し心配だな」
「あらそう、誰がそんなに心配なの?」
と、ふいに聞こえてくる声。
直江はその声に対し、言葉を返す。
「いやだから、そんなの綾瀬にきまって――」
ちょっと待て。
直江は今、誰に言葉を返した。
ギギッ。
と、直江はゆっくり方向転換。
視線を部室から、背後へと向ける。
するとそこに居たのは。
「こんにちは、直江」
綾瀬だ。
めちゃくちゃニコニコしてる綾瀬だ。
男子の憧れの先輩ランキング一位!
女子の憧れの先輩ランキング一位!
ついでに学力テストランキング一位!
そして。
現在、直江が恐れている人ランキング一位。
そんな綾瀬だ。
などと、直江が考えた。
まさにその時。
ドッ。
綾瀬が体当たりするような勢いで、直江にぶつかってきたのだ。
正直この瞬間、直江は思った。
(あ、刺された)
けれど、実際は違った。
綾瀬は直江をきゅっと抱きしめながら、言ってくるのだった。
「直江、ゲームをしましょう?」