第二十三話 狂愛へ至る小休止
「話は以上だ……それじゃあ、各自明日も元気に登校するように」
「起立! 礼!」
と、クラス担任とクラス委員の定型文句。
これはつまり、直江が恐れていた時間がついに来てしまった……ということだ。
それは――。
(部活動の時間だ……うちの学校は全員部活に強制参加、そしてそれも授業の一環ってことになってるハードボイルド)
つまり、まだ帰宅することは不可能。
簡潔に言うと。
(綾瀬とのエンカウントが絶対に起きる……あぁ、体が重い)
柚木の弁当、美味しかったな。
白米のところに、海苔で『なーおえ!』って書いてあったの。
アレには思わず笑った。
ダメだ。
現実逃避している場合じゃない。
早く行動しなければ、手遅れになる。
というのも。
(この時に備えて、秘策を考えておいたんだよね――綾瀬への対処法)
簡単だ。
二人きりにならなければいい。
要するに。
と、直江は考えた後。
荷物をまとめて一人席を立つ。
そして、柚木の席まで歩いていき。
未だ荷物をまとめている柚木。そんな彼女へと言う。
「あのさ、柚木。今日。一緒に部室まで行かない?」
「誘ってくれるのか!? 嬉しい……けど、今日はだめだ。あたしは掃除当番なんだ! しかもトイレ! だから、結構時間かかる! 先に行っててくれ!」
「…………」
一瞬一撃。
直江が五時間以上かけ、必死に考えた秘策。
それは粉みじんになったのだった。