第十九話 テンプレートな出会いはお好きですか?
「行ってきます」
と、直江は自宅から足を踏み出す。
ヒナの料理を食べたので、体がホカホカだ……あと、何故か。
料理を食べた直後あたりから、ヒナが猛烈に可愛く見えたのだが……。
(きっと、気のせいだよね……うん)
と、そんな事を考えながら、直江は歩行開始。
そして、すぐにとある建物が目に映って来る。
それは――。
幼馴染こと、柚木の家だ。
ヒナ程の衝撃ではないが。
柚木も柚木で、顔を合わせ辛いのは事実。
(まぁ、学校に行くまでに各々の事を考えておけばいいか……)
と、直江がそんな甘い考えをしたから、罰がくだったに違いない。
突如――。
バッ。
と、柚木の家の玄関から飛び出す影。
その影は見事、直江へと直撃してくる。
結果。
「きゃっ!?」
聞こえてきたのは、柚木の声。
見れば、トースト咥えた柚木が地面に尻もちをついている。
こ、これはいったい……なんと声をかければいいのか。
とりあえず、謝った方がいい?に違いない。
などなど、直江が考えていると。
「痛っ……何するんだよ! ちゃんと前を見て……って、なんだ直江か~!」
トーストを手でキープ、そして満面の笑みを浮かべてくる柚木。
彼女はゆっくり立ち上がり、直江へと続けてくるのだった。
「朝から直江とぶつかっちゃった……えへへ、なんだか照れるな!」