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第百二十二話 直江はヒナの秘密を見つけてみる3

 ガチャッ。


 と、聞こえてくるのは扉を開く音。

 それと同時。


「お兄……お待たせ」


 ついにヒナさんが入って来た。

 あのまま、クローゼットの前に居たら、直江は終わっていたに違いない。

 だがしかし。


「あれ、お兄?」


 と、聞こえてくるのは、戸惑った様子のヒナの声。

 彼女がそうなっている理由、それは簡単だ。


(と、咄嗟にベッドの下に隠れたけど、どうやって脱出すればいいんだこれ……というか)


 なんだこれ。

 ベッドのした、控えめに言って酷すぎる。


(大量の兄妹系同人誌に、こっちのこれは……僕の全裸写真っ)


 もっとも酷いのは。

 と、直江は視線を前へと向ける。

 するとそこにあったのは――。


 なんだかメカメカしい機械だ。

 ヘッドホンが接続されていることから、この正体はなんとなくわかる。


(これ、僕の部屋にあった盗聴器の音を受信するやつだよね……)


 やはり直江の予想通りだった。

 全部が全部とは言わないが、あの盗聴器はヒナの物だったのだ。


 目的は果たした。

 しかし、現状それどころではない。


「おかしい……この部屋、お兄の匂いがする」


 と、聞こえてくるヒナの声。

 そんな彼女は、部屋をうろうろさらに言葉を続ける。


「お兄……ひょっとして」


 そこから続く僅かな静寂。

 直後。


 ガラッ!

 ドババババババババババッ!


 間違いない。

 ヒナがクローゼットを開き、写真が雪崩出た音だ。


「居ない……お兄の匂いがここからした気がしたのに」


 そして、そんなヒナさんが直江を探しているのも間違いない。

 やばい、やばいやばいやばいやばい。


 理由は不明だが、ヒナの嗅覚は異常だ。

 何とかしないと、見つかるのは秒の問題だ。


「ベッドの下……お兄の気配がする」


 と、ついに嗅覚以上の事を言いだしたヒナさん。

 同時、近づいて来る彼女の足音。

 直江は悟った。


 あ、終わった。


 さらば直江の日常。

 こんにちは、ヒナとの愛欲の日々。


 などなど。

 直江が全てを諦め、楽しかった日々を思い出した。

 まさにその時。


 ぶぅぅうううううううううううんっ!


 と、聞こえてくる振動音。

 直後。


「お姉から電話?」


 聞こえてくるヒナの声。

 そんな彼女はお姉こと、電話の向こうの綾瀬へと言葉を続ける。


「今? わかった……お姉の急用なら、ヒナ頑張る」


 言って、部屋から出て行くヒナ。

 直江は咄嗟に理解が出来なかった――いったい何が起きたのか。

 ひょっとしてこれ、直江は助かったのでは説。


(と、とりあえず早くここから脱出――)


 ぶぅうううううううううううううんっ!


 と、直江の思考を断ち切るように、再度聞こえてくる振動音。

 今度の発生源は直江のスマホだ。


 残念ながら、それに応答している場合ではない、

 けれど、直江は念のために誰からかを見る。

 すると。


「あ、綾瀬……だと」


 さっきはヒナに電話。

 そして、今は直江。


 猛烈に嫌な予感がする。

 そして、これに出なければ終わる予感もする。


「……仕方ない、よね」


 直江はゴクリと唾を飲んだ後。

 ゆっくりと、電話に出るのだった。


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