第十二話 僕達私達の日常です(真)~ニャンニャン被り~④
(柚木がそう思ってくれてるなら……僕の自尊心なんて、どうでもいいか)
なんにせよ、これ以上盗み聞きしているのは柚木に悪い。
本当の柚木がどうあれ、柚木は直江が知っている柚木のままだ。
と、直江が土管の反対側へ向かおうとした……その時。
「ところでおまえさ、さっき直江のことバカにしたよな?」
聞こえてくる柚木の声。
直後。
「あぎゃぁああああああああああああああああああああああああ!」
「うおぁあああああああああああああああああああああああああ!?」
「お、俺は何も、何も言ってなぁああああああああああああああああ!?」
そんな不良たちの声。
いったい何が行われているのか。
直江にそれを知ることはできない。
というか。
なんかやばい。
この状況を万が一、柚木に見つかったらやばい気がする。
見えてしまった……こんな未来が。
『なんだよ~、直江ってば話聞いてたのか~? そうか~……忘れろ』
同時、直江の側頭部にヒットする柚木の蹴り。
いや、わかってる。
多分、柚木はそこまでしないとは思う……しかし。
柚木は優しいが、現状から判断すると完全にないとは言えない未来。
「…………」
逃げよう。
全て忘れて逃避しよう。
バキバキバキ。
メキョ。
そんな人外かと思うほどの戦闘音。
直江はそれを背中で聞きながら、公園を後にするのだった。