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第百十九話 直江は部屋の掃除をしてみる2

 ドタドタッ。

 ガタンッ!


 と、聞こえてくる慌ただしい様子の音。

 発生源は位置的に、ヒナの部屋に違いない。


「…………」


 直江、本日何度目かの嫌な予感がする。

 理由は簡単……というか、容易に想像できる。


 まず前提として、綾瀬はストーカー気質だ。

 直江の家に盗聴器や、カメラを仕掛けるなど日常茶飯事。


(そして、ヒナは最近そんな綾瀬と仲がいい……)


 考えた後。

 直江は本の中に入っていた盗聴器を、手に取って考える。


(これは……本当に綾瀬のなのか?)


 なるほど。

 確かに盗聴器を購入したのは、綾瀬なのかもしれない。


 だがしかし。

 今現在、こいつを使っているのは、本当に綾瀬なのか。


(どう考えてもヒナだよね……さっきのヒナの反応的に)


 きっと、綾瀬から貰ったなり、貸してもらったなりしたに違いない。

 直江が知っているヒナなら、それくらい普通にやりかねない。

いや、でも待て。


 直江はヒナの家族であり、ヒナは直江の大切な妹だ。

 そんな彼女を容易に疑っていいはずがない。


「…………」


 信じよう。

 少なくとも、実際にこの目で確かめるまでは。


 などなど、直江はそんな事を考える。

 そしてその後、自らの部屋の掃除を続けるのだった。


 なおこれは余談だが。

 盗聴器が八個と、カメラが三個見つかった。


      ●●●


 時はあれから、しばらく後。

 場所はヒナの部屋の前。


「…………」


 段取りはこうだ。

 まず、普通にヒナの部屋の掃除をする。


 そしてそれと同時。

 さりげなく、彼女の部屋を探索するのだ。


(盗聴器を受信している何かが、ヒナの部屋から見つからなければよし。もし見つかったら……もし見つかったら)


 どうしよう。

 とりあえず、綾瀬に連絡しよう。

 そして、全部引き取ってもらおう。


(ヒナと話すのは、それからでも問題ないよね)


 とまぁ、これが直江の作戦だ。

 問題があるとすれば――。


 なんだか変態臭い事だ。


 無論、直江にはちゃんとした理由がある。

 しかしそれでも、妹の部屋を秘密裏に漁るのは抵抗がある。


「はぁ……いったいどうして、こんな事に……」


「お兄?」


 と、扉越しに聞こえてくるヒナの声。

 その直後。


 ガチャ。


 と、開かれるヒナの部屋の扉。

 そして、そこから現れたのは――。


「お兄……待ってた」


 いつも以上に、気怠そうな様子のヒナさんだ。

 きっと、掃除を彼女なりに頑張っていたに違いない。

 そんな彼女は、ひょこりと首をかしげながら、直江へと言葉を続けてくる。


「なんで、ヒナの部屋の前で立ってるの?」


「え、いや……えっと、な、なんでだろうね?」


「…………」


「…………」


 やばい。

 なんだか、怪しまれている。


 直江がヒナの心境をだいたい読めるように。

 ヒナも直江の事は、だいたいわかっているに違いない。

 そして、彼女はなかなか鋭いところがある。


(僕がただ単に、ヒナの部屋を掃除しにきただけじゃないって、ヒナにバレたか?)


 可能性としてはかなりある。

 なんせ、ヒナは『直江が盗聴器を見つけた』のを知っているに違いないのだから。

 となればきっと、警戒して――。


「お兄……ひょっとして、照れてる(ぼそぼそ)。ヒナの部屋に入るのドキドキして(ぼそぼそ)……それってつまり、ヒナを異性として意識してる(ぼそぼそ)」


 と、なにやらモジモジしている様子のヒナさん。

 なるほど、どうやら直江の勘違いだったようだ。


 などなど。

 直江がそんな事を考えていると。


「お、お兄……は、入っていいよ……ヒナの中に――じゃなくて、ヒナの部屋に」


 と、言ってくるヒナ。

 彼女は頬を染めながら、直江へと言ってくるのだった。


「遠慮はいらない……ヒナ、お兄なら気にしない」


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