表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

112/129

第百十二話 こんにちは、サイコ綾瀬さん②

「ねぇ直江、わたしは愛しているあんたの恥ずかしい姿を、不特定多数に見せたくないわ。だから、勝負を受けてくれると助かるわ……どうかしら?」


 と、にこにこ笑顔な綾瀬さん。

 彼女の笑顔は、ぶっちゃけかなり可愛い。

 だがしかし。


(この状況で、あのセリフと共に浮かべる笑顔……滅茶苦茶怖い)


 などなど。

 直江がガクガクぶるぶるしていると。


「それで、答えは?」


 ひょこりと、首をかしげてくる綾瀬。

 故に直江は綾瀬へと言うのだった。


「受けるよ。その代わり、僕が勝ったら『何でもいう事聞かせる権利』で、その動画を消してもらうからね」


      ●●●


 そうして、時は数分後。

 場所は綾瀬の向かいの筐体。

 現在、直江は操作確認を含め、一人プレイをしていた。


(よし、操作は一通り覚えたかな)


 これならば、無様にやられることはないに違いない。

 そもそも、綾瀬も『格ゲーが得意でない』と、自分で言っていたのだから。

 そして、直江はそれを裏付ける証拠も得ている。


(さっきチラッと見たら綾瀬。難易度最低の最初の敵に、パーフェクト決められて負けてたんだよね)


 言ってはアレだが。

 クソへたくそだ。


 格ゲーにおける、難易度最低の最初の敵。

 それが相手ならば、赤ちゃんに操作させてもワンパンくらいは、いれられるに違いない。

 要するに、綾瀬の格ゲーの腕前は宇宙次元で弱い。


(なんか色々と、僕が不利になる条件を付けてくると思ったけど、今のところそれもないんだよね)

 

 と、直江がそんな事を考えた。

 まさにその時。


「直江、準備はいいかしら?」


 と、向かい側から聞こえてくる綾瀬の声。

 直江はそんな彼女へと言う。


「うん、こっちらならいつでも」


「そう、覚悟は出来たということね……わたしの言う事を、なんでも聞く覚悟が」


「言わせてもらうけどさ、勝った気になるのは早いんじゃないの?」


「あら、そう? まぁ、やればわかるわ」


 そんな綾瀬の言葉。

 それと同時、直江の画面に浮かぶ『チャレンジャー』の文字。

 綾瀬が向かいの筐体から、直江へと対戦を仕掛けて来たのだ。


 どうするかなど決まりきっている。


 直江は挑戦を受ける。

 そうして移るのは、キャラクター選択画面。

 きっと向かいでは、綾瀬がキャラクターを選択しているに違いない。


(僕が選ぶキャラは決まってる)


 速度と手数に特化した軽量キャラだ。

 体力はやや低めだが、上手くいけば相手を瞬殺できる。


 直江がこのキャラを選んだ理由。

 それは簡単だ。


(さっき見た時、綾瀬は巨体自慢のパワータイプキャラを使ってた)


 上級者が使えば違うが。

 綾瀬が使っている場合に限り、そのキャラはデカいだけでクソとろい木偶だ。

 速さで圧倒すれば、何もさせずに勝てるに違いない。


(綾瀬には悪いけど、僕はこの勝負で負けるわけにはいかないんだ)


 などなど。

 直江がそんな事を考えた後、キャラクター決定ボタンを押す。

 それから数秒後。


 ステージが決まり。

 いよいよ、戦いのカウントが始まる。


(よし、綾瀬のキャラは事前にみた時と変わらず、パワータイプだ!)


 全て想定通り。

 これならば危険なく立ち回ることが可能だ。

 と、考えた瞬間。


『バトルスタート』


 と、画面に浮かぶ文字。

 直江は即座に自らのキャラを動かす。

 狙うは必殺コンボ。


(練習の時に、これだけは覚えて来たんだ――今の僕なら、初撃を入れられれば絶対に成功させられる!)


 直江のキャラは、どんどん綾瀬のキャラへと近づいていく。

 けれどやはり、綾瀬のキャラは動かない――いや、彼女のスキルとキャラの遅さの相乗効果で、動くことができないに違いない。


 つまり、今こそが勝機。


 直江のキャラはついに、綾瀬のキャラを間合いに捉える。

 そして、最初の一撃目を出そうとした――直後。


 ガシッ。


 綾瀬のキャラに掴まれる直江のキャラ。

 いったい何が起きたのか。


「……へ?」


 直江が理解する間もなく。

 直江のキャラは、綾瀬のキャラに連続で十六回投げられ……。


 死んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ