第百十一話 こんにちは、サイコ綾瀬さん
時は直江の背中が復活してから数分後。
場所はアーケードゲームコーナー。
「あら直江、ようやく来たの?」
と、言ってくるのは綾瀬だ。
彼女は格ゲーの筐体の前に座りながら、直江へと言葉を続けてくる。
「ところで直江、ゲームをしましょう?」
「いや、するのはいいけど。僕は格ゲーあんまり得意じゃないよ?」
「あら奇遇ね、わたしも格ゲー得意じゃないもの」
珍しい。
綾瀬は生粋のゲーマーだ。
シューティングゲームが特に上手く、その他のジャンルもかなり上手い。
(そんな綾瀬にも、苦手なジャンルがあるんだな)
でもまぁ、人間なのだからあってもおかしくはない。
などなど、直江がそんな事を考えていると。
「せっかくだから直江、何か賭けてみない?」
と、言ってくる綾瀬。
彼女はチロリと舌を少し見せてきた後、直江へと言葉を続けてくる。
「魂を賭けましょう?」
「……綾瀬、闇のゲームでもするの?」
「たいしたことじゃないわ。わたしが勝ったら、あんたの魂はわたしのも。あんたが勝ったら、わたしの魂はあんたのものって意味よ」
「ごめん、意味わからない」
「じゃあ、もう少しだけ簡単に言うわ」
と、髪をふぁさっと後ろにやる綾瀬。
彼女はドヤっとした様子で、直江へと言葉を続けてくる。
「わたしが勝ったら、わたしの言う事を聞いてもらうわ。あんたが勝ったら、わたしがあんたの言う事を聞いてあげる」
「そんなの受けるわけないよね!?」
「受けるわ」
「受けないからね!?」
「受けるしかないのよ。あんたは」
と、綾瀬はスマホ取り出し、直江へと画面を見せてくる。
直江がそれを見てみると。
「なっ!?」
そこにはマジでやばい映像が映っていた。
もうやばすぎて、言えない――年頃の男の子なら、絶対に見られたくない映像だ。
それでも部分的に言うのなら、パソコンの前に座っている直江。
彼が右手を忙しくしている映像だ。
「どうかしら? わりかし最近に仕掛けたやつから撮ったのよ?」
と、にこりと微笑んで来る綾瀬。
直江はそんな彼女へと言う。
「まだこんな事してるの!? っていうかこれ、犯罪――」
「愛よ」
「…………」
「わたしはあんたを愛しているわ。だから、あんたの全てを……いついかなる時でも、絶対に見ていたいの」
「っ……そ、それで。これがあるから何なの? どうしてこの状況で、僕にそれを見せて来たの?」
まぁ、予想は出来ている。
相手は変態サイコ綾瀬だ。
などなど。
直江がそんな事を考えていると。
「これを流出させられたくなかったら、この勝負をうけなさい」
と、そんな事を言ってくる綾瀬。
彼女は直江にニコリと微笑んで来ると、そのまま言葉を続けてくるのだった。
「ねぇ直江、わたしは愛しているあんたの恥ずかしい姿を、不特定多数に見せたくないわ。だから、勝負を受けてくれると助かるわ……どうかしら?」