第百九話 破壊神②
「直江ぇ~! あたし、直江が居なくてとっても寂しかったぞ!」
と、抱き着いて来る柚木。
彼女は猫の如き甘えた様子の声で、直江へと言ってくる。
「ひょっとして直江、さっきのあたしの事、見ていてくれたのか?」
「パンチングマシーンなら見てたけど……」
「きゃっ♪ 直江に見られちゃったぞ♪ でもどうだ? あたし、とっても頑張ってパンチしたんだ!」
と、直江から離れ、その場で楽しそうな様子でステップ踏む柚木さん。
彼女はてれてれした様子で、直江へと言ってくる。
「あたし、直江の事を考えながらパンチしたんだ!」
「え……それって僕の事を、殴り――」
「違うぞ! 直江への愛を込めて殴ったんだ! あたしの力は、常に直江への愛で溢れてるんだ!」
「へ、へぇ」
「た、大変だ直江! あたし、告白してるみたいだ!」
いやんいやんと、くねくねし始める柚木。
そんな彼女の顔は、どんどん真っ赤になっていく。
っていうか。
柚木の言動行動をみて、直江はとある事を思う。
故に彼は彼女へと言う。
「柚木ってさ、もう僕に隠さないっていうか――見られても無反応なんだね」
「え、直江はこういうあたし、嫌か?」
「いや、別に嫌じゃないけ――」
「だからいいんだ! 直江はありのままのあたしを受け入れてくれた、だから直江……あたし、お前のことが大好きだ!」
にこにこ。
犬なら尻尾でもふってそうな笑顔を向けてくる柚木。
正直、悪い気はしな――。
「あ、姉御!」
と、聞こえてくる不良たち――その一人の声。
途端、柚木は不機嫌そうな様子で、その男へと言う。
「あぁ? なんだよてめぇ、あたしになんか用か?」
「え、えっと……そのひょろいの、姉御の彼氏っすか?」
「てめぇ、今なんて言った?」
「え、あ――ちょ!? あ、姉御、くる、苦し――」
「あたしの直江をバカにしてんのか? おい、なんとか言えよ……なぁ!?」
「すみ……す、すみま、せんっ」
「ちっ」
と、ようやく男を離す柚木。
直江は一連の出来事を見ていて思った。
柚木。
二重人格なんじゃないかな。
直江と話している時。
それ以外と話している時。
その際の柚木の性格の変わりようが、どう見てもやばすぎる。
正直、先ほど――不良の首絞めてた時の柚木。
そんな彼女から出ていたオーラはやばかった。
(思わず息するの忘れるレベルだったもんな)
よかった。
直江は柚木の綺麗な面を向けられる存在で。
などなど、そんな事を考えていると。
「あ、あの彼氏さん」
と、言ってくるのは不良の一人。
彼は直江へと、恐る恐ると言った様子で、言葉を続けてくる。
「彼氏さんもやっぱり強いんすか? 姉御よりも強いんすかね!?」
「え、いや……僕は――」
「直江は最強だ!」
と、会話に乱入してくる柚木。
彼女はまるで、お祈りする様なポーズで、不良へと言葉を続ける。
「直江は尊いんだ……あたしなんか、足元にも及ばないくらい」
「お、おぉおお~~~~~!」
と、声を上げる不良たち。
彼等はキラキラした瞳で、直江へと言ってくるのだった。
「彼氏さんもパンチングマシーンやりましょうよ!」
さて……これは毎回、言ってることなのですが
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