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続・大地という男
部屋に戻ると、すっかり冷え切った両手をスエットのポケットに入れながらクローゼットに向かう。
まず取り出したのは、つま先まで温かいという厚手の靴下。これを二枚重ねて腕に履く。
謳い文句である温かい部分、つま先はハサミでバッサリと切ってある。
そしてその上からジッパー付きの黒いパーカーを着て、パンツはスエットからジーンズへチェンジ。
しっかりとズボンイン。
両手フリーで動き回るために、物はできるだけパーカーの中に収納するのが大地スタイル。
そのためのズボンイン。
決してお腹を壊しやすいからではない。
ズボンイン。
これでリュックやボディバッグと言った概念を持ち合わせていない大地の、探索スタイルが整った。
部屋を出る前に胸ポケットの腕時計をもう一度見る。
午後二時半。
暗くなるまで二時間は動けることを確認し、階段を降りる。
さぁ行くか。
下駄箱の上に置いてある黒いマスクを手に玄関の扉を開けようとするが、やはり恥ずかしさが勝り白いマスクを手に取る。
パーカーのフードを深々とかぶり、紐の黄色い運動靴を履き、薄汚れた姿見鏡を前にして呟く。
今日、やめとこかな。