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第9話 武器 -Relic Weapon-

 スバルが基地に戻り、僕らは揃って司令室に出向した。

 各国政府や他の支部、基地など様々な場所から際限無く送られてくる情報を複数のモニターを職員が分担して処理している中、電子承認印で最終確認を行っている女性が居た。

 花蓮恵良、E.L.F日本支部、東基地の司令であり、僕の直属の上司。


「守春も夜火准尉も本当によくやってくれた。今回はまあ、どうにもならんかった事例だ、それよりも二人の無事を嬉しく思う。私より若い者の死亡届けに印を押すのは何よりもつらいものだからな」


 5年前、奇襲により現場指揮官が軒並み戦死した際に指揮を執り、部隊を立て直した功績から32歳の若さでこの基地の司令となった女性だ。

 情が深く、誰よりも仲間の死に傷つきながらも、仲間を戦場に送り出す彼女の心境は、スバルと出会ってから僕にもよくわかるようになった。


「前線はしばらく忙しいだろうが、お前達はしばらくまた後方だ。なんせ世界に7人しか居ない次世代魔法少女のテストヘッドだからな、その辺りはわかるな?それよりも新しい装備が必要との報告が届いている。具体的にはどういう武器を望む?」


 特異個体の強力な防壁、バロールの圧倒的な力に対抗するのに、従来の小型レールガンやプラズマライフルでは威力不足、あるいは相性が悪い。

 それこそ対兵器や対人など、常識の範囲内での戦いなら過剰火力でもあったかもしれないが、相手は超常の存在だ。

 より強い武器が必要だ。


「剣か、槍……後は弓を、とびきりに強いのを」


 今の科学技術では力不足、なら頼るのは「古代」の技術。


「なるほどな、レリックウェポンか」


 この世界には魔術が存在する様に、かつて神話の神々も、どの程度が真実かは知らないが存在した。

 その証拠としていくつかの「レリック」が保管、あるいは発掘されている。


 中でも有名なのは「エクスカリバー」や「フラガラッハ」「レーヴァテイン」などが完全な状態で残っており……所有組織の魔法少女が運用している事だ。

 不完全なモノ、または残骸であっても解析が行われ、多少は性能こそ下がるが「再現」されているものなどもある。


 魔法少女システムの開発や既存兵器の改良に加え、こうしたレリックの再利用などもまた人類が今日まで存続できている理由である。


「とはいえ、神話や伝説は私の専攻ではないからな……いや、そうだな……少し待て」

 司令が端末を操作し、何かを調べる。


「弓とは言いましたが、ハフリは弓を使えるのですか」

「使えなければ特訓するだけだ」


 銃が基本の世界とはいえ、魔法少女に限れば剣術や槍術などが再び注目され、弓術もまた一部では復興しているという。

 探せばどこかで教えは受けられるし、ダメなら我流でやるまでだ。


「ボウガンならあるそうだぞ、試作段階のモノだがな」


 そう言って司令が見せてくれたのはE.L.Fヨーロッパ支部の開発中の武装データ。


「グングニル……?」

 スバルが疑問符をつけてそれを読み上げる、僕としても疑問に思った。


「何故ボウガン?」


 グングニルは北欧神話の神、オーディンが使ったとされる必中の「槍」だ。

 決して弓でもなければ銃でもないし、ボウガンでもない筈だが。


「それは開発チームにでも聞かなければ分からないが、必要なら交渉できるぞ。ただ向こうも人手が足らなくてロクにテスト出来てないであろうという点はあるが……」


 E.L.Fは一つの組織、支部ごとの隔たりなど無い様なものだ、故にこうした技術や試験装備もよっぽどでない限りはやり取りできる。

 当然、弓よりボウガンの方が銃に使い勝手は近いだろう。


「お願いします」


 僕も有名所は知っているが、あまり神話や伝説に詳しいという訳でもない。

 とりあえず手にとって見なければわからない、やってみなければわからないという訳だ。


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「エクスカリバー、一回でいいから振ってみたい」

「お前の適性じゃ起動すらせんだろ、そもそも動いたとしてドミニオンじゃないとバリア出力が足りなくて丸焦げになる」

「でもアルちゃん先生は一回は耐えた」

「その後一ヶ月病室暮らしで戦線復帰に二ヶ月だぞ、アルちゃん先生」


 司令に報告と申請を終え、早めに食堂に行くとそこには僕らの他に先客、E.L.Fの魔法少女が二人居た。


「スバルと准尉じゃん、生きてたのか」

「そう簡単に死ぬつもりはないし、僕らが死んだらログでわかるだろうアーニー先輩」

「いやお前ら割と機密の塊だし、普通に隠蔽されるかなって」

「確かに私達は秘匿事項が多いですが、そこまで一般の魔法少女の皆様と変わらないので……」

「まあ夜火は殺しても死なない」


 同じクリーム色の髪に活発な褐色肌のアーニーと無表情で色白のローラ、魔法少女一年目の「新人」かつ先輩。

 とはいっても従軍歴では僕の方が二年程長いが、一応「魔法少女」としては彼女らの方が先なので先輩と呼んでいる。


「ローラ先輩、僕も一応は人間に分類されているので一般的なダメージで死にますから。他の支部の人に僕が不死身だって噂流しているの知っているんですからね」

「実際、4回も部隊全滅して生き残ってる……」

「悪運です」


 アーニー先輩はまあ魔法少女としてはそこまで珍しくない勝気な人だが、ローラ先輩は大人しげに見えて自分の解釈をさも事実かの様に話すという悪癖がある。

 なんどか誤認で注意を受けている問題児でもあり、アーニー先輩はそのストッパーでもある。


 戦場では頼もしいのだが、本当に変な噂の元になるのだけは勘弁して欲しい。

 敵を、バロールを恋に落とした男などという噂を流された時は本気で困ったし。


「それで准尉は例のジュリエットと初対面したんだっけ?」

「アーニー先輩、バロールとはそういう関係ではありませんし、笑い事ではありません」

「そうです、ハフリは私の運命の人なのですから」

「でも夜火に懸想してる魔法少女は結構いるよ」

「スバルは張り合うな、そして先輩はソレをさも事実かの様に話すんじゃない」


 僕は確かに元はただの歩兵で今は魔法少女の片割れという特殊な立場で魔法少女と交流は多い方だが、そんな事実は無い。

 そのせいで他の男性の職員や兵士の方々の嫉妬されたり、冷やかされたりして大変なのだ。

 というかスバルと一緒に居る時点でかなりそれを話題にされるので、かなり困っているというのに。


 誰が呼んだか「ハーレム少年」やら「ラブコメ少年」、確かに面白い話題の一つぐらいは欲しいだろうが、僕をネタにするんじゃない。


 正直アーニー先輩はともかく、ローラ先輩とはこれだからあまり会いたくないのである。


 アーニー・リエル、E.L.F所属の魔法少女、クリーム色の髪に赤い目、褐色の肌、アメリカ人、射撃を得意とする。

 陽気で勝気ではあるが、冷静な常識人、ただし好き嫌いが激しい。

 ローラ・エリッヒ:同情、クリーム色の髪に青い目、ドイツ人、格闘戦を得意とする。

 無表情で何を考えているかわからないと評判な上に誤認や噂の発生源と有名な問題児、なまじ強いが故に注意や軽い罰で済んでいる。

 固定チームを組んでいる魔法少女であり、どこに行くにも二人一緒、信頼から来るチームワークは強力。

 通常タイプのエンジェルモデルを使う。

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