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タイムスリップという失敗作

作者: 夜空 狐
掲載日:2019/07/29

「タイムスリップ」? いい響きだ。

どんなものなんだい? ……へぇ。過去にも未来にもいける。ずいぶん便利だなあ。

僕にそれを使わせてくれるって? いい度胸だね。僕が使ったら全部むちゃくちゃになるよ。それでもいいの?

じゃあ、僕が生まれる前に「タイムスリップ」しようかな。叶えてくれる?


『「タイムスリップ」=人生書き換え』

そんなの聞いてないよ。ちょっと待っーー。


僕ガ生まれタノハ、とても裕福ナ家庭ダ。親ハすごく優しクテ、兄モ僕ヲ導イテくれるかっこイイ人ダ。ご飯モ美味シイ。

「色んな人が僕に期待してくれる。その期待に応えられるだけの力が僕にはある。ああ、なんて幸せな人になってしまったのだろう、僕は。最高な人生書き換えじゃないか」

人と関わりヲ持ツようニなる。友達ハみんな僕ヲ慕っテくれる。人間関係、問題ナシ。

「前の僕とは違う。全員とうまくいっている。気持ちがいいな」

挫折ヲ味わわズに、大人にナル。自分ノしたいことを仕事にシテ、幸せナ家庭ヲ築く。子供ハ自分ノように育つ。何モカモが、思い通リになってイル。

「成功するってこんなに素晴らしいんだ。失敗作だと言われ続けた僕が嘘みたいだ。幸せだな。幸せ…だよな?」



突然、僕の目の前が真っ暗になった。


『おい。やっと起きたか』

誰だお前は。

『お前は「タイムスリップ」なんて使っちゃって…どうするつもりだったんだ?』

僕の質問に答えてくれ。

『嫌だね。こっちの質問に答えなさい。』

どうするって…僕が生まれる頃を見たかっただけだよ。ちょっと人生に疲れたから。それが、人生書き換えだなんて。

『人生書き換えなんてことしないよ。私が君に提供した「タイムスリップ」は、「別の人生を体験すること」だよ』

はあ…? 体験…? 何がしたいんだよ。

『さっき君は人生に疲れたって言ってたよね。きっと不幸だとか思っているんだろう? 失敗作の自分が嫌になった。図星だろう』

…ああ、そうだね。

『簡単な話だよ。私は君に聞きたい。君の今の人生は本当に不幸か? 君は本当に失敗作か?』

いいや。確かにさっき僕が見た人生は成功作かもしれない。だけど、幸せそうには見えなかった。つまらないだろうな。きっと。

『そういうことだ。わかったか?』

わかったよ。


ちょっと待って。お前は誰だ?

『ああ、私? 私は失敗作の君だよ。』


『じゃあね』

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです。ありがとう
2019/09/28 18:15 退会済み
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