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第七話「これが光?」

新年明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願い致します!

では、今年最初の投稿となります。

どうぞ!

『いっえーい!! 皆ぁ!! 今日もヒミカちゃんのために集まってくれてありがとー!! 毎日頑張ってる皆を、ヒミカちゃんの歌で元気付けてあげるからねぇ!!』

《うおおおお!! ヒミカちゃあぁん!! マジ輝いてるっすー!!》

『よーし!! まずは、一曲目いっちゃうよ!! シャイニング・スターズ!!』


 ガーデジオに設置されているステージで、ヒミカがライブを行っている。ここは、人々が歌や芸などを披露する場所として設置されたのだ。 

 これも、地球の影響と言えるだろう。

 それまでは、決まった建物の中でしか行われていなかったが、それが外でも自由にできるようになっている。とはいえ、ステージを使うにもちゃんと許可が要る。

 ヒミカは、必ず週に一回は必ずライブを行っているようだ。本当は、毎日やりたいぐらいだと言っていたが、それはステージを運営している側からしても、そして本人の体調のためにも無理だと断言。

 とはいえ、週に一回は必ずライブに加えて、毎日のようにギルドのクエストをこなしている……ファンは喜んでいるが、同時に彼女の体調に関して心配をしている。

 が、本人は。


「ヒミカちゃんの体力は無限大! ファンの皆のためなら、ヒミカちゃんはどこまでも頑張れる!! だって、ヒミカちゃんはヴィスターラの希望の星。光なんだから!!」


 とのことだった。

 

「それにしても、なかなかの数だな」

「まあ、普通に可愛いですし。頑張りやですし。歌もうまいですから。それに、職業は【付与術士】ですから。彼女の多種多様な付与術は、本当にすごいです。しかも、レアな継続回復術まで身につけているんです」

「なるほど。つまり、多種多様な強化もできて、回復もできる万能な支援術者ということか」


 ヒミカの誘われて、ライブへと訪れていた剣児。

 アリーシャも、ついてきてはいるが、楽しそうな顔はしていない。幼馴染ということもあって、昔からヒミカの歌は聴いていたとのこと。

 なので、聴き慣れてしまっているようだ。


 可愛らしく、ポップな歌だ。

 ヒミカも、歌に合わせて可愛らしく軽快なステップで踊っている。ファン達も、そんなヒミカの姿に興奮のあまり立ち上がって全力応援をしていた。

 ざっと数えても、小さなステージ内には五十人以上は居るだろう。つまり、満席である。座れない人達は、立って歌を聴いている。

 剣児とアリーシャは、ヒミカの配慮もあり、特等席だ。両サイドには、あの三つ子が二人を囲むように並んでいる。


『まだまだ! 今のテンションのまま二曲目いっちゃうぞー!! ちゃんとついて来てねぇ!!』

《どこまでもついて行くっすー!! ヒミカちゃーん!!》


 その後、持ち歌全てを歌い、ヒミカのライブは大歓声で終幕。

 ファン達は、大興奮のままヒミカと握手をして帰って行く。

 

「やっほー! どうだった? ヒミカちゃんの輝き!! 眩しかっただろー」


 ライブも終え、ファンとの握手を終えたヒミカは清々しい表情でドヤ顔を決めてきた。


「ああ、かなりの輝きだった」

「でしょでしょ!」

「だが! 世の中には、まだまだ強い輝きを持った者達が居る! 今のヒミカ以上の輝きを持っている者達がな!」

「むむむ!」

「その一人が、この俺だ!!」


 カッと目を見開き、剣児の体が激しく発光した。

 それは、直視できないほどの輝きだ。

 しかし。


「そういう物理的な輝きって意味だったんですか!?」


 的確なツッコミだ。

 その言葉に、剣児は輝いたまま高笑いをする。


「はっはっはっは! もちろん、物理的な輝きでという意味ではない!」

「じゃあ、なんで輝いているんですか!?」


 目を隠しながら、もう一度叫ぶアリーシャ。

 それに対し、剣児は。


「テンションが上がっているからだ!!」

「つ、つまりヒミカちゃんの歌が君をそこまで輝かせたってことだね!」

「うん、その通りだ。その才能を、もっと伸ばせばもっと大きなステージで歌うのも夢ではないだろう」


 と、輝くのを止めて首を縦に振る。


「君から言葉なら、そう思えちゃうよ! よーし、今日はこのテンションのままクエストに行くぞー!」

《おっす! ヒミカちゃん!!》


 いつものように、返事をする四つ子だったが。


「あ、今日は剣児くん達と一緒に行くから。君達は、待機!!」

《ひ、ヒミカちゃん。そんなぁ……!!》

「ええ……ヒミカと一緒にクエストですか?」


 明らかに、嫌な表情を見せるアリーシャに対し、ヒミカは剣児の腕に絡みつき笑顔を作る。


「ね? いいでしょ、剣児くん」

「別にいいぞ」

「け、剣児さん!?」

「まあまあ。いいじゃないか。いつもは二人でやっているが、仲間が増えればそれだけ戦い方の幅も広がる。それに、ヒミカの付与術をこの目で見てみたいと思っていたところだからな」

「やったー! さっすが剣児くん。優しいー!!」


 まだ、不満げなアリーシャだったがヒミカの実力は認めている。

 それに、いつもお世話になっている剣児の判断だ。

 とやかく言うことはできない。

 剣児の言っていることは、間違ってはいない。魔物と戦うにも、探索をするにも、人数が多いほうが効率がいいのはアリーシャもわかっている。


 しかも、ヒミカは付与術士。

 後方からの支援があれば、前で戦う者達もかなり楽に戦える。

 とはいえ、ガーデジオの近辺に生息している魔物達では、剣児一人でどうにかできてしまうレベルだ。

 そんなこんなで。


「【ローズ・クイーン】かぁ。確かに、剣児さんが居れば楽だと思いますけどー」

「魔物だとしても、植物! ヒミカちゃんの相手じゃない!」

「私だって、植物型の魔物ごとき火属性魔法で一撃ですよ!! ……まあ、こんな格好で言ってもカッコつかないんですけどね」


 今回剣児達が受注したクエストは、大型魔物の討伐。

 普通の魔物とは違い、一人で挑むようなものではない。

 単純に言えば、魔物達の親玉的な存在のため、強さも段違いなのだ。それゆえに、報酬も普通のクエストよりも豪華と言えよう。


 その中のひとつ。

 ローズ・クイーン撃退のクエストに挑んだ剣児、アリーシャ、ヒミカの三人だったが。


「なんで、ヒミカまで捕まっているんですか!!」

「いやー、アリーシャだけじゃ可哀想だなーって思って!」

「余計なお世話ですよ! 捕まるぐらいなら倒してください!!」


 さっそくローズ・クイーンと遭遇したのだが、効率よく探すために分かれて探していたのだ。剣児が一人で、アリーシャとヒミカは二人で。

 見つけても、すぐ挑むことなく一度合流してから戦おう。

 そう決めていたのだが。

 アリーシャがドジってしまい、ローズ・クイーンの蔓に捕まってしまった。

 ヒミカもアリーシャを助けるのではなく、一緒に捕まってしまったのだ。


「でも、一度こういう体験してみたかったの! アリーシャがよく体験しているって聞いたから!」

「好きで体験しているわけじゃないですよ!! あぁ、もう! 剣児さんには、申し訳ないですけど。もうやっちゃいますよ!! ええ、やっちゃいますとも!!」


 もうあの時の自分ではない。

 アリーシャは、魔力を高めていき、両腕に集束させていく。


「喰らいやがれです!! 【フレア・ブロー】!!!」

「おおお」


 ぐんっ! と勢いをつけ、そのまま左手から炎を噴出させ、右拳を思いっきりローズ・クイーンへと叩きつけた。

 弱点である火を喰らい、尚且つ強烈な打撃によりアリーシャ達を縛っていた蔓の力が緩む。

 その隙を逃すことなく、二人は抜け出すことに成功した。


「さすがだ。あの時とは違うようだな」


 着地した同時に茂みから出てくる剣児。

 髪の毛や服に葉をいっぱいつけながらも、表情ひとつ変えず現れたことで、ぎょっと驚くアリーシャだったが、剣児だとわかり少し落ち着く。

 しかし、気配もなく、着地した先に現れるので心臓に悪いとばかりに怒り気味に叫んだ。

 

「い、居たんですか!?」

「お前達が捕まる前からな」

「居たなら、助けてくださいよ!!」


 もっとな言い分に、剣児は。


「甘いな、アリーシャ。あれぐらい自分でなんとかできないようでは、この先成長はできないぞ」


 真剣な剣児の言葉に、アリーシャはハッと気づいたように目を開く。


「ま、まさかそれを教えるために?」


 未熟な自分に試練を与えていた? そう考えたアリーシャだったが。


「まあ、ただ単純にエロい展開にならないかと観察していただけなんだが」

「やっぱりそういうことですか!? ちょっとうるっと来た私が馬鹿でしたよ!!」

「あははは。二人とも、毎日そんな漫才をしてるの?」

「漫才じゃないです!」


 のん気に会話をしているが、まだローズ・クイーンを倒したわけではない。燃え盛っていたローズ・クイーンだったが、謎の液体で消火してしまった。

 アリーシャの一撃により、怒り状態になったローズ・クイーンは仲間を呼び出す。

 【ローズ・チルド】だ。

 簡単に言えば、ローズ・クイーンをそのまま小さくしたような見た目だ。大きな薔薇に触手のような蔓が複数。

 そして、植物にはありえない鋭い牙を覗く口がついている。

 数にして、軽く十体は居るだろう。


「あわわわ!? こ、こんなに増えるんですか!?」

「おー、触手がたっくさーん! ねね、剣児くん。どうするの?」

「当然倒す。ヒミカ。俺に魔法攻撃力増加の付与術をかけてくれ。今お前が持っている最上位のものを」

「りょーかい! ヒミカちゃんの応援で、強くなれー!!」


 この数に焦ることなく、剣児は前に出る。

 だが、そこでアリーシャが。


「ま、まさか今から封印解除を!」

「いや、もう終わってる。お前達が捕まっている間に」

「ですよねー」


 さすがに、そこまで馬鹿ではないようだ。

 ローズ・チルド達が先制とばかりに、蔓を伸ばしてくるが……魔力により、簡単に弾かれてしまう。

 その間に、ヒミカが呪文詠唱へと移る。


「頑張れ! 頑張れ!! あなたに魔なる力を与えちゃう!! どかーんといっちゃえー!! 【マジック・インパクト】!!!」


 かなりオリジナルな呪文ではあるが、ちゃんと魔法は発動したようだ。

 マイク型の杖。

 いやハンマー? とにかくマイクから出る付与魔法が剣児を包み込む。


「おぉ……これが付与。なるほど、この湧き上がる感覚! 実に高揚するぞ!! では、見せてやろう!! 我が光を!!」


 二人を護りつつも、魔力……ではなく神力を練り上げていた。

 それにより、すぐに術を発動できる。

 右手を天へとかざし、不敵に笑うと神力がバズーカへと生成された。


「え?」

「お?」


 予想外の展開に、後方で見ていた二人は目を丸くする。


神光砲火ゴッド・ブラスター!!!」


 しかし、高まるテンションのままに剣児は砲撃を放った。

 大きな銃口から解き放たれた、閃光は容易にローズ・チルドを。いや、ローズ・クイーンをも包み込み……消滅させた。

 地面や木々は焼き抉れ、背後に聳え立っていた岩山も大きな風穴が空いていた。


「ふう。気持ちよかった」

「き、気持ちよかったじゃないですよ! オーバーキルにもほどがありますよ!? ドラゴンと戦ってるつもりなんですか、あなたは!?」

「俺の師匠は言っていた。戦う時は常に全力でいけと」

「すごい師匠だね。ヒミカちゃんびっくりだよ。って、あー! 余波で、髪の毛乱れちゃったー!?」


 これにより、冒険者としての剣児の名は更に広まった。

 ローズ・クイーンが出現していた現場へと赴いた冒険者達は、口を揃えて言ったのだ。

 

「やはり、勇者の息子はとんでもない存在だ。これは、人間業じゃない」

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