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第四話「ギルドへ」

「ここがガーデジオか。やはり、地球の文化を色々と取り入れているようだな」


 異世界ヴィスターラに訪れ、最初に辿り着いたのは王都ガーデジオ。

 途中で出会った新米冒険者であるアリーシャと共に、途中新種の魔物の《オルゴブリン》に襲われたが、難なく撃退し、こうして足を踏み入れることができた。


 刃太郎が勇者としてここへ召喚されたのは、今から十九年前。

 やはり十九年も経つとかなり変わってきている。

 いや、これも地球との関わりを持ったおかげだろう。地球のほうも、色々と変化が起きているがヴィスターラのほうが大きく変化している。


 ファンタジー色の強いこの世界だが、獣耳を生やした少女がデジタルカメラを持っていたり、魔法使い風の男性が普通にベンチに座り漫画を読んでいたり。

 本来ならば、この世界にはないようなものが周りを見渡せば視界に入る。

 しかも、創造神オージオも積極的に協力をしているのもあり、文化はどんどん発展している。とはいえ、まだまだ地球のほうが平和であり、文化が発展している。


「あの、本当にいいんですか?」

「何がだ?」


 ガーデジオの街並みを観察している剣児へと、アリーシャが問いかけてくる。

 それは剣児がアリーシャへと渡したもの。

 先ほど、オルゴブリンを倒した際に素材がドロップしたのだ。


「オルゴブリンは、新種の魔物ですから。その素材もかなり貴重なんですよ。だから、この【オルゴブリンの角】は売れば結構な金額になるんです。もちろん、武器や防具を作る素材にもなります」

「構わない。溶けてしまった服の修繕に使うのもよし。売った金で新しい服を買うのもよしだ。俺は、そのままメイド服で良いと思っているが」

「い、いえ。恥ずかしいので、嫌です」


 ちらちらっと周りの視線を気にしながら、歩いているアリーシャ。さすがに、地球の文化を取り入れているとはいえ、まだまだメイド服は目立つ。

 しかも、その隣には更に目立つ存在が一緒に歩いているためいやでも視線が集まる。


「では、さっそく服屋へと向かうか。どうする? 修繕をするか? それとも新しい服を買うか?」

「そうですね……金額次第では、新しい服を買うのもいいんじゃないかなぁって」

「ということは、換金屋か?」

「ここだと、ギルドで換金をするのが一番ですかね。そこのほうが、正確ですし信用できますから。た、ただ……」


 今一度自分の格好を確認し、恥ずかしそうに頬を赤く染める。


「この格好で、ギルドに向かうのは恥ずかしいと言いますか」

「なぜだ! 別に恥ずかしがることはないだろう! 誇れ! 今のお前は、最高に目立っているぞ!!」

「こ、こんなことで目立ちたくないです!!」

「ちなみに、色違いもあるぞ。赤と黄。どっちがいい?」


 更に、魔力空間から色違いのメイド服を取り出す剣児。


「あなたはどれだけの服を持っているんですか!? しかも、女物ばかり!」

「多種多様とだけ言っておこう」


 そんな騒がしくも楽しく言い争いをしながら、二人はガーデジオの冒険者ギルドへと向かっていった。





・・・・・★





 冒険者ギルドとは、冒険者達が集まり日々クエストを受注、情報交換、食事などをする場所。

 勇者刃太郎が現れるまで、冒険者達が魔帝バルトロッサが率いる魔族の軍団と戦っていた。

 その冒険者達だが……勇者刃太郎の影響もあり、ガーデジオで冒険者になりたいという者達が多いのだ。

 しかも、刃太郎達と共に旅をした仲間達の積極的な文化交流のおかげもあって、ギルド内も大きく雰囲気は変わった。


「おい、この前発売した新刊すごかったよな!」

「ああ! あの絵は反則だったぜ……!」

「だが、これでまた新刊が楽しみになった! 今日も全力でクエストに挑めるってものだ!!」


 街でもそうだったが、ギルド内に集まっている冒険者達も地球の文化に触れ、日常の一部となっているようだ。

 漫画を買うために、小説を買うために、クエストを頑張り、金を稼ぐ。


「うぅ……」

「まだ恥ずかしがっているのか? 見ろ、あそこで働いているウェイトレスを。一人ではない。恥ずかしがるな!」

「ウェイトレスでもメイドでもないのに、こんな格好するなんて恥ずかしいに決まってるじゃないですかぁ! もう、恥ずかしいのでちゃっちゃと換金してきます!!」


 ギルドでも視線を集めるメイド姿のアリーシャは、換金の受付をしているところへと走っていく。換金をしている間、剣児はどうするかと考える。

 すると。


「君! 見かけない顔ね!!」

「ん?」


 幼くも騒がしい声に振り返ると、そこには後頭部に大きな赤いリボンをつけた小さな金髪の女の子が数人の取り巻きを背後に堂々と立っていた。

 エルフ耳ということはエルフ族なのだろう。

 どこかアイドルを思わせる可愛らしい服に身を包み、なぜかマイクを片手に持っている。


「光は、私のためにある! ヴィスターラの希望の星! ヴィスターラのスーパーアイドル!! ヒミカちゃん!! 光臨!!!」

《ヒミカちゃん万歳!! マジ輝いているっす!!》


 その突然の名乗りに、剣児は。


「俺は、闇! 黒き獣を宿す暗黒の使途剣児!! 貴様の光は、我が闇の炎で焼き尽くしてやろう!!」


 対抗するように、名乗りとポーズを決める。


「私の時と名乗りが違うじゃないですかぁ!?」

「あぁ、アリーシャか。もう換金を終えたのか?」

「い、いえ。まだ途中です」


 わざわざ突っ込みをいれるがために、帰ってきてくれたということか。ご苦労様と肩に手を置く剣児だったが、様子がおかしい。

 じっとヒミカを見詰めていた。

 いや、ヒミカもアリーシャを見詰めている。


「むむ! アリーシャ生きてたんだ!」

「勝手に殺さないでください!」

「魔法使いなのに一人で魔物討伐に出かけたって聞いたから心配していたんだよー」

「心にもないことを……それに、私はただの魔法使いじゃないことぐらいあなたは、わかってますよね?」

「本当だってー。そーれーよーりーも! 何、その格好! 見たことのないメイド服! 貧乏なアリーシャがどうしてそんなおしゃれな服を着てるの! ヒミカちゃんより目立とうって魂胆!?」

「ち、違います! こ、これはここに居る剣児さんに」


 どうやらこの様子だと、アリーシャをたきつけたのはヒミカのようだ。そして、彼女はかなりの目立ちたがりやで、可愛い服にも目がない様子。

 剣児から渡されたメイド服にとても興味を示しているようだ。


「あなたが、この服を? ど、どこで買ったの!!」

「欲しいのなら」


 と、魔力空間から剣児は色違いのメイド服を取り出した。


「特別にプレゼントしよう」

「い、いいの!?」

「ああ。だが、その代わり!!」

「ま、まさかヒミカちゃんにエッチなことを!?」


 変な誤解をしながら、自分の身を抱くヒミカ。そして、そのヒミカを護るように前に立つ取り巻き達。身に覚えのあるアリーシャも一歩剣児から離れていく。


「資金を少し譲ってくれ!! あ、できればギルドの登録料ほどを」

「……そ、そんなものでいいの?」


 予想外の提案に困惑するヒミカ。だが、剣児はうむっと首を縦に振り言葉を続ける。


「考えてみれば、こっちの世界の資金を持っていなかった。これでは、冒険者になれず、クエストもできない。まあ……この服を売れば多少の金にはなるだろうが」

「だ、だめ! 他のところに売るぐらいなら、ヒミカちゃんが買ってあげる! もちろん、登録料分で!」

「ほう、それはありがたい。ちなみに、他にもあるんだが」


 一着、二着、三着と次々に服を取り出す。それを見た瞬間、ヒミカは目を輝かせ子供のように剣児にしがみ付く。


「み、見せて!」

「よかろう!! あ、写真を撮ってもいいか?」

「仕方ないなぁ。特別にぃ、ヒミカちゃんのプリティな姿を撮ること、許可しちゃう!! 皆! さっそく、ステージに向かうよー!!」

《おっす!! ヒミカちゃんのためならどこにでも!!》


 ギルドの入り口付近でのやり取り。

 かなり目立っている。

 だが、二人はそんなことはまったく気にしていない様子で、ギルドから姿を消す。

 取り残されたアリーシャは。


「あ、あのー。鑑定結果が出たのでお受け取り頂きたいのですが」

「あ、はい。今行きます」


 換金の受付をしていたエルフの受付嬢に呼ばれ資金を受け取りに行った。

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