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第八話「山頂に居たのは」

 アブライト山脈は、特に何があるでもない普通の山脈地帯。

 ならば、どうしてそんなところに、ドラゴンが住み着いたのか?

 ドラゴンの目的は何なのか?

 それがわからぬまま、登るこそ十数分。

 どうやら、本当に魔物が邪悪なオーラの影響で凶暴化をしていたらしい。しかも、まるで山頂へは行かせない言わんばかりに、次々に襲ってくる。


「くっ! まさか、これだけの数の魔物が山脈に居るとは……!」

「これも山頂に居るドラゴンの影響なのでしょう! あなた達! 油断しないように!」

《はい!! 副団長!!》


 だが、剣児達は止まらない。止まれない。

 山頂に居るドラゴンを倒すまでは。 

 そんな剣児達だが。


「魔物達よ! 聞け! 俺は、光を操り、闇をも操る者!! しかし、それはただの光と闇ではない。深淵よりも深い!!」

「さあ、ヒミカちゃんの光を受けなさい!! 邪悪な力に堕ちた魔物なんて、希望の光が!!」

「二人ともー!! 口上は、いいですから。真面目に戦ってくださーい!? うわ!? あ、あっぶない……」


 いつも通りだった。

 イシュラを初めとした【青薔薇魔法騎士団】が必死に戦っている中、なにやら楽しそうに、愉快に戦っている。


「何を言う、アリーシャ。戦いにおいて、口上は大事だ。俺の師匠もよく言っていた。相手にどれだけ、自分の凄さを知らしめれるか。それが重要なのだとな!!」

「それは、口上じゃなくてもいいんじゃ!?」

「まあ、それもそうだな。だが、俺は止めない! 一度やったことは最後までやり遂げる! 魔物達よ! 聞け! 俺は、光を操り」

「やっぱり、最初からなんですねー!?」

「……楽しそうですね、あのお三方は」

「だな。だが、あんなことをやりながらもちゃんと魔物を倒している。まあ、剣児様は強いの弱いのか。何度か吹き飛ばされているが……」


 それでも、確実に魔物を倒している。

 吹き飛ばされながらも、攻撃を加え、山頂へと近づいていっている。


「ふう。なんとか半分ってところですかね?」

「普通の山だと思っていたけど、これだけ凶暴化した魔物を相手にしながらだと、山頂がすごく遠く見えますね」


 丁度半分まで辿り着いたところで、休憩。

 魔物の強さはそれほどでもないはず。

 しかし、邪悪なオーラの影響なのか。かなりステータスが向上しているようだ。魔物と戦い慣れている騎士達も、さすがに疲労の色が見えている。


「元気を出せ。俺が作った疲労を吹き飛ばす薬剤だ」

「あ、ありがとうございます」


 そんな騎士達を回復させようと、剣児が作った薬剤を一人一人に配っていた。

 薬まで作れるんだ、この人は……と思いながらも受け取るアリーシャ。


「しっかり人数分ある。そろそろ山頂だ。しっかり、回復をするんだ! あ、ちなみに苦くはないぞ。あれだ。チョコレートの味がする」

「いや、逆にチョコレートの味がする薬剤って不安になるんですけど……」


 アリーシャと同じで薬剤を渡された騎士達は、若干不安な表情になる。

 確かに、甘いチョコレートの味がする薬というのは、もはや薬ではない。

 それだったら、普通に苦いいつもの薬剤のほうがマシだと思ってしまう。


「大丈夫だ。チョコレート味なのは、お前だけだ。アリーシャ」

「どこが大丈夫なんですか!?」


 それを聞いた騎士達は、ほっとした表情で薬剤を口に含み水で流す。

 残るは、アリーシャだけ。

 視線の集まる中、じっとチョコレート味だと言われた薬剤を見詰める。本当なのか? いや、今まで剣児が嘘をついたことはなかった。

 それに、剣児自身も嘘は嫌いだと言っていた。そうなると、やはりこの薬剤は……。


「あ、あはは。私、実はそこまで疲れていないんですよー。ですから、この薬はお預けということで」

「えいや」

「ひゃぼ!?」


 疲れていないというのは嘘だろう。

 アリーシャが、どれだけ魔力の消費が激しいのかは、剣児もヒミカも知っている。だからこそ、剣児はアリーシャだけに特別製の薬剤を用意したのだ。

 それを、下げようとしたアリーシャだったが。

 ヒミカの手により、口に放り込まれ。


「さあ、水だ」


 剣児との見事な連携で、胃の中に。


「どうだ?」

「……しゅごく、甘いです」

「だが、これで疲労回復、魔力も回復したはずだ。良薬口に甘しというからな」

「いやあの。その言葉私も知っていますが、口に苦しじゃないんですか?」

「そうとも言う」

「そうとしか言いません。はあ、ですが。確かに、体に力が湧き上がってきました。これなら、いけそうです!」

「うん、それでいい。では、休憩はこれぐらいで終わりだ! 一気に山頂へ行くぞ!!」

《おおー!!》

「げほっ! げほっ! あの、私にも、その、薬を……」


 そういえば、アリーシャよりもひどく疲れていた者が居たな、と剣児は先ほどよりも効果が強い薬をオズマへと渡した。

 それからは、流れ作業のように魔物を倒しては進み。倒しては、進み。

 山頂に近づくほどに、霧は濃くなり、その中に邪悪なオーラが混ざっていて、薄暗い。これにより、視界もかなり悪くなり、進むのも慎重になる。


「ふむ。これは、かなり、ひどいですね。それに、やはり、山頂に近づけば、近づくほど。剣児さんと一体化した武器の、反応が、強くなっていっています」


 落石のためのヘルメットについたライトで、照らしながらメモにペンで記録していくオズマ。歩きながらの執筆は危険だとアルル達が何度も言っているのだが、止めようとしない。

 これが、自分のやるべきことだと。


「この先に居るドラゴンを倒せば、ちゃんとこの武器外れるんですかね?」

「それは、わかりません。ですが、可能性は、大いにあると、思います。外れた際は、どうか、その武器を、我々未確認研究所に」

「わかっている。ん? そろそろだな」


 剣児は、一度立ち止まる。

 視線の先には、より一層濃い邪悪なオーラが壁のように漂っている。おそらく、あそこに入れば何かしらの影響が出るのは明らか。


「顕現せよ、神聖なる光の精霊。我等を邪悪から護りたまえ」


 呪文を唱えた刹那。

 剣児やイシュラ以外の者達に、光のベールが包み込む。


「よし、これであの中に入っても大丈夫だろう」

「おお。なんだか、温かいですねぇ。この光」

「さっきまでの、嫌な感じがなくなりました」

「これなら、私達でも!」


 準備は整った。

 光を纏いて、剣児達はその闇へと突き進んでいく。まるで、闇を切り裂いているかのように、どんどん弾かれていく。

 そして、辿り着いたのは……大きな穴だった。


「周りに、ドラゴンの姿はない。ということは」

「あの穴の中が、ドラゴンの巣か。だが」


 剣児が首を傾げるのも無理はない。

 なにせ、目の前にある穴は、明らかに小さいからだ。遠目から見ても大きいとわかるドラゴンが入れるような穴ではない。


「まさか、もうドラゴンは立ち去った?」

「いえ、それはないと思います。立ち去ったのであれば、この嫌な空気も消えているはずです」

「……行ってみればわかるだろう」


 一同、首を縦に振り剣児を先頭に奥へと進んでいく。

 すると、徐々に何かの光が見えてきた。

 何よりも。


「はっはっはっは!!」


 人の、少女の笑い声が聞こえてきた。

 これには、剣児も驚きを隠せない。


「……お前は、誰だ?」


 穴の奥にあったのは数え切れないほどの本が積み重なった山。

 そして、その中央に居たのは、小さな女の子だった。

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