プロローグ
そんなこんなで連載開始です!
あ、プロローグは告知で投稿したものと同じです。
「ついに、解き放たれる時がきたようだな……」
少年は、断崖絶壁に佇み不敵に笑う。
今にも崩れそうな崖にも関わらず、少年は全然動じている様子はなく、ただただ青い海を見詰めていた。
「長かった。俺が、この世に降臨して、十五年。ようやく、この世界から解き放たれる。どれだけ、待ち望んでいたことか」
刹那。
少年は右目にある眼帯を触れ、膝を突く。
「くっ! どうしたんだ、魔眼よ。お前も、喜んでいるのか? ふっ、感情表現が相変わらず激しい奴だ……だが、静まるんだ。今は、大人しくしていてくれ」
そして、立ち上がろうとするが、解けそうになっている靴紐に気づき、きゅっときつく締め直す。
その後、少年は崖から離れていく。
黒い髪の毛をなびかせ、携帯電話を取り出す。
「我が呼びかけに応じよ」
と詠唱し、通話ボタンを押す。
ただ電話をかけようとしているだけだが、これにも意味があるのだ。この携帯はただの携帯ではない。
魔力を有することで、電話帳から選ばずとも、頭の中でイメージをしている者へと一発で電話が繋がる。
まさに、魔法の携帯。
数回のコール音が、鳴り続け。
《はいよ》
電話に出たのは、大人の男性だ。
だが、若干軽いような、そんな雰囲気を感じる声である。
「創造神オージオよ。俺だ。よく、俺の呼びかけに応じてくれた」
創造神という最高位の神と会話をしていても、全然動じず言葉を述べていく。
《そろそろ電話をかけてくる頃だと思っていたぞ。まずは、十五歳おめでとうと言っておこうか。それで? 電話をかけてきたってことは、ついに来るのか?》
オージオの問いかけに、少年はふっと笑う。
「当然だ。俺はこの時をずっと待ち望んでいた。この世界から解き放たれるこの時を!!」
《だよな。お前も、生まれてからずっと出たい出たいって言ったもんな。ま、お前にしてはよく我慢したよ》
「俺も、それほど本気だったということだ。俺の父は契約を結んだ。俺が十五になったその時は……自由に行動していいと。その代わり、大人しくしていろとな。退屈な日々だった。ひとつの世界に縛られる十五年の時は」
だが! と勢いよく方向転換しながら、携帯を天に投げ、それをかっこよく掴み取る。
「今、俺は自由の身となった! さあ、ここから始まるぞ、俺の物語が!!」
《で? いったいどこに行くつもりなんだ?》
「愚問だな」
携帯を耳から離し、再び断崖絶壁へと向かっていく。
そして、息を大きく吸い込み。
「俺は行く!! 父が召喚され、救った異世界。ヴィスターラへ!!!」
《だよな。んじゃ、待ってるぜ。お前の来訪を。―――威田剣児》
「待っているがいい!! 我が父を越える伝説を!」
気合いを入れた刹那。
足元の地面が崩れ。
「おわあああああ!?」
海へと落ちてしまった。
彼の名は、威田剣児。
かつて、異世界ヴィスターラと地球を救った勇者の息子である。