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妖怪探偵・猫天狗!  作者: 深森
妖怪探偵・猫天狗!~よもやま話(短編)
19/31

◆『夏の匂い企画』◆坂の町、夏の陣…神に変わってお仕置きよ!

銘尾友朗さま主催「夏の匂い企画」参加作品(2019年7月~2019年8月)■

石段を駆け上がった。


真夏の昼下がりの決戦の時だ!


ここは坂の多すぎる港町。


振り返れば青い水平線。はるかな青空、真っ白な入道雲。


午後の暑熱を含んだ風が、石段の上の鎮守から吹き寄せて来た。


……うまそうな匂いとの距離が近づいている!


自慢の尻尾がピンと立つ。実は、我輩は猫である。ニャー。


夏の緑が輝く鎮守から、邪悪な煙がひとすじ。猫なる我輩の完璧なヒゲがささやく。なめんなよ、猫の超能力と言うモノを――!


我輩は、方々の町角から集結して来た仲間たちに合図した。


『皆の衆、行くニャ!』

『ニャー!!!!』


鬨の声があがった。


我輩と百匹の猫軍団は、鎮守を取り巻く陣を立てて所定の位置についた。


木立と立ち草の合間を縫って、すみやかに包囲をせばめる。


――居た。


バーベキュー・パーティ中の不良人間、十人ほど。


ナイスバディ黒髪美女をはべらせ、煙草をふかして不健康な酒池肉林だ。ニャー。


中央に居るリーダー格の男がナイスバディの胸を揉みながら「おい、てめぇのせいでビールが無いじゃねぇか!」と怒鳴り出した。


そこに居たヒョロ少年が、足蹴にされて転がる。


周りの不良たちは野蛮な笑いをするのみ。


ナイスバディ美女が「リク」と心配そうに呟く。


黒と茶のマダラな猫毛の髪をしたヒョロ少年を不良人間たちが小突き回し、煙草の火を近づけて脅し始めた。


リーダー男は、火の付いたままの煙草をその辺に放り捨て、ぺっぺとツバを飛ばし始めた。キタナイ。キケン。まさに鎮守の森をけがす行為。


小さき者や弱き者をイジメて楽しむ不良人間が、どんなに陳腐で、超・罰当たりな生き物か、よーく分かる光景だ。ニャー。


天の時よし、地の利よし、猫の輪よし。


全猫突撃! 人質、いや猫質たるココ&リクを救え! 徹底的、包囲殲滅だ!


「うわわぁッ!」

「何だ、このノラ猫どもは!」

「肉が! 肉が!」

「引っかくな、痛い!」


またたく間に猫まみれになり、四方で地獄の炎が燃え上がった。我輩と百匹の猫軍団による神聖な裁きなのだ。ニャー。



ボヤ騒ぎの後始末で、まだザワザワしている。町の消防も来ていた。


「特殊詐欺マネーで焼肉、不作為による放火罪」


血まみれの残骸に、警察が告げた。


「オレ関係ねぇ、猫毛のヒョロもやしが! クソ猫どもが!」

「何処に?」

「あ、猫に化けた……えッ、化け猫?」


そこに居たのは。


ナイスバディ黒猫ココ。悪逆非道な飼い主に「エサ無し虐待」された家出少年の三毛猫リク。年齢不詳な灰色猫の我輩。


……しがない旅猫に擬態しているが聞いて驚け、我輩は偉大なる神猫にして猫神、猫天狗の七尾ニャニャオさまだ。


背後の茂みでは百匹の猫軍団が目を光らせ爪を研いでいる。罪のない者をイジメ、鎮守をけがせば、地獄よりも恐ろしい運命となるのだ。よーく承知したまえ。


我輩は金の目をピッカピカと光らせ、天狗の翼と七つの尾を披露した。


『焼肉、ごちそーさまでしたニャニャニャ』


数多の警察に囲まれている不良人間たちは、空きっ腹をグーグーと鳴らしつつ、いつまでも顔を引きつらせてプルプルしていた。


坂の多すぎる港町、猫住む町が夕映えの色に染まってゆく。


『私達は仲良しなんです』


―《終》―

ツイッター遊びで、以下のようなお題が出たことが、きっかけでした。


『あなたに書いて欲しい物語(https://shindanmaker.com/801664)』

――「石段を駆け上がった」で始まり、「私達は仲良しなんです」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば10ツイート(1400字)以内でお願いします。――


本文…文字数(空白・改行含む):1361字/空白残:39字

タイトル文字数:30字

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― 新着の感想 ―
[良い点] 猫天狗面白かったです(#^.^#) 猫天狗の軽快なしゃべりが可愛いくて、登場人物達との掛け合いが面白い。またそこにミステリー要素があるのがいいですね。 目暮君が探偵事務所に勤めるように…
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