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※編集中※ ララノフの冒険者  作者: 紫水シズ
第三章〜ウルク〜
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属質と形質

 崩壊した瓦礫の中、ルイたちはそれぞれ特訓をしている。そしてトキとアキはお勉強をしている。先生はカノン先生だ。いつもの鎧ではなく白い服に見を包んでいる。崩壊した建物の壁には簡易ホワイトボード。瓦礫の机の上にはペンと紙が用意されている。授業の内容は《魔法の属質と形質について》だそうだ。


「よし、じゃあまずは属質についてだ。だがこれは二人とも知っているだろう。火、水、土、風の四属性のこと。その魔法が持つ属性ということだ」


 属質とは、例えばトキの放つ魔法『ファイア』や、ルイの放つ『ファイアボール』の属質は火。アキの水を放つ『ウォーター』でいえば水。つまりその魔法が持つ属性のこと。風魔法であればその属質は風、土であれば土となる。なんともシンプルでわかりやすい。二人も理解できているようで頷いている。


「まあ属質は簡単だろう。次に形質。これは魔法の姿形、動きをいう。例えばそうだね、ルイを見てみな」


 二人は少し離れたところで魔法を放つルイに視線を移す。詠唱を終え、小さな火球が彼の手元から放たれた。的をめがけて飛んでいき、見事に命中する。その様子を見て感嘆の声を上げる二人。そしてカノンが話しを続ける。


「今の『ファイアボール』という魔法は火球だ。その形質は《球体》。つまり形質とはその魔法の姿形を表すというわけだ。しかし厳密に言えばもう少し複雑なのだが、──」


 トキの『ファイア』やアキの『ウォーター』でいえばその形質は《放出》となるらしい。そしてルイの『ファイアボール』は《球体》。だがそれだけではないようだ。ファイアボールは《球体》として構築した火球を《放出》する、という二つの形質が合わさった魔法なのだ。二つの形質が合わさるということはそれだけ難易度は上がる。ファイアボールはただ放出するだけのファイアと比べて難易度が高い魔法だった。それを聞いてアキは一つ疑問が浮かんだ。


「ルイの魔法がすごいのはわかったけど、それって何が変わるの?」


「形質によるけど、ファイアボールの場合は球体として圧縮されているから、直撃したときの衝撃はファイアとは比べ物にならない。敵に物理的なダメージを与えることも可能だな」


「そっか! 僕のファイアだと炎が標的を飲みこんじゃうけど、ルイの魔法は敵を燃やしながら突き飛ばすことができるんだ!」


「そういうことだ。いろいろな形質が使えると戦闘の幅が広がる。二つ以上の形質を持つ魔法はお前らにも会得してもらうからな」


 形質によって魔法の持つ効果が変わる。ただの炎に他の形質を加えればさらに強くなる。新しい魔法が覚えられることに二人は喜んでいた。魔法はまだまだ進化できる。属質と形質の組み合わせによって、魔法は無限の可能性を秘めていることがわかった。そんなもの、冒険者のこの二人が胸を踊らせないわけがなかった。魔法においても自分たちが知らないことだらけで、それを知ればまだまだ強くなれるのだから。強くなれば、もうこの街で起きたようなこともなくなるだろう。そのために皆、特訓をしているのだ。二つの形質を持つ魔法。二人は他の皆に負けぬよう、それを使えるようになることを決意した。


「それじゃ、とりあえずの座学は一旦ここまでだ。まずは《放出》を捨て《球体》を作り出す特訓をするぞ」


「「はい!」」


 カノンは一旦教師モードを終了すると、詠唱をせずに「ウェアル」と魔法名だけを口にした。すると一瞬のうちに光に包まれ、その光が小さく弾け飛ぶといつもの鎧の姿に変身していた。一瞬で服を着替えたカノンを見てアキが目を丸くした。


「え!? カノンさん! 今の何!?」


「ん? ああ、無属性魔法の一つだ。興味があるなら今度教えてやろうか?」


 一瞬で着替えられる魔法。一瞬で自分好みの格好に変われるのだ。女の子のアキにはとても魅力的な魔法なのだろう。これがあれば鎧を脱ぐのも一瞬、寝間着に着替えるのも一瞬、水着に着替えるのも一瞬である。しかも服を脱がないので場所を選ばないでいい。そう考えると便利だと思う。しかも見たところカノンは詠唱をしていなかった。そういう魔法なのか、カノンの才能なのか。前者であればトキもぜひ教わりたいと思った。


「ほら、じゃあやるよ。二人とも放出ができている時点で最低限のマナを操ることはできているはずなんだ。普段よりも、マナを操作し球体作り出すことに意識を集中させながら、手のひらにマナを圧縮してみな」


「マナを操る……」


「手のひらに球体を……」


 二人は意識を集中させる。すると二人の手のひらに炎と水が現れる。そして少しずつ丸みを帯びて収縮していく。しかしトキの方は少し丸まったところで炎が弱まり、アキは水が手のひらからこぼれてしまった。放出を球体にするだけでもなかなか難しいらしい。二人はそれに頭を悩ませながらも、試行錯誤を繰り返し何度も挑戦した。そこに諦めの表情は見られない。何度失敗しても次こそはという意気込みが見て取れる。そんな二人を見ながらカノンは笑みを浮かべた。どうやらこれくらいの失敗は予想していたようだ。それよりも二人の諦めない姿勢に感心していたのだ。以前二人に特訓をしたゼトと同じような笑みを浮かべて、同じようなことを考えているのだろう。


「それじゃあ私は他の連中を見てくるから、しばらく二人でその練習をしてな」


 期待の眼差しを向けていたカノンは他の五人のもとへと去っていった。トキとアキはカノンに返事を返すと再び手のひらに意識を集中させた。




           ◆


           ◆


           ◆




 そのころ、とある場所の冒険者ギルドでは緊急会議が行われていた。そこには冒険者や騎士、魔法使いの中でも頂点に君臨する者たちが集まっていた。そこにいるのは二十名あまりの猛者たちだった。


「皆、緊急の呼び出しによく集まってくれた。感謝する」


「いつものことじゃない。今更どうってことないわ」


「相変わらず冒険者は顔を出さんのう。二十四人もおって出席しとるのはたったの五人か」


「冒険者の方たちは自由な方が多いですからね」


「むしろ研究を手放してここまで来てやったんだ……感謝してほしい……」


「なんだと!!」


 その場はピリピリと張り詰めた空気が漂っていた。世界中で偉業の歴史を残した者たちだ。そのプライドも高く、個性の強い者が多いようだ。髭を蓄えた大男、和服の剣士、白衣の科学者、紳士的な風貌をした騎士、、耳が尖った者、角の生えた者、女姿の老人など。異様な光景。その中でもリーダーらしきものが場を諌める。


「やめぬか、ここへ呼んだのは喧嘩をさせるためではない。かの組織について。『ベクス・ゼト』からの報告だ」


「ん? あの四大騎士の坊っちゃんね」


「今は革命者じゃなかった?」


「彼も厄介な依頼を受けたものだ」


「ああいう名前が知られてないやつの方が動きやす……」


 ゼトの名に皆が反応を示す。ウルクでは名を隠していたようだが、どうやらここではゼトを知らぬものはいないらしい。そしてその者たちの中にはゼトを敬う者や、まるで子供の話をするような者もいる。


「それで、その報告の内容は……」


「とある街が奴らの襲撃を受けた。その襲撃者たちの実力を調べたところ、指揮していたものは勇騎士並の実力、下っ端で名誉騎士ほどの力は持ち合わせているようだ」


「あら、随分と弱々しいのね」


「ちっ、その程度の組織に王族どもはビクビク怯えてやがんのか」


「大国も落ちたもんじゃのう。わし自らが落としてくれようか」


 言葉を発すれば他を蹴落とすような発言ばかり。いかにここにいる者たちが自分に自身を持っているのかがわかる。そして無論、その者たちの実力はその自信を持つのには十分すぎるほどの力を秘めていた。大国を敵対しかねない発言をし、さらに殺意をあらわにするものまでいる。王国すらも討ち取らんとする殺意に、尻込みするものは一人もいない。常人であればこの空間で呼吸することすら困難だろう。


「今の話は組織の末端の実力についてだ。あれだけ巨大な組織、上の連中の実力は計り知れん。舐めてはかかるな」


「その通り……敵を下に見てるやつが、足元をすくわれる……」


「あら、誰に言ってるのかしら。別に舐めてんじゃないわよ。余裕ってやつ。ここにいる人間が足元すくわれるようなヘマはしないわ」


 科学者のような姿をした無口で小さな男に女口調で話す老人。それに同意するように他の者も余裕の殺意を表す。後ろで呆れ返るような動きを見せる亜人たち。再びリーダー格の男が諌めて場は落ち着きを取り戻す。


「とにかく奴らの目的、行動、戦力。全てにおいて未知だ。ゆえにこちらも捜査の手を増やそうと思う。それぞれのギルドで新たにクエストを設ける。緊急クエスト。内容は魔王信教の調査。やつらについて何かしらの情報を持ち帰ること。Aランクパーティ三隊以上、もしくはSランクパーティ一隊以上を条件とする」


「Aランク冒険者にも受けさせるなんて、随分と焦っているんですね」


「その程度の連中ではすぐに殺されるぞ」


「奴らの活動はここ最近で活発化している。着実に目的へと近づいている証拠だ。あまり長引かせると何が起こるかわからんからな……。それともう一つ、古代迷宮の調査は引き続き頼む。見つけ次第私に報告を。独断で攻略することのないようにしてくれ。これで今回の会議は終了だ。これにて解散とする」


 その声を合図に、その場にいた者たちは一瞬にして姿をけした。その街にはもう彼らの気配は感じられない。時間が止まったように先程の喧騒は静寂に変わった。

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