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※編集中※ ララノフの冒険者  作者: 紫水シズ
第三章〜ウルク〜
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雨後の森の影

 岩の隙間で雨宿りを始めて一夜。四人が目を覚ます頃には雨はすでに止んでいた。地面はまだ湿っており、場所によっては踏むとぬかるみに足をとられる。木の葉にはまだ水滴が乗っていて時折雫が下に落ちてくる。斑のない曇天も青空に割かれ隙間から地上に日の光が差し込んでいる。トキたち四人は昨晩の荷物をまとめ、すぐに『勇者の街』へ向けて出発した。疲れも取れペースは昨日以上だ。この分だと今日中に街へたどり着くだろう。再び草原と崖の境を歩き始める。


「トキくん、ギルドカードの更新ってしてる?」


「そういえばギルドでもらって一度も更新してないかも」


「私もしてなかったんだけど、私達あれからしばらく冒険したし、でっかいスライムとも戦ってステータスが変わってるかも」


 ギルドカードを受け取ったときには二人とも大いにはしゃいだものだが、その後利用する場面もなくすっかりと存在を忘れてしまっていた。アキは岩場の空洞を見つけたトキの運の高さを思い出し、あれからギルドカードに変化が起きていないか気になったのだ。


「そうだね、そう言われると僕も気になってきた」


「そういえば俺もルイもカードもらったっきり一度も更新してないよね」


「そういえばそうだな。よしいいだろう、お前らに俺の強さをび見せつけてやる!」


 四人は歩きながら、それぞれでギルドカードを更新して見せあった。アキとグンタはそれぞれのステータスがだいたい五ずつ上がっている。そしてルイはすべてのステータスが平均して十程度上昇していた。自慢気に胸を張って鼻を伸ばしている。そしてトキのステータスは運以外ほとんど変動していなかった。上昇しているもので三、全く伸びていないものまである。三人は足を止め硬直すると、同情の眼差しをでトキを見た。そしてルイとグンタは「ドンマイ……」と言うようにそっと左右の方に手を置いた。続けてアキが「で、でもやっぱりトキくんの運はすごいね〜……」とフォローしたがトキにとっては複雑だった。確かに運だけは十八も上昇している。戦闘能力に関しては相変わらずの弱さだ。飛躍した運の高さもトキのひ弱さを馬鹿にしているように思えて腹立たしかった。


「…………」


「その……なんだ……あんま気にすんなよ……」


「これから一気に伸びるかもしれないしね……」


「トキくんは私が守ってあげるよ!」


 自分の不甲斐なさと相まってみんなの優しさが胸に刺さる。体感としてはなんの変化もなかったが、まさかここまで成長していないとは思いもしなかったトキ。それぞれステータスが上昇するみんなを見て期待した数分を返せと神に言いたかった。


「おいお前……スキルあんじゃねえか!」


「本当だ。こんなに早く発動するなんて珍しいね」


 それはギルドカードを受け取った日からそこに表示されていたスキル。それに気づいたルイとグンタが目を丸くする。しかしスキルの名前は文字化けしたような見たこともない文字で表記されており、スキル名もどんなスキルなのかも全くわからなかった。


「ギルドカードが読み込めなかったのか、未知のスキルなのか……。トキのマナが特別なのかな?」


「そんなやついるかよ!カードの不具合だろ。街についたら見てもらえよ」


 学徒だった二人にもトキのスキルを読むことはできなかった。結局ルイの言うように不具合だったのだろうか。どちらにせよ一度街についたらギルドで調べてもらうことにした。それぞれのギルドカードを持ち主に返し、再び街へ向かう四人。ヴァルを出てかなりの距離を歩いた。距離的には勇者の街までもうあと四分の一といったところだろうか。しばらく歩くと周りの景色も変わり、四人は整備された林道を通っていた。この道は街へと続いており、時折向かいからやってくる馬車とすれ違うこともあった。


「すれ違う人が増えてきたね」


「もうしばらく行けばもう街だからな」

 

「?……みんな止まって!……なにかいる……」


 グンタが足を止め小さな声で叫び注意を促した。四人は周囲を警戒する。トキには全くわからなかったが、アキとルイはグンタと同じように何者かの存在を感じ取っているようだ。その少し後に周囲の森の中にいくつかの黒い影が走るのが見えた。草木が揺れ森がざわついているようだ。


「何人いやがる……!それになんだこの感じ……、人間か? 気味が悪いな……」


「わからないけど……人じゃない可能性もあるね……」


「魔物?」


 四人はより警戒を強めた。しかしその影たちは四人を素通りし林道の傍らの森林の中を駆け抜けていってしまった。アキたちはそれを感じ取ると緊張を解いた。それを察してトキも警戒を解く。ざわついていた森も静けさを取り戻した。四人はほっと胸をなでおろした。しかしその怪しい連中が去っていったのは四人が目指す勇者の街の方角。何かが起こるかもしれない。それが杞憂に終わればいいのだがと思いながら四人は急いで勇者の街を目指した。

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